Finale Melody―うたに想いを乗せて―


 桜花ナインが甲子園で激闘を見せた夏の日から月日が経ち、3月。  ここ桜花学院では卒業式が行われていた。


慎吾「ふぅ……何とか、皆卒業できるな」

真崎「だな」

姿「……お前とシュウが相変わらず危なかったんだけどな」

真崎「プロ野球選手を留年させるわけにはいかないだろ!」

慎吾「ほんとプロのスカウトの眼って落ちたのかな」

姿「さぁな」

真崎「お前ら……」


 昨年の高橋に続き、桜花から何と5人もの選手がドラフトにかかった。  姿がヤクルトにドラフト1位、真崎が巨人にドラフト6位で指名を受けた。


シュウ「よぉ、綾瀬!」

松倉「卒業おめでとう」

慎吾「あぁ、おめでとう」


 そしてプロに指名を受けたのはこのシュウと松倉。  共に中日からドラフト1位、2位で指名を受けた。


シュウ「まさかドラフト1位で指名を受けるとはねぇ」

慎吾「同感っと言いたいが身体能力の高さを買われたんだろ」

松倉「シュウと同じチームになるとは思わなかったけどな」

慎吾「薪瀬もおめでとな」

司「どうも」


 そして最後は薪瀬がドラフト3位でホークスから指名を受けた。


連夜「ま、今年は高校ドラフトは豊作だったからな。どこも高校生中心でもあるし」

透「ワイらも選ばれたかったんやけどこればっかりはしゃーないな」

連夜「姿やシュウの方がどうしても目立ったもんな」

透「言うてもワイかてホームランも打ったんやけどな」

慎吾「倉科は就職だっけか?」

透「せや。就職は家族事情もあるんやが出来ればプロもなれたらええなって思っとる」

久遠「俺も社会人チームに入る予定。当然、俺もプロを目指すぞ」

慎吾「佐々木と漣は大学だっけ?」

佐々木「あぁ、光星大学に進学」

連夜「右に同じく」

真崎「綾瀬は東大に行くんだもんな」

慎吾「あぁ」

姿「その後、なんか予定あんのか?」

慎吾「なれるかは知らんが警察を目指す予定」

真崎「警察?」

慎吾「宏明さんの遺志を継いで俺は追わなきゃいけない人物を追う」

姿「お前、決着はついたって……」

慎吾「自分の気持ちにはな。実際の決着はついてない」

姿「ま、綾瀬の頭があれば何でも大丈夫だろ」

慎吾「体力がつかなきゃ警察はなれないからな。俺にとっちゃそっちが死活問題だ」

シュウ「まぁ、でも皆、進路が決まって良かったよね」

真崎「そうだな」


 そして卒業式が行われ、最後のイベント。  それは屋上から何か叫びたいことを叫ぶという桜花の伝統があった。  皆が思い思いの言葉を叫んでる中、慎吾は真崎と姿と一緒にいた。


慎吾「お前らはやらないのか?」

真崎「やるよ」

慎吾「やるんかい」

姿「ま、思い出にな」

真崎「それより綾瀬」

慎吾「ん?」

真崎「さっき、親父の遺志を継ぐって……」

慎吾「あぁ……宏明さんは俺のために亡くなったようなもんだからな。俺が遺志を継いで事件を追う」

真崎「綾瀬……」

慎吾「だからお前はプロとして真っ当しろ。後のことは俺に任せとけ」

真崎「……あぁ、頼んだ!」

姿「それで綾瀬、朝森先輩のことは……」

慎吾「いい意味で吹っ切れてるよ。真崎に言ってて俺が引きずってちゃカッコ悪いだろ」

真崎「いいんだぞ。泣きたいときは泣け」

慎吾「あのな……」

姿「でもさ、吹っ切れてるって言葉使うってことはやっぱ付き合ってたん?」

慎吾「いや」

姿「否定するのかい」

慎吾「付き合ってるなんて一度も言ってないからな」

真崎「あ〜あ、朝森先輩も浮かばれないな」

慎吾「いや、実際そうなんだから仕方ないだろ」

姿「じゃあ綾瀬は好きだったん?」

慎吾「……そう、ストレートに聞かれると答えにくいな」

真崎「姿や、聞くだけ野暮だぞ」

姿「ん?」

真崎「朝森先輩が亡くなった時の朝、目を充血させてきたんだ。それだけ十分さ」

姿「へぇ〜」

慎吾「………………」


 今すぐ首を絞めて気絶したいほど恥ずかしい思いの慎吾だった。


姿「んじゃ俺らも行くか」

慎吾「ら? 俺はやらないぞ」

真崎「いいじゃん、やろうぜ!」

慎吾「バッ、引っ張るな!」


 真崎と姿に連れられ屋上に上がった慎吾。


真崎「開幕一軍! 絶対に達成したいと思います!」

姿「目指すは新人王! プロで結果を残します!」


 そしていよいよ慎吾の番が来た。


真崎「ほれ、綾瀬」

姿「せっかくだからな」

慎吾「はいはい、分かったよ」


 慎吾は台に立ち、すぅっと息を吸って精一杯の声を出した。


慎吾「俺は――」


 こうして長くもあっという間に過ぎていった綾瀬慎吾の高校3年間が終わりを告げた。  だが新たな始まりが……そして新たな試練が待っている。  それでも慎吾は立ち止まることはないだろう。3年間、様々な困難に立ち向かった彼ならきっと……!




〜F I N〜


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