〜込み上げる想い〜


−6−


 それからお互い本当に時間がとれずにお互いのことで精一杯だった
 私は仕事……そして時折見るといえば旅行誌。もちろん今年じゃなくてお互いが将来的に余裕が出来れば
 それでも膨らませるだけでも嬉しいものだった。そして、私はシュウが出てる試合ほとんで見てた
 最初は、躓いて無理だ無理だと揶揄していてファンも気付けば射程圏内に入り……残り1試合で
 3打点を決めれば確定というところまでついに来た……そしてその最終打席。ランナーを奇しくも2人置いた場面で……

カッキーーーーン!!!!!

 サヨナラ本塁打を放ち100打点を決め、3位の確定と同時に「私の婚約の条件」を決める
 最高の結果を出してシーズンを終えた……その直後私はシュウに電話をかけた

「ああ、オレだ……」

「シュウ……ありがとう……」

「まあ、こんなにプレッシャーの掛かったシーズンはなかったなぁ……どっかの誰かさんのおかげで」

「うぅ……それは言わないで、私だって引っ込みつかなくなるでしょ……」

 ちょっと弱りきった声を聞いたのが嬉しかったのかいつものようにシュウは優しくフォローした

「……お前の約束がモチベーションになったんだ……それに達成できるときにしたかったからな
早くお前と一緒に……その一緒になりたかったからな……わりぃ……ちょっと言っててはずいな……」

「本当に、そんな恥ずかしいこと苦も無くいえるんだから……」

「だから、言った後で恥ずかしくなったろうが……」

「でも……嬉しい……私も同じこと考えていたから……」

「ああ、そう思ってくれたらこっちも言った甲斐がある……」

「で……どうした? 電話をするところを見ると……何か用でもあるんじゃないのか?」

 さすがに、疲れたろうにすぐに電話するものだから怪しんでいるようだ
 なんだかんだ天然と思っていてもやっぱりシュウもさすがに私の性格が分かってるようだった

「達成したからね……今後のこと話したいの……それにしてもシュウにばれるくらいなんだから……私もまだまだだなぁ……」

「何を言ってやがるお前はそんなきないだろうがばればれだよ……全く
どこまでも人を天然扱いしやがって……」

「ごめん……それはそうと明日とか……だめ?」

「ふぅん……わりぃ……ちょっと明日はダメなんだ。来週の日曜日だめか?」

 珍しいなぁ……シュウが私の日時に合わせられないなんて……
 まあシュウだって人の子だし都合の悪い日があったということなんだろう……

「珍しいわね……シュウが日程合わせられないなんて……」

「わりぃな……明日ちょっと野暮用があってな……
っていうかさ……やっと今日シーズン終わったんだ……ちっとはこっちの都合も考えろ」

「あら……冷たくなったわね最初なんてそりゃあ優しかったくせに
火の中でも飛び込んでくるような人だったじゃないの……」

「いや……それはだな……」

 返答に困ったのか答えに詰まるシュウ
 あんまり苛めるのも可愛そうになってきたのでそろそろ本題に戻ることにする

「冗談よ……初めてだものね……
1シーズンフルイニング出場なんて……わかった。日曜日楽しみにしておくわ」

「ああ、オレもお前からいろんなこと聞かされるの楽しみにしてるよ……
じゃあ日曜日な……お休み」

「うん……おやすみなさい」

 こうして、久しぶりの再会を日曜日に取り付けた私は
 気分良く、眠りにつけた。まさか……明日がダメな理由があんなことだったとは
 思いはしたけど、シュウらしからぬ……いやシュウらしい理由で驚いた……日曜日が来るまではそんなこと思いもしなかったけど
 そして当日を迎えた

 場所はシュウの家かららしい……そこでシュウが案内してくれるところで話し合おうということだった
 シュウから私の家は目と鼻の先で……すぐのところだ
 今日はシュウを慌てさせるわけには行かないので(今年よくやってくれたんだし……)
 定時に行くことにした

「(シュウ……一体今日どこに連れて行ってくれて何をしてくれるんだろう……)」

 そんな期待と不安が混じった状態から、私はインターホンを押した
 しばらくするとシュウの足音が聞こえてきて温かく出迎えてくれた

「よう、久しぶり」

「本当に久しぶりよ直接会ったのなんて6月以来じゃない……ちょっと遅かったかしらね?」

「いーや、これが普通なんじゃない。今まではお前が早すぎてオレがてんぱってることばっかりだったから」

「気を使ったんじゃない。シュウが慌てるといけないから……それはそうとどこ行くの?」

「本当は夜に行きたいんだ……だからさ、ちょっと色々遊んでから夜に行きたいんだけど、いっか?」

「その場所で話してくれるってことでいいのね?」

「ああ、それは全く問題ないから」

「わかった……じゃあそうしましょうか……楽しみは最後に取っておくから……」

 それから食べに行ったり普通に遊んだりしてくだんないことで盛り上がって
 あっという間に時間は過ぎ去り、夜になってしまった
 私はあっという間にシュウに言われるまま車に乗り込んでしまい……

「シュ……シュウどこに行く気なの??」

「まあすぐだから気にしないで……」

「う……うん……」

 そういわれるままただ座ってシュウの行く道を眺めているだけだった
 山道をあっという間に駆け上がり、しばらくすると展望台みたいなところに行った

「??? ここは展望台でしょ……?」

「ああ、覗いてみろよ自分で夜景……」

「う、うん……」

 そういって、見てみると……あまりにもまばゆい光景に思わず感嘆とも言える
 言葉を漏らした

「う……うわぁ……綺麗……東京でもこんなに夜景綺麗だったんだね……」

「そうだろ……俺たちのところの夜景が一番良かったと思うけど……ここも負けてないだろ」

「……これを見せに今日はわざわざ?」

「まあそれもあるんだけどな……こうでもしないと、なんていうか切り出せないと思って……」

「どういうこと???」

「これを見て欲しいんだ……」

「??? ……!!! こ、これって……」

そういわれて見てみるとそこには私が目を覆うようなものがあった。婚約のときに必要な指輪だった

「ちょっと……安っぽく見えるか???」

「まさか……こんなに光っててしかも…………こんなに思い切って
私のことこんなに思ってたの?」

「まあな四六時中お前が隣にいてくれたし……何より辛いときお前がいっつも背中から手をまわしてくれて
支えてくれたし……な……」

「ひょっとしてシュウ……あの時明日はダメだって強く言ったって理由は……」

「まあこういうことなんだ……お前ならオレの性格わかってると思うけど、よっぽど大事なことじゃない限り
なるべき周りの人の希望には合わせていきたいから……でもどうしても指輪だけは法子が優しく笑いそうな
ことにしたかったから……ごめんな……最後の最後までこんな臭い演出して……」

「ううん……こんなもの渡されてダメなわけないし……じゃあシュウは私との婚約本気だったと受け取って良いの?」

「当たりめえだろ。そうでなきゃあ誰がこんなに一生懸命にお前を怒ったり笑ったりしてやってやるか」

「……うん……ねえシュウ……あなた私のこと大好きだって言ってくれたよね……」

「ああ…それが?」

「私は……どう思ってると思う……?」

「同じじゃないの……?」

「ううん……」

そう言って、私はシュウの唇に優しく触れていってやった

「大好きじゃない……シュウを愛してる……」

「………お前も十分何の気なしに恥ずかしいこと言えるものだ……」

「恥ずかしくないよ……だって本心だもん。シュウはどう。今でも大好きなわけ」

「いや……オレもだ……愛してる」

「っていうことは……」

「ああ、結婚しよう……もうオレ達はやっていける」

「うん!」

 そうして、私たちは事実上の結婚をこの場でした。
 そして、私たち2人は今後のことを話し合ってお互いの両親に報告して承諾を得るべき別府に向かうことにした。
 まずは私のところ、私のところは以前にいったこともあり、すんなりとだった。そしていよいよシュウの家
 私は凄く緊張してた。今までお友達から急に婚約者として家に上がる。緊張しないほうが無理な話だった

「ああ……緊張してきた……」

「そんな緊張することじゃないって。あの親父と母さんなんだから。なんどもお前も顔を合わせたじゃないか」

「そうはいってもね、今まではお友達でしょ……それが結婚っていうんだから少なからず緊張しちゃうわよ」

「まあなるようになるさ、それに親父達が反対したとしても今更変える気もない……お前と離れるなんてもういやだからな」

「もう、バカなこと言わないでよ……それは絶対ダメよ。親達と何も分かり合えないままなんて絶対にダメ
血の繋がっている父親がいるなら尚更よ……ごめん……いいすぎた……」

「……わりぃ……お前の気持ち考えないで……確かにその通りだもんな……今日で全てが決まるわけじゃないし
長くやってこう」

「うん……シュウ……腹を決めようか……」

「そうだな……」

 そうして、私たちは意を決してインターホンを押した。
 シュウは久しぶりの実家ということで実に落ち着いた口調で話していた
 やはりこういうところを見ると安心して落ち着けるところなんだなと素直に思える。そういった意味ではちょっとシュウには妬けてくる

「どうしたの……シュウちゃん……今年は随分と……あらっ」

久しぶりに帰ってきた息子の隣にいる私を不思議そうに見ていた

「こ、こんにちは……」

「法子ちゃんじゃない……どうしたの?? 久しぶりねー。2人ともこんなところに突っ立ってないであがってあがって」

「あ……ああ……」

 2人は半ば呆然としていた。
 年末になろうともしているのに、2人できたというのに……

「ねぇ……本当に血が繋がってないの?」

「どういう意味だよ。そこまで天然じゃないよ」

「だって、これで気付かないなんてあると思う……?」

「オレだって、さすがにわかるよ。二人一緒に来てたら……」

 半ば不意打ちみたいな感じであっけにとられた、私はあっという間に緊張感がほぐれた
 と同時にあることが思い始めた

「ひょっとして、私が緊張してると思って……」

「それはねえんじゃない。そこまで考えてないし勘繰りすぎだよ」

「そっか……」

 それからすぐにドアを開けると、いつもの顔なじみの人がいた。
 両親……そして弟の敏君もいた

「あ、兄貴……どうしたこんなに早く帰ってきて……何か用があったのか?」

「ま、まあな……おい、法子説明してやれ」

「敏君……ちょっとごめんね、席を外してくれない」

「法子さんが……っていうか何で一緒……あっ」

 敏君は私たちが2人できたのがなんでかをさっして照れ笑いをしてくれた

「そっか……兄貴がなんか違うと思ったらこういう理由だったんだな……まあいいや
朱美となんか都合つけて話してくる」

「ごめんね……色々気を使わせちゃって」

「いいんだよ……こんなバカな兄貴に面倒見てくれてるんだから」

「お前なぁ……もうちょっとなんとか言えんのか……」

「じゃあ一言……頑張れよ」

「ああ……あんがと」

「じゃあいっちくるわ」

 そういって、敏君は私たちの前からさっさと出て外にいってしまった
 そんな私たちを見かねて両親は座るように促してくれた

「親父……」

「………そうか、そういうことで来る歳になったんだなお前は……」

「そういうことは今どうだっていいんだよ……親父は法子と一緒になることは反対なのか」

「なんで、そんなことを聞く……」

「親父が賛成してるような顔には見えないからだよ。やっぱり法子だとほら……
今まで友達としてばっかり来てたからそういう意味では見れないからか」

「そんなこと日さんに失礼だろう……
それにオレは反対なんて一言も言ってなかろう」

「じゃあどうして、そんな言いかたしたんだよ……」

「お前が決めた人がそんな子だっただなっていうか、お前がついに連れてきたんだなって……
感慨にふけっていただけだ……」

「じゃあ、どうなんだよ、本音は……反対なの、賛成なのどっちだよ?」

「俺たちに反対する理由がない。そもそも日さんはよく来てくれたし……
本質というのが良く分かっている。こっちからお願いしたいくらいだ」

「………」

 私ははっきり言って、言った方がいいのかもしれない
 日家の本当の子ではないことを、婚約をするということはすべてを打ち明けなくてはいけない
 この人たちが本当に受け入れられるためには、言っておかなければいけない。この関係がだめになったとしても

「ど、どうしたの法子ちゃん? 緊張してるの?」

「いえ、違うんです。私……言わなきゃあ」

「!!! ………の、法子……お前……いいって、そんなこと!」

「ううん……そんなのダメ。信頼している以上それに答えないといけないでしょう。
お義父さん、お義母さん、私ですね……」

「…日家の本当の子じゃない……か」

「!!!!!」

「え、なんで……親父達が……知ってるんだ……」

「シュ……シュウが言ったんじゃないの?」

「ば、バカやろういくらオレでも言うことと黙ってることくらいの区別くらいつくよ」

「私たちね……日家とはね、前々から親交があったの。
そこで法子ちゃんのこと、よく相談されたの……だからね
法子ちゃんのこと知っていた。それを知ってたうえで敢えてまた言うわ。シュウちゃんのこと好き?」

「………」

 間髪いれず私は頷いた。だって事実なんだし、今のところそしてこれからもシュウ
 以外の男性を好きになるなんてありえないことだろうし……

「だったら、尚更……こちらこそ、ぐずぐずして情けない息子ですけど、良いことと悪いことが分かっているそれだけは立派に守れる人間です
どうか宜しくお願いします」

「いえ、そんな私なんかいっつも頼りきりになってこちらこそこんな出来の悪い嫁ですけどお願いします」

 そんなことでしばらく話してしまったシュウそっちのけで

「暇だな……」

「ああ、暇だ……女っていいよな……」

 はっと気付くといつのまにか退屈そうにしていたシュウたち……
 つい一生懸命になりすぎて周りが見えず恥ずかしくなる

「ご、ごめんなさい……私……ついほっとしちゃって……」

「まあいいんじゃないか。少なくとも姑さんとは上手くやっていけそうだし、なあ親父」

「ああ、少なくとも妃のほうは凄い嬉しそうだったし……」

「もう、そんなこといいじゃない、謝ってるんだから……
宗之さん……」

「……す、すいませんなんか私の所為で……ちょっと問題起きちゃって」

「気にしなくて良いよ。2人ともいっつもこんな感じなんだ……」

とそんな会話に終始していたらお義母さんが思いついたように
話してきた

「そうね……2人とも……前祝っていうことで、お兄さんの宗一郎君も
呼んじゃいましょうよ♪」

「ぶー!!!」

 その瞬間動揺してしまったのか、シュウはかなり慌ててしまった

「いや……いいんじゃないのか……宗だって忙しいんだろうし、何より結婚式では呼ぶんだからさ」

「あら……シュウちゃんは、宗君に祝って欲しくないわけ?」

「そういうわけじゃないけど……宗は知ってるし祝いどころか恨み節ばっかり言いそうな気がするし(汗)」

「ならいいじゃないの……別に食われるわけじゃないでしょ……」

「そうそう、それにシュウも兄さんの本心は分かってるんでしょ……」

「う……うん」

 最後は結局折れてしまったシュウ。私はなんとなくシュウの気持ちが分からないわけでもなかったし
 かといって、ご両親の気持ちも良く分かってた。まあ私としては兄さんは来て欲しかったからいいんだけど、
 やっぱりシュウの予想どおりのことは起こっちゃった

「しかし……あの頼りない兄貴が……どうやったら法子さんを射止めることが出来たのか……
全く持っての謎じゃないですか宗一郎さん?」

「全くだ……いくら好きだからってこいつに幻滅しない法子が不思議で不思議でしょうがねえや」

「うぬれら……本人を前にして言うことか……」

「でも、確かにな……息子だが……どうしていまどきの子は我慢強くないと聞いたんだが
例外はいるもんだな……」

 ついシュウばっかりけなされるものだから、私はつい衝動的に本音を言ってしまった

「もう、いい加減にして、私はシュウが一番合っていると思ったから好きになっただけです
勝手にシュウばっかりいじるのは止めてください……」

 そういわれてちょっと度が過ぎたと感じたのか……それっきり言わなくなったばかりか……

「まあ、法子さんがそこまでなら敢えてもう言わないけど……」

「分かってたけどな……法子の考えくらい……ちょっとからかっただけだよ」

 それも分かってたけどって言おうと思ったけど、長くなるからやめた
 そうして、酒も飲んできたらさらに盛り上がっちゃって……

「おい、今更こんなこというのは何だが敏……お前、未成年の癖して酒なんて飲んで良いのか?」

「何そんなふりぃこと言ってんだよ。兄貴くらいだぜ……そんなクソ真面目なこと言ってんの
俺らの周りの奴はみんなこぞって飲んでるぞ」

「ま、まじかよ……」

「敏、そんなことより今日は寝なさい。明日だってまだ学校なんでしょ
二日酔いとかならないうちに寝なさい、そうしないとさすがに学校に申し訳できないわ。私も父さん連れてもう寝ちゃうから」


 そこではたらふく飲んで幸せそうな顔をして寝ているお義父さんの顔がそこにあった。

「わーってるよ、頭痛いとか言って学校休みたくないし……そろそろ寝るわ」

 そう言って、敏君は素直に自分の部屋に消えていった
 やっぱりこういう素直なところは高校生だなと実感する
 そして続けてお義父さん達もそろって2階へと駆け込んでいった。
 そうして私とシュウと兄さんだけになってしまった

「私たち3人だけになっちゃったね……」

「そうだよなぁ……あの三人と来たら好き放題言って勝手に上がっちゃって……」

「いいじゃない……どういう形であれ、私たちを祝ってくれたの確かなんだから……」

そうして、3人だけの雑談みたいな形が始まった

「でも、久しぶりね……こうして3人だけって言うのも……大体、シュウがいなかったり兄さんがいなかったりしたじゃない」

「まあな、確かに母さんの言うとおりこういうのもよかったかもな……」

「まあしかしなんだ……」

「どうしたんだ宗?」

「本当にお前の嫁になるんだな、法子って……」

「なんだ、まだ何か気に入らないのか?」

「いや、確かにお前にはあれこれ恨み言を言ったりしてきた。でもな……
お前だったら安心して法子を任せられる。良いことと悪いことが分かってるお前ならな
高校3年間見てきたけど……癪だけどやっぱりお前が一番いいわ」

「………オレも、義理の兄がお前でよかった………なんだかんだ言ってお前が一番
一緒にいるのがいいもんな」

「バカやろう。泣かせる事言うな……ああ、わりぃわりぃどうも涙もろくなっちゃってな……
よし、オレも帰るわ」

「な、なして?」

「もう夜も遅いし、それに……2人きりのところ邪魔しちゃ悪いしな」

「に、兄さん……」

「じゃあ、今度は結婚式で……そのときはもうちっと夫婦らしくなれよ
お互いどうも遠慮がちで見てるこっちが恥ずかしいよ……じゃあなあとは2人でごゆっくり」

 そう言って兄さんは言いたいことだけいって本当に帰ってしまった
 半日振りくらいでの2人の時間が流れた

「法子……そのありがとうな……」

「??? 何がどうしたの?」

 いきなり、ありがとうって言われてもわかんないから聞いてみた

「私、何かした?」

「まあ形とはいえ宗を呼んでくれて……最初に出来た本当の親友だから実はすっごく嬉しかった」

「まあきっかけを作ってくれたのはお義母さんでしょう」

「まあそうだとしても、一応な」

「どういたしまして……さっきも兄さん言ってたけど、夫婦らしい夫婦になりましょう
そうすれば兄さんだってもっと冷やかすわよきっと」

「それはそれで大変だよな……」

 そうして、私とシュウの結婚報告を終えて、あっという間に結婚式の準備に追われて
 当日を向かえ、結婚式直前を迎えた

「いよいよね……シュウ……緊張してる? 洋服がだらしなく見えるわよ?」

「そりゃあそうだろう……シーズンとは違った緊張感あるよ。今日だって何回も
スピーチ読み直して練習しちゃって……」

「シュウらしいわね……そういうところ……」

「そういうお前はどうなんだよ……言うこと決めたんか? 緊張もしてねぇのか?」

「当然決めたし、してるわよ……でも、そんなのシュウと言い合ったときに比べればなんてことない
いい緊張よ……」

「いいよなぁ……お前は、性質的に女の人はそういう風にできてんのかなぁ……」

とそこへちょっとでもシュウの緊張ほぐしてやろうと思ったところに

「なーに、言ってんだ。お前がへたれなだけ野郎が……法子は普通なんだよ」

「うげ、宗……こんなところまで込んでも、ちゃんと行くよ」

「なーにが、うげだよ。ったく張り倒すぞ?」

「ごめんなさい_| ̄|○」

「宗、のっけからそんなにいじるな普通の人間だったら苦痛に感じて当たり前だ。みんな見ているからな。
それにしても法子ちゃん本当に別人だね……」

「よう、法子ちゃん久しぶり♪」

「綺麗になっちゃってるね本当、佐藤君が羨ましいや」

「田先輩……翔先輩……結城先輩まで……みんな本当に来てくれたんですね……」

「うん、何せ佐藤君と法子ちゃんの晴れ舞台だからねこれを見逃すなんてあまりにももったいない」

「修平が何かしてくれそうだからな」

「ひでぇよ、お前らオレばっかりけなしやがって」

「でも、これで平常心取り戻したろ?」

「あっ……そういえば……」

「(ニッ)そういうことだ。じゃあな、頑張って来い」

「あ、ありがとう……」

「バカやろう法子に恥をかかせたくないだけだ……じゃあな」

そう言って兄さんは嘘を言って、みんなを連れ出していった。

「シュウ、分かってると思うけど……兄さんは……」

「分かってるよ……あいつの性格ぐらい……そろそろ時間になる。お互い今は目の前のこと頑張ろう」

「うん……」

 そうして、私たちは本番を迎えた。私たちの高校のときの野球部のみんな、シュウの所属している読売ジャイアンツ
 の中心選手である、松井さんを始め、与田選手といったさまざまな選手が私たちを見つめていた。
 でも、不思議と緊張は無かった。隣には温かいシュウがいてくれた。きっとシュウもおんなじ心境だったと思う。
 そして、ケーキの点火。両親達の送る言葉。なにもかもが私たちにとっては眩しかった。
 そんな中でも和むことはあった。兄さんが私たちに今までの思い出をビデオで作ってくれたらしいのだ

「………」

「シュ………シュウ……これ……」

「何も言うな……あのバカがやりそうなことだ……」

 確かに忠実に再現したことはしているんだけど、本当はシュウが助けているところをなぜか私が助けているなど
 正反対のことが描かれていた。でも、よくよくシュウを見てみるとその顔には笑みが浮かんでいた

「あいつらしいよな……こうして和ませるなんてな……」

「兄さんなりの……エールなのかな……」

「そうだと思うよ……なんだかんだいって、結局あいつって人のこと放って置けないいい奴だから」

「そうだね……」

 それからビデオが終わってから兄さんから一言あったんだけど、これは忘れられないこととなった。

「まぁ結局許したんだけど、正直言って、修平に任せるのは不安でしょうがねぇ……」

「こんな場でいうことか?」

「だが、二人一緒なら大丈夫と思わないか? 一人一人は弱くても、協力していけば大きな力と思える
オレはお互い分かり合っている2人だと分かったから許したんだ。どうかそのことを良く覚えて置けよ」

「………やっぱりお前にはかなわねえわ……」

「本当……兄さんには敵わないわね……」

「お前らほどじゃねえよ、お幸せに」

 そこからは惜しみない拍手が送られていた。
 つい涙腺が緩くなってしまう。それはシュウとて同じだった
 これまでの苦難があるからこそ、出てくる涙であった

 そして、いよいよのメイン夫婦のこれからの誓いだった。
 まずはシュウからだった。緊張してるといっている割にはさすがにプロ野球選手
 こういう舞台はとても場慣れしていた。今までのこと。そしてこれからの決意を並々ならぬ想いで語ってくれた
 そして……

「これからもずっと自然体で法子と一緒に頑張っていきたいと思います。どうか皆さん温かく
見守ってください」

「大変なスピーチどうもありがとうございました。それでは最後に妻の佐藤法子さんよりお願いします」

 そういわれてマイクが私のもとにやってきた。一呼吸置いてから

「皆さん、今日は私たち佐藤修平と「佐藤」法子の式にお集まりいただきありがとうございます。
お父さん・お母さん覚えてますか? ……私が日家として養子に出されて育ててくれたこと。今となってはいい思い出です恨んだこともありました
だけど、このことがなければ私は今のようなことも決して無いしシュウに会わなければ、私はきっと自らの生い立ちに満足できずに
死んでいったと思う……今こんなことを話すのは本当に恥ずかしいんですけど……「日」法子として育ててくれてありがとうございました。
そして、兄さん……ここまで本当の妹のように励ましたり、怒ったり、笑ってくれたり、本当の妹以上に妹としてくれてありがとう
これから新しい一日が始まっていくけど、シュウと手を取り合って協力して1日1日頑張っていきたいと思います
ええと………なんだったかな……」

 段々終わりが近づくと今までのことが蘇ってきて

「(だ、だめだ……泣きそうだ……)」

 今までお世話になった日家のもとを離れ、ついに佐藤法子として迎える
 お世話になったことを考えると涙を止めることなんて出来るわけがなかった

「ぱちぱち」

 会場からは惜しみない拍手ばかりが送られてきた
 そんな拍手が拍車をかけて涙がさらに止まらなかった

「……ほ、ほんとうに……こ、……こん…な、妻ですけど、が、……がん……ばって……行きたい……です」

 そこから先は良く覚えてなかった。シュウが駆け寄って励ましてフォローしたくらいで
 でも、確かなことといえばみんなが祝福してくれたこと。そしてその祝福に答えるべく
 私たち夫婦は手を取り合って一つ一つのことを協力して立ち向かっていかなければいけないということだった
 佐藤法子としていよいよ、厳しい過酷な旅がようやくこの過程を経てついに始まった
 前を向いていかなければ……下を向いたって、シュウにふさわしい人にはなれないのだから
 佐藤法子としてのページがやっと捲れただけだ。私はふさわしくなるために強くなる。あの日そう誓ったのだから……





Next⇒






 さぁ、いよいよ次章で最終章となる込み上げる想い。
 やはり最後の前の話というのは言わば、話として最後のまとめの部分だと私は思っているので
 法子が修平と一緒になり「佐藤法子」として新たな気持ちで歩んでいくという想いが最後の部分や要所要所で感じ取れていい話だったと思います。
 ここで未成年の飲酒は法律で禁止されていますよ、って一応表記しておきますね(笑
 見ている方に多少なりとも悪影響を与えぬよう……ってうちのサイトでそこまでの影響力ねーはってね><
 さて最終章、どのような終わりを告げるのか……そして二人はどのような未来を歩むのか……
 やはりそこはAYAさんですから、きっと物凄くいい終わり方になっていることでしょう。
 と勝手に持ち上げて(ry

                                                 サス






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