Fortieth Sixth Melody―サクヤの念、レンヤの選択―


大地「今一度、聞こうか。俺に力を貸せ」

連夜「……この力で朝里を破綻されるって……どういうことだ?」


 基本的に怖いもの知らずの連夜も大地の威圧感には圧倒されていた。


大地「正確に言えば、その力はダシさ」

連夜「ダシ?」

大地「俺自身、その力のことは正直に言えば良く知らない。 朝里が欲しがっているということだけでね」

連夜「つまり、引き換えに何かしらの情報を得たいってことか」

大地「もしくは血の使い道を聞き出すか、ね」

連夜「どういうことだ?」

大地「不思議に思わないか? 君のように実際受け継いだ人がいればそれは良いだろうが 血だけでも朝里は欲しがっているんだよ?」

連夜「確かに……それは言える」

大地「血を使って力を受け継がせる方法、もしくは体内に取り込むことによって力を得る。 そのどちらかが成り立つことになる」

連夜「そもそも力って血に混ざってるのか?」

大地「どういうことだい?」

連夜「漣の血という表現を俺はこれまで聞いてきたんだけど、そういう血族って意味じゃないのかな」

大地「なるほど。その発想も確かに有り得るね」

連夜「やっぱり外部からの受け継ぎは不可能だと思うけど」

大地「漣連夜くん、君は本当に優秀だ。どうだい、俺の下に来ないか?」

連夜「すいません、その気はまったくないです」

大地「そうか……残念だな」

連夜「話は以上ですか? なら帰りますけど」

大地「ふふふ」

連夜「…………?」


 連夜が大地に背を向けて、来た道を戻ろうとしたとき不敵な笑声が聞こえてきた。  気になった連夜は足を止め、振り向く。


大地「言っただろ? 一種のドーピングとしても活用できるって」

連夜「え?」

大地「確かに朝里の用途は俺は知らない。だけど一時、力を得る方法ぐらい俺は疾うに掴んでいるんだよ」

連夜「――!」

大地「今日の目的は君の血を頂くこと。そのためには手段を選ばないよ」

連夜「……本当に……」

大地「ん?」

連夜「本当に俺の血だけが目当てなのか?」

大地「どういうことかな?」

連夜「本当に俺の血だけが目当てなら、脅すかな? もし俺が力を解放したらあなたでもどうなるか分からないはずだ」

大地「ふむ、確かにそれは怖いな」

連夜「それに血が欲しいって、献血のようにするのか?」

大地「あーそこが思案どころなんだよね。難しいもので、力を解放時じゃないと意味ないのよ」

連夜「解放時?」

大地「最近、それぐらいは出来るようになってると聞いたけど?」

連夜「………………」


 連夜は意識を高め、左腕に集中した。  そして左腕は淡く青白い光を発した。


大地「そう、それで十分」

連夜「ふぅん……」

大地「試しに血、流してみる?」


スパァ


連夜「――ッ」


 大地の素早い動きに反応しきれず、飛んできたナイフが左腕をかすめた。  そして切り口から血がゆっくりと流れ出してきた。


連夜「……これは!?」


 その流れ出てきた血を見て呆然とした。  本来、赤いはずの血が左腕同様、青白い光を発していたのだ。


大地「そんなに驚くことかな?」

連夜「普通は驚くって……」


 自分の体から流れてきた血が光っていれば誰だって驚くだろう。  ただ連夜はすでに左腕が青白く光った時点で驚いたため、血もそうなったという驚きのため  一体どうして、という思いはなかった。  いや、腕が光る時点で一体どうして、という疑問は持っているのだが。


大地「その状態で倒れない程度に血を抜かせてもらうよ」

連夜「断ると言ったら?」

大地「君が断るなんて有り得ない」

連夜「言い切れるんだ」

大地「言い切れるよ」


パチンッ


 大地が指を鳴らすとそれが合図だったのかその後方から人影が表れた。


瑞奈「どうも」

白夜「………………」

連夜「――! ビャクッ!?」


 白夜は女性にもたれかかっていた。  目も瞑っており、女性の支えがなければそのまま倒れると目に見えて予想できるほど  全身に力が入っていないようだ。


連夜「ビャクになにをした!?」

大地「まぁまぁそう目くじらを立てないで」

連夜「何をしたって聞いている!」

大地「もう仕方ないな……」

瑞奈「安心して。眠っているだけよ」

連夜「手荒なマネしたというならたたじゃおかないけど?」

大地「これでもね、白夜くんとは友好関係なんだ。ちょっと薬を盛らせてもらっただけだよ」

連夜「……なんでそんなマネを?」

大地「話の流れから想像できないかな?」

連夜「卑劣だな」

大地「何とでも言えば? 目的を果たすためなら手段を選ばないんだよ、俺は」

連夜「………………」

大地「さぁ、言いたいことは分かるよね? 俺に血を渡すんだ」

連夜「俺は……」



   血を渡す           抵抗する







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