Second Melody―夏の甲子園T―


慎吾「………………………」

 慎吾はあの時のことを思い出していた。連夜に問われた日のことを。
 あれからもう1週間以上たっている。それ以来連夜とは一度も会っていない。


慎吾「あ〜考えたってキリねぇよな! 漣になんて言おう」

 あの時は「さあな?」としらばくれたが、なぜ連夜がその名を知ってるかも知りたかった。
 ただ聞くとやはり自分も知ってることになる。ただ綾瀬大地の名を聞いたこと無い人はいないだろう。
 問題は覚えてるかどうかだ。その点じゃ慎吾は聞いたことある程度にすればいいのだが
 ポーカーフェイスの癖にウソつくのが苦手な慎吾にとってはそれも出来ないでいる。


慎吾「バカくさ。なんで俺がそんなことで悩んでいるんだよ」

ピッ

テレビ「第79回夏の甲子園大会、大会10日目第3回戦、兵庫代表 沼南高校対西東京代表 赤槻高校の試合をお送りします」

慎吾「甲子園ってもうここまでやってるんだな」

 何気なくテレビをつけたらちょうど甲子園が中継されていた。
 さほど興味もなかったが、あれこれ考えてるよりかはずっとマシだっとそのまま見ることにした。






―甲子園1塁側ベンチ―

聖龍「沼南高校エースピッチャー! 青波聖龍で〜す!」

女子「キャ――ッ! 頑張ってね〜」

木之本「アホか……」

野山監督「アホはほっとけ。それより今日は名門赤槻との試合だ」

山本「あっ龍波、抜け駆けずるいぞ」

波野「俺も俺も〜」

野山「いや、だからね。好投手猪狩を打ち崩すには……」

クロス「サキのスパイク、ミーのバックにハイッテマシタヨ」

佐紀「マジ!? 良かった〜」

野山「……みんな、話し聞こうよ」

木之本「ドンマイです」


―甲子園3塁側ベンチ―

二宮「青波のやつ、余裕だな」

小波「余裕でも普通はベンチから出てスタンドに手は振らんぞ」

城戸「すんません、うちのエースも」

二宮&小波「はっ!?」

猪狩「ど〜も! 赤槻高校エース猪狩要です!」

女子「キャ――ッ! 負けちゃダメよ〜」

二宮「俺はあんなやつ知らん」

小波「同上」

城戸「………………………」






甲 子 園 大 会 第 3 回 戦
兵庫県代表 西東京代表
沼  南  高  校 VS 赤  槻  高  校
3年CFク ロ ス 清   村2B1年
3年木 之 本 矢   口SS3年
3年1B波   野 小   波CF3年
3年3B山   本 二   宮3年
3年青   波 猪   狩3年
2年SS森   竹 城   戸1B2年
3年LF松   下 鷹   野3B3年
3年2B佐   紀 池   上RF2年
2年RF  南   大   湯LF3年


審判「プレイボール!」

ウウウウウウ━━━!!!

ウグイス嬢「1回の表 沼南高校の攻撃は1番 センター クロスくん」

猪狩「しゃ! 行くぜ!!!」

クククッ

ズバーン!

ズバーン!

クロス「オォ……スバラシイボールデ〜ス」


アナ「1番クロスくん、三球三振です。続きまして2番キャプテンの木之本くん」


木之本「(スライダーは厄介だな。変化の少ないカウント球を狙い打つか)」

二宮「(お気楽沼南にあって、唯一まともな木之本だ。要注意だな)」


アナ「クロスくんにはポンポンとストライクを取ってきた猪狩くんですが
木之本くん相手に1−3となってしまいました」

解説「兵庫大会ではチームトップの打率を残した好打者ですからね、無理もありません」


猪狩「(おいおい、際どいコース全然振ってくれないぞ……)」

二宮「(スッ)

猪狩「(なのにスライダーをアウトコースか……なんでカウント取りに行かないんだろ?)」

ククッ


二宮「(アホッ! 甘い……)」

カーン!



アナ「アウトコースの球を流し打ち〜! レフト前へ運びました」

解説「ちょっとスライダーが甘かったですね」


猪狩「しまった」

二宮「(まあ、歩かせ覚悟だったししょうがないか)」


波野「っしゃ! 行くぜ!!!」

野山「波野。ここは送りバントだ、確実に2塁に送れ!」

波野「任せんしゃい!」


 ここからは何があったかご自由にご察し下さい(ぇ

コカーン


波野「!!!」

猪狩「!!!」

木之本「!!!」

城戸「!!!」

波野「〜♪〜♪〜♪」

二宮「………………」

猪狩「………………」

波野「…………!!!」


猪狩「……〜♪」


野山「……………………」

波野「………………」

山本「♪」

波野「!」

山本「♪」

ズバーン!

猪狩「!!!」

波野「…………………」

山本「………………」

木之本「………………」

・・・・*

アナ「1回の表、沼南高校ランナーを出しましたが無得点に終わりました」

解説「良く普通に実況できますね」


青波「いや〜波野お前サイコー。これは絶対甲子園の歴史に刻まれるわ」

波野「嬉しくないわ!」

木之本「いいから切り替えて行こうな」


ウグイス嬢「1回の裏、赤槻高校の攻撃は1番 セカンド 清村くん」

アナ「さあ、トップバッターは1年の清村くん。この甲子園に来て初のスタメンです」

解説「名門赤槻で1年でベンチ入りも凄いのに、スタメンで出るとはよほどですね」


青波「ほぉ〜1年坊か〜。なら必殺青波カーブを受けるがいい!」


パコーン!!!

青波「………………」

アナ「初球から行った! 打球は右中間真っ二つ!!! 甘い球を逃しませんでした」

解説「中途半端な球でしたね。スライダーが変化しなかったんでしょうか?」


清村「OK、甲子園初ヒット! これは結構インパクトあるだろ」


木之本「交代する?」

青波「すいませんでした」

木之本「送りバントは無理して防がなくていい。その後引き締めろよ」

青波「っしゃ!」


 2番矢口はキッチリ送り、1アウト3塁となる。ここでバッターは小波。

木之本「(きついな。1点は覚悟しとかないとダメだな……)」

青波「(初球、内角にストレート!)」

 沼南バッテリーは基本青波が投げたいのを投げる。ピンチや明らかにダメな要求は木之本のサインによって変更される。

小波「ハッ!」

パキーン!

青波「キャ―――ッ!」

佐紀「なめんな!!!」(パシッ)

清村「うわっ捕った!?」

波野「バックホームだ!」

佐紀「ほらよ!」(ビシュ)

木之本「(パシッ、ポン)


審判「アウトッ!」

アナ「セカンド佐紀くんファインプレー! 三塁ランナー清村くんが三本塁間に挟まれタッチアウト」

聖龍「うぉ!!! 珍しくナイス!!!」

波野「打撃は役立たずだが守備はサイコーだな!」

山本「最後の夏にいい思い出できたな!!!」

佐紀「称えるんなら素直に称えろ!!!」

木之本「頼むからさ、真剣に行こうぜ」

 木之本の言葉に真剣になったかは置いといて、4番二宮を三振に抑え初回のピンチを0に抑えた。





 シュウ「はぁ……レベルたけー」

連夜「別の意味でのレベルも高いな」

 桜花学院野球部も今日は自主練をせずに、今大会屈指の好カードの試合を見ている。

松倉「どうでもいいが、いい加減チームで練習したいんだが?」

連夜「う〜ん……揃わないから何とも言えん」

松倉「実際みんなどうしてるんだ?」

連夜「えっと、国定さんと大河内さんは通院中。大会後大目玉食らったらしいぜ」

松倉「そりゃそうだろ。国定さんなんて投球までしたんだぞ」

連夜「っで、上戸さんと山里さんと高橋さんは知らないな。恐らく自主練中」

松倉「…………………」

連夜「これが先輩たち5人の詳細。1年たちはとりあえず7人中4人はここにいると」

松倉「今日は佐々木がいないけどな」

連夜「享介は遅れてくる。司は今埼玉に帰省中。久遠と姿は知らん。以上だ」

松倉「半分以上知らねーじゃねーか!!!」

連夜「俺が知ってるはずがねー」

松倉「もういいよ」

シュウ「イッター!!!

連夜「何ッ!? どっちの誰が打った!?」





アナ「先制は赤槻高校! 8番池上くんの大会第10号の2ランHR!」


猪狩「よ〜し良くやった! これで勝った!」

二宮「勝ったとは思えないが、2点差は大きいぞ」


木之本「………………」

聖龍「ゴメンなさい。二度としません」

木之本「良し」

聖龍「……(でもなぁ、カーブ投げれるようになったら投球の幅広がるよな)」

……っで


クァキ━━━ン

アナ「これも大きい! バックスクリーン左へ大会第11号ホームラーン!」

解説「ちょっと猪狩くん相手に3点は重いですね」

アナ「っとベンチから背番号11とつけた1年生の淡野くんが出てきました。沼南高校1回目の守備タイムです」

淡野「とりあえず、これからは木之本さんのリードでってことでした」

木之本「いや、淡野投手交代だ。龍波、レフトに行け」

聖龍「リード通りに投げますのでもう一度だけチャンス下さい」

木之本「今度やらかしたら本気で交代な」

聖龍「肝に銘じておきます」


 木之本のリードに変わったことで赤槻の攻撃をシャットアウト。付け入る隙を与えない!
しかし沼南も猪狩・二宮バッテリーの前に未だに得点できずに試合は終盤へ……



アナ「さあ7回の表終わって3対0、赤槻高校リードしております」

解説「この回赤槻は3番の小波くんから、追加点取ったら決まりでしょうね」

アナ「沼南からしたらここは正念場です」


聖龍「あ〜……腕ダリィ」

木之本「1点も取れてないのは誤算だな」

山本「マジで一回休んだら? 淡野がいるんだし」

聖龍「俺に猪狩より先にマウンド降りろってか!?」

山本「いや、投げれなさそうだから」

聖龍「任せろって! 右がダメなら左で!」

 そう言い出して右手にグローブをつけようとする。

木之本「………………」

 威圧感を感じすぐ左手に戻す。

聖龍「っしゃ! ビシッと守って反撃開始だ!!!」

山本「………………」


小波「(前の回から球威が若干落ち始めてるな。猪狩を楽にする意味でも後1点は欲しい)」

聖龍「うりゃ!!!」

バシッ!

小波「何ッ?」

アナ「内角の厳しいところにスライダーが決まりました。今、青波くんはサイドスローで投げました?」

解説「そう見えましたね。今大会で初めてではないでしょうか?」


木之本「(龍波がサイドで投げる時は追い込まれてる時だ……やばいな……)」

小波「(サイドスローか……たしかにデータにはあったが、ほんとに投げれるんだな)」


クククッ!

小波「ハッ!」

キィーン!

アナ「初球と同様内角に切れ込むスライダーを上手く捉えた! 打球はセンター前へ!」

佐紀「追いつく!」

ビシッ

森竹「ナイスです」

ビシュッ!

審判「アウト!」

アナ「セカンド佐紀くん追いついたもののグラブで弾いてしまいましたがショート森竹くんがカバー!
素早く拾い1塁間一髪アウト! 好プレイです!」


小波「くそっ。今日はことごとくセカンドに阻まれてるな」

二宮「サイドスローだと何か変化あったか?」

小波「スライダーのキレはともかく、変化は大きかった気がする」

二宮「分かった」


アナ「1アウトランナーなし。バッターは4番の二宮くんです。 今日は3打数1安打、5回にツーベースヒットを打っております」


二宮「(右バッターの俺にはインのストレートだろ。それを狙う)」

木之本「………………」

聖龍「(っとあれは守備陣へのサインだな)」

ホットコーナー「どうした木之本?」

二宮「ん?」

木之本「……タイムお願いします」


アナ「っとここで木之本くんがタイムを取りました。沼南2度目の守備タイムです」

解説「多分、サインの食い違いとかでしょうね」


木之本「サイン出したのに対して返答したら意味無く無いですか?」

波野「ああ、あれ俺らへのサインだったのか」

山本「そういや試合前、サインの確認してたな」

木之本「もういい。あのサインは無しで」

ホットコーナー「あいよ」

聖龍「う〜ん……このチームちょっとお気楽過ぎねーか?」

森竹「今更っすか?」


アナ「内野陣がそれぞれの守備に戻っていきます」

解説「ランナーがいないのに随分用心深いですね」

 木之本は打ち取ることを止め、真っ向勝負を選ぶ。それが青波にとっていい奮発材料となった。


聖龍「うりゃあ!!!」

シュッ!

二宮「(狙い通り!)」

ガキッ!

二宮「なにっ?」


アナ「打球はサードへ打ち取った打球ですが、バウンドが高い。これは内野安打になるか!?」

山本「あ〜間に合わねぇな」

聖龍「アホッ!!!」

山本「あん?」

ドゴッ!!!

山本「痛ッ!?」


アナ「……サード山本くん、捕球しましたが投げられず1塁はセーフ。 ワンアウトから4番二宮くんが出ました」

解説「何で今青波くん、蹴ったんでしょうね?」

二宮「(スゲーノビだ。なんでサイドの方がノビて来るんだよ……)」


波野「おい、龍波。今の何だ?」

聖龍「諦めてるヤツへの制裁」

山本「(いつか殺す……)」


猪狩「う〜ん……点数じゃ勝ってるけど、目立ち度じゃ負けてるな」

木之本「(……二宮も大変だろうな)」


カァーン

聖龍「っしゃ! ゲッツー!」

山本「………………」

木之本「おいおい」


アナ「なんとサード山本くん、打球に反応できずレフト前ヒット!」


聖龍「アホ―――ッ!!! 野球しねぇやつは引っ込め!!!」

山本「お前のせいじゃボケッ!!!」

波野「負けてるチームの雰囲気じゃないな」

佐紀「お前もだ」


アナ「沼南高校ピンチが続きます。ここでバッターは6番2年生の城戸くん。 ここまで3打数でヒットがありません」

解説「ここはビシッっと抑えなきゃいけませんよ」


クククッ!

キンッ!

城戸「キャ――ッ!!!」


アナ「詰まらされた! しかし飛んだコースはいいぞ!」

佐紀「(パシッ、シュ!)

アナ「捕った!!! セカンド佐紀くん、追いつきました。森竹くんへ送球、ゲッツーなるか!?」

二宮「(ダッ)
森竹「(パシッ)……ん?」

猪狩「おぉ大胆だな」


アナ「なんと2塁ランナー二宮くんがサードを蹴ってホームへ突入! これは少し無謀か!?」


森竹「くっ!」

聖龍「バカ! ファーストでいい!」

ビシュ!

木之本「(パシッ!)くっ!」

二宮「(ザザーッ!)


審判「セーフ!」
アナ「二宮くん、上手く回り込みました! 貴重な4点目が赤槻高校に入りました!」

解説「今のは上手かったですね。沼南高校にとってはこの1点は大きいですよ」

 このままズルズルと行くかと思いきや、次打者をしっかり三振にとりエースとしての意地を見せる!

森竹「すいませんでした!」

波野「ドンマイドンマイ。大丈夫だって」

山本「今日の波野のミスに比べりゃ対したことねぇよ」

波野「うっさい」

聖龍「(猪狩からどうやって4点を……)」

木之本「(…………この回だな……)」


アナ「7回の裏、沼南高校の攻撃は2番の木之本くんからの好打順です」

解説「ここで1点でも取り返さないと非常にマズイ展開ですよ」


二宮「(ここまで2打数2安打か……相性悪いな)」

猪狩「………………」

二宮「(俺のリードで打たれてるし、ここは任せてみるか)」

猪狩「(ん? 珍しいなニノが俺に任せるなんて)」


ズバーン!

ククッ!

アナ「さあ、ポンポンっとストライクを取ってきました」

解説「2球目のはシュートでしたね。ストレートとスライダーが配球のほとんどだったのに珍しいですね」


木之本「(ふむ……今回は猪狩くんのリードかな? っとなると次の球は……)」

カキーン!!!

猪狩「んなっ!?」

アナ「これは大きい!!! バックスクリーン右へ、大会第12号ホームラーン!!!  今日の試合3本目のホームランが飛び出しました」

聖龍「うぉ―――ッ!!! さすが相棒!!!」

波野「最高!!!」

山本「一生ついていきます!!!」

木之本「うん。ありがと」

野山「さすが木之本だ。波野、初回のミスの汚名を返上してこい」

波野「あいよ!」


猪狩「くそ―ッ……まさか木之本にホームラン打たれると思わなかった」

二宮「完璧に配球読まれたな。ここから引き締めろよ」


アナ「さあバッターは3番の波野くん。今日は3打数でヒットがありません」

波野「ここは必殺技の使いどころだな」

二宮「(必殺技?)」


コッ

二宮「バントかよ!」


アナ「いいところに転がった! サード鷹野くん、素手で捕球し1塁へ!」

城戸「うわっ!」

波野「っしゃ! 今日二度目のチャンス!」

アナ「あっと暴投! 城戸くん捕球することができませんでした。記録は内野安打とサードのエラー」


野山「汚名返上しろってバントをしろって意味じゃなかったんだけど……」

木之本「つーか波野がバント成功させたの初めて見たんですけど」

野山「そうなの?」

木之本「はい?」

聖龍「あいつ、俺よりバント下手だからな」

野山「(なんで初回のバント指示のとき、誰も注意してくれなかったんだろ?)」

 参考:木之本がランナーで出てて注意する人がいなかったからです(ぇ


アナ「得点圏にランナーが進んで4番の山本くんを迎えます。赤槻、ここで1回目の守備タイムを使います。
伝令として1年の暁くんがマウンドへ行きます」

暁「ここは1塁を埋めて左の青波さんと対決するのが得策だそうです」

猪狩「えぇ――ッ!!! ヤダ――ッ!!!」

二宮「子供かよ」

暁「とりあえずここは敬遠ということで」

猪狩「絶対?」

暁「はい」

猪狩「ほぉ?」

暁「………………」

二宮「暁を脅したところで作戦は変わらないぞ。諦めて敬遠しろ」

猪狩「は〜い……」


アナ「タイムが解け、バッターボックスには山本くんが入ります。 赤槻高校のベンチの指示というのは一体なんだったんでしょう?」

解説「まあ敬遠で青波くん勝負でしょうね。猪狩くんの表情を見てると納得してないようですけど」


山本「(敬遠か……まあ妥当だな)」

シュッ

審判「フォアボール」

アナ「山本くんが歩いてバッターは5番青波くん。今日はヒットがありません」


聖龍「よ〜し、絶対打つ!」

猪狩「させんは!」


クククッ!!!

聖龍「(ブーン!!!)

審判「ストラーイク! バッターアウト!」

猪狩「っしゃ!!!」

アナ「あ〜っと外角のスライダーにバットが届かない! 三球三振です」


木之本「お前はアホか?」

聖龍「だってぇ……」

野山「せっかくのチャンスをふいにして」

聖龍「はぁ? 何言ってんのお前?」

野山「すいません」

木之本「監督……」


パキーン

木之本「おっ?」

アナ「打ったぁ! 打球は左中間へ! 2塁ランナー俊足の波野くん、三塁を蹴る!」

小波「(タタタッパシッ!)そう簡単にいかせるかよ!」

ビューン!!!

山本「(チャーンス! ここは3塁をもらう!)」

清村「(パシッ!)

山本「!!!」

ダッ!

審判「…………セーフ!」

アナ「っと、2塁ランナーの波野くんは生還しましたがセンター小波くんからの送球はバックホームではなく2塁へ!
山本くんがオーバーランしましたが慌てて戻り、セーフに。沼南高校これで2点返し4対2。接戦となっております」

解説「今のは森竹くん、上手く打ちましたね。インハイの速球に力負けしてませんでした」

 7番の松下は送りバントを決め、今日守備で再三いいプレイを見せている佐紀が打撃でも活躍する!

佐紀「てやぁ!」

カーン!

アナ「右方向へ流し打ち! 3塁ランナー山本くんが生還し1点差! なおも2塁ランナー森竹くんが本塁へ突入!」

池上「行かすか!!!」

ビューン!

森竹「んな!?」

審判「アウトッ!」

アナ「クロスプレイはタッチアウト! ライト池上くんからいいボールが返ってきました」

解説「高校生離れの肩をしてますね。あの送球が出来るのはプロでもそうはいませんよ」

アナ「しかし沼南高校はこの回3点を返して1点差としています」






瑞奈「見応えある試合ですね〜」

慎吾「……なんでアンタがここにいるんだ?」

瑞奈「はい?」

慎吾「ここは俺の部屋だ。なんでお前が普通に入ってきている」

瑞奈「これが目に入りませんか?」

慎吾「…………部屋の鍵?」

瑞奈「はい」

慎吾「なんでお前が持ってるん?」

瑞奈「管理人さんに借りました」

慎吾「(あのアホ、大家め……そういや他の人も似たような被害にあったようなこと言ってたな)」

瑞奈「部屋に男女が二人きり……何か起きそうじゃありませんか?」

慎吾「ああ。不吉なことが起こりそうだな」

瑞奈「……綾瀬さん……」


ダンダンダン!

どこからか聞こえる声「お〜い! 開けろ〜!!! 綾瀬!!!」

ダンダンダン!


慎吾「起きたな」

瑞奈「(そういう意味じゃなかったのに……)」

慎吾「うるさいな。つーかチャイムあるだろ」

ガチャ

??「大変だ〜!!! 綾瀬!!!」

慎吾「………………」

バタン

ドアの向こうの少年「えっ? 閉めんな!!!」


ダンダンダン!

慎吾「あ〜うるさい」

ガチャ

慎吾「何の騒ぎだ、真崎」

真崎「落ち着いてる場合じゃないぞ!」

慎吾「いや、お前が落ち着け」

真崎「あのな、さっきそこで姿のやつがいたんだが大変なことになってるんよ」

慎吾「姿? 交通事故にでもあったか?」

真崎「何ッ!!! そうなのか!?」

慎吾「あん?」

真崎「じゃあ救急車呼ばなきゃ! 110番!」

慎吾「いや、それだと違うのが来るぞ」

真崎「何ッ!? じゃあ117番か!」

慎吾「それは時報だ」

真崎「なら119番だな!」

慎吾「まあそれで合ってるけどが、姿って交通事故なん?」

真崎「…………そういや交通事故じゃないぞ」

慎吾「(ほんと頭悪いよな、こいつ)」

真崎「…………そうそう、だから姿が見知らぬやつと話してた!」

慎吾「お前が知らないだけで姿は知ってるやつかもよ」

真崎「それがよ、ちょっと話しを聞いたんだが転校がどうとか言ってたぜ」

慎吾「転校?」





アナ「9回の裏、沼南高校の攻撃は5番の青波くんから」

解説「猪狩くんはここでしっかり抑えて延長戦に臨みたいですね」

アナ「沼南高校は8回の裏に1番クロスくんが内野安打で出塁、盗塁後 木之本くんが右中間へのツーベースヒットで同点に追いつきました。 しかし続く波野くん、山本くんと連続三振に抑えられ、勝ち越しとはなりませんでした」


木之本「龍波、スライダーを狙っていけ。疲れのせいで変化が鈍くなってる」

聖龍「おう!」


 一方、赤槻高校のベンチは少し険悪なムードになっていた。猪狩の続投かどうかで意見が割れているのだ。

猪狩「ざけんな! ここで引っ込めるか」

二宮「お前の意地のせいでみんなの夢を終わらせるわけにはいかない」

猪狩「ここでマウンドを暁に託した方がいいって言うのか?」

二宮「当たり前だ」

猪狩「――ッ!」

小波「……勝手にしろ」

二宮「小波?」

小波「俺ら3年は最後の大会だ。もちろん猪狩もな。ここでマウンド降りたくないだろ」

二宮「バカ言うな! だからって……」

小波「冷静に考えるのも必要だけどな、二宮。俺、最後まで猪狩にマウンドに立ってて欲しい」

猪狩「……小波……」

二宮「……分かったよ。好きにしろ」

小波「だってよ。ただし、お前がそんな顔してるんなら俺も続投は認めないぞ」

猪狩「任せろって! 何回でも投げ抜いてやる!」


アナ「おっとようやく赤槻高校の選手たちが出てきました。 マウンドには猪狩くんが上がります、続投のようです」


聖龍「そうこなくっちゃ面白くないだろ」

主審「プレイッ!」

猪狩「うおぉ!」


ズバーン!!!

アナ「いい速球がインハイに決まりました。球速表示144キロ!」

解説「青波くんもいいスイングしてますよ。今のは球威が勝ってましたが」


聖龍「くっはー……当たったと思ったのに」

二宮「(……まったく、最初からこんな球投げろよな)」


猪狩「ハッ!」

聖龍「おりゃあ!」


カァーン!!!

アナ「打った――ッ! 打球は右中間へ、センター小波くん追いつくか!?」


小波「んなろっ!」

ズサ――ッ!

アナ「捕ったか? いや落としてる落としてる!」

波野(一塁コーチャー)「ストップ」

聖龍「アホか、行けるわ」

波野「止まれって!」

アナ「青波くん、1塁を蹴って2塁へ! クロスプレーだ! 判定は……?」

審判「セーフ!」

聖龍「おっし!」


野山「森竹、送りだ。確実に転がしてくれ」

森竹「はい」


 ここで森竹はしっかり送りバントを決め、ワンアウト3塁。しかし猪狩も負けずに次打者を三振を取った。

アナ「ツーアウトランナー3塁。サヨナラのチャンスで今日タイムリーを打っている佐紀くん」


猪狩「うおおお!!!」

カキン!

猪狩「んな!?」


聖龍「っしゃ、ここは行くぞ!」

山本「出来れば止まって欲しい……」


池上「(パシッ)んなろっ!!!」

ビューン!!!

聖龍「しゃあああ!!!」

ズサ―――ッ!!!

審判「セーフッ!」


アナ「サヨナラ――ッ! 殊勲打を打ったのは8番佐紀くん、今日は攻守に大活躍でした!」


佐紀「やった――ッ!!!」

山本&波野「良くやった!!!(ビョーン!)

佐紀「いや、待て……」

ゲシッ×2

佐紀「このアホ共……」

クロス「オォサキナイスデェ〜ス!!!」

バシッ

佐紀「クロスまで……」

聖龍「よっしゃあ!!!」

バキッ

佐紀「………………」

木之本「いや、龍波。それはただの暴力だ」

南「(顔面に思いっきり入ってたな)」

森竹「(次の試合出れるかな、佐紀さん……)」



猪狩「くそっ……すまん、二宮、みんな。俺の我侭のせいで……」

二宮「立てよ。誰も我侭なんて思っちゃいないぜ」

城戸「先輩のおかげでここまで来れたんですから」

小波「お前の続投を決めたのは俺らだ。お前一人じゃない。さてと、さっさと並ぼうぜ」

猪狩「みんな……」


全員「ありがとうございました!」

ウウウウウウ━━━!!!

聖龍「猪狩、楽しかったぜ。」

猪狩「おう! 今度はプロの舞台で!」

聖龍&猪狩「また会おうぜ!」






 沼南高校が準々決勝進出を決めたころ、慎吾たちは姿の元へ向っていた。

慎吾「今行かなくても後で姿に聞けばいいだろ」

真崎「取り返しのつかないことになったらどうする?」

慎吾「あん?」

真崎「嫌な予感がするんだ。姿のやつ……ほら、中学で野球辞めたのだって……」

慎吾「………………」

真崎「……いや、今更だよな……」

慎吾「…………あれか?」

真崎「ん? ああ、そうだ」

慎吾「いきなり話の中に行くわけにはいかないだろ。声が聞こえる程度の距離を保つぞ」

真崎「了解」





 時は少し戻り、ちょうど真崎が偶然姿を見つけるちょっと前。姿が見知らぬ男と接触をしたところだ。

??「キミが姿くんかな?」

姿「…………あんたは?」

??「ここ数日の間に僕の部下たちが迷惑をかけたみたいで」

姿「……あんたが差し金か。ほんと迷惑だ、止めてくれ」

??「うん。僕もあんな指示を出した覚えはないな。安心してくれ 僕の言うことを聞いてくれればすぐにでも止めさせるさ」

姿「信用できないな」

??「まあ内容くらい聞いてよ」

姿「……その前に名乗りな」

大地「おっと、そうだね。綾瀬大地だ。よろしくね、姿くん」




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