Nineteenth Melody―絶望と希望―


大地「来たよ、クロフォード」


 自ら指定した空地に大地は足を運んだ。背中を向けているリエンに一言声をかける。

リエン「アヤセ……ダイチ……」

大地「血相変えてどうしたの? 話ならどこでも聞いて上げるのに」

リエン「お前がここに呼んだんだろ」

大地「それはクロフォードが望んだと思ったからさ」

リエン「……確かに、俺にとっても都合が良かった」

大地「っで話ってなんだい?」

リエン「………………」


スチャ

大地「……なんのマネだい?」

リエン「アンタに死んでもらおうかなって思って」

大地「ふぅ……何かと思えばそんなことか」

リエン「冗談で俺がコイツを向けてると思うか?」

大地「思わないよ。どんな状況でもナイフを使用してきた男が拳銃を持ってるなんてな。 でも考えてみなよ? なんで君は拳銃じゃなくてナイフを使ってたんだ?」

リエン「拳銃は使える場所も状況も限られるし、後始末が面倒だしな」

大地「そういうこと。ここでそれを使ったら、間違いなく足がつくよ? しかも殺す相手が僕だ。 今度かばってくれる人なんていないよ」

リエン「あぁ分かってる。全てを覚悟しなきゃアンタには銃を向けることさえ出来ないってことぐらいな」

大地「ふぅ……面倒なことになったな」

リエン「この状況下でそう言えるの世界中でアンタだけだと思うぜ」

大地「なんでまた殺す気になったのさ?」

リエン「…………自分の意思で何かをしたくなったんだよ」

大地「慎吾に何を言われた?」

リエン「…………関係ない。俺が決めたことだ。人形としてじゃなく人として」

大地「クロフォード、人形は人以下だと思ってるな?」

リエン「そうだろ。感情すらなく、主の命でしか行動できないんだからな」

大地「違うな。お前は人形になって人以上のものを手に入れたはずだ」

リエン「なんだと?」

大地「絶対的、力」

リエン「!!!」

大地「お前は人を超えたんだ。人がお前に勝るヤツはそういないはずだ。それは自分でも分かってるだろ?」
リエン「………………」

大地「お前が何に希望を持ったかは知らない。だけど、俺の下に来るならその力を最大限に活用できる。 またそれ以上の力もな」

リエン「結局は俺を利用したいだけだろ?」

大地「ふっ。どうとっても構わないが、お前は俺の力だけは信じてる……いや分かってはいるだろ?」

リエン「何が言いたい?」

大地「お前も俺同様の力を手に入れることが出来るって言ってるんだ」

リエン「なっ!?」

大地「俺と対なる……いや俺以上の力を持つ血筋がある。悪魔の血と呼ばれるな」

リエン「話だけは聞いたことがある」

大地「俺の最終的な目的はその血を手に入れること。お前はその時、必要な力だ。 そして、お前もその力を手に入れることが出来る。どうだ? 悪い条件じゃないだろ」

リエン「………………」

大地「希望とは儚いものだ。それが絶えればその者は絶望に打ち果てる。かつてのお前のように」

リエン「ッ……」

大地「人形になれば希望なんて持たなくていい。楽な道を歩みつつ、力をて入れることができるんだ」

リエン「…………ふっ。最初から絶望になれって聞こえるが?」

大地「それが普通になれば絶望でもなんでもない。希望とは人をより深く傷つける言葉だ」

リエン「………………」

大地「さぁどうする? 今一度、お前に選択させてあげよう」

リエン「………………」

大地「俺と共にあるか? それとも儚い希望を信じるか?」

リエン「俺は…………」









   綾瀬慎吾を“希望”を信じる。           アヤセダイチを“絶望”を求める。







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