Fourth Melody―慎吾の決意・友のために―


―桜花学院―


連夜「つーわけで、今日は登校日。みんなが集まるいい機会です」

久遠「久々に会ったが絡みづらいぞ」

連夜「君たちが連絡も無しに練習に来ないからです」

久遠「自主練期間だろ? 自分なりにレベルアップしたかったんだよ」

司「まあ気持ちは分かるが、連夜や松倉は苛立ってたぞ。たまには来いって」

久遠「漣が苛立ってんのは見れば分かる。つーか俺以外にも?」

司「2年の先輩たちと後姿だな。今日も来てないし、どうしたんだろ?」

連夜「今日はミーティングぐらいは絶対します。司くんは先輩たちに、久遠くんはA組のやつらに集合をかけてください」

司&久遠「了解です!」





っで、放課後漣の集合で部室に集まった野球部メンバー。監督と一人いないが、これほど集まったのは大会以来だ。

連夜「お久しぶりです。皆さん」

久々な人たち「……どうも……」

連夜「予定より早く終わって日も暮れていないのでミーティング後、軽く練習したいと思います」

シュウ「今日の漣は妙な迫力があるな」

佐々木「よっぽど練習したかったんだな」

司「そういや、国定さんたちは大丈夫でした?」

国定「いや、許可が出るまでもう投球するなって」

大河内「俺は無理さえしなければ大丈夫だって」

連夜「う〜ん、投手が松倉と司だけか……」

司「しかも俺は長いイニングスいけないから実質松倉だけってことになるな」

高橋「それよりさ、そろそろ練習試合とかやりたいんだが。このまま秋季大会までお預けじゃ試合勘が……」

連夜「そうですね……一宮あたりに行ってみます」

佐々木「いいのか? 監督いないのに」

連夜「知るか。甲子園に行ってるのが悪いんだ」

佐々木「………………」

上戸「じゃあ早速、練習しようぜ〜。ミーティングって言ったって話すことないでしょ」

シュウ「賛成!」

連夜「いや……まあ、いいか」

松倉「(ほんとテキトーだよな……)」






―グラウンド―


松倉「ハッ!」

ズバーン!

大河内「ナイスボール!」

連夜「サイドでそこまでの速球投げれるならかなり武器になるな」

国定「……なあ松倉、カーブ覚えてみないか?」

松倉「はい?」

国定「秋季大会を勝ち進むとなると、結構試合数が多くなる。今のスライダーもチェンジアップも打たせて取るような球種じゃないだろ?」

連夜「それはいいですね。打たせてとれる球種があると投球の幅が広がるぞ」

松倉「う〜ん、ただ秋季に間に合うか?」

連夜「お前次第だ」

松倉「(この野郎……)」

国定「まあ、数日試してみて上手く行きそうだったらやってみよう」

松倉「はい」


連夜「じゃあ司、お前は投げ込みと走りこみを徹底しろ。少しでもスタミナをつけよう」

司「ああ。行くぞ!」

ズッバーン!


・・・・*

 一方、野手陣は投手がいないので徹底してノックをしていた。

高橋「そらよ!」

カァン

山里「(パシッ、シュ)

佐々木「元々センスあると思ってましたが、グラブ捌きかなり良くなりましたね」

山里「そうかな?」

久遠「山里さんのおかげでセンターラインの守備は堅くなったよな。一部除いて」

シュウ「ああ、漣のこと?」

久遠「わざわざ名前伏せてやってんのにボケるな」

シュウ「俺、そんな守備下手?」

久遠「上手くはないだろ。守備範囲の広さは認めるが送球ミス多いし、グラブ捌きが安定してない」

シュウ「つまり下手なんでしょ?」

久遠「ああ」

シュウ「!!!」

佐々木「じゃあ徹底して内野守備強化と行きますか。高橋さんも守備ついてください」

高橋「あいよ」

佐々木「上戸さんはファーストに。久遠は返球処理」

上戸「俺、ファーストやれないよ?」

佐々木「上戸さんも守備粗いですから。いいグラブ捌きの練習にはいいでしょう」

上戸「ふむ。一理あるな」

佐々木「じゃあ行きますよ!」


カーン!

佐々木「あちゃミスった。完全にセンター前だ」

山里「(タタタッ!)

パシッ! シュ

シュウ「へっ?」(ビシッ)

 山里は打球を見事捕球し、シュウへグラブトス。プロでもそうは見れないファインプレーだ。シュウは来ると思っておらず捕球できなかったが。

山里「おっしい」

佐々木「………………」

久遠「今のプレー見たか?」

佐々木「…………言葉も出ねーよ」

高橋「おら、ドンドン打って来い! 時間が勿体無いぞ」

佐々木「は、はい」

 小一時間ずっと内野ノックで汗を流した。高橋・山里の2年生コンビの守備の良さが一際目立った。


・・・・*

連夜「さ〜て、日が徐々に暮れてきたし、フリーやって終わりますか」

国定「そうだな。しかし、全体的に守備はレベルアップしてたな」

連夜「シュウと上戸さんに不安がありますが、守備範囲は広いですしその点では中々守れるチームですよ、うちは」

シュウ「バッティングは打順通りでいいだろ!?」

連夜「ああ。じゃあ投手は……」

司「俺がやろう」

連夜「OK」


シュウ「真剣勝負だ!」

司「いいだろ。シュウに俺の速球が打てるかな!」

ビシュ!

シュウ「(スッ)

パキーン

司「何ッ!」


連夜「そうか。司はシュウの打撃向上知らねーんだった」

慎吾「へぇ〜戸惑ってたがモノにしつつあるじゃないか」

連夜「君も結構神出鬼没だな」

慎吾「……あいつと一緒にするな」

連夜「いや、してねーけど」

真崎「いいな〜野球。俺も久々にやりたいな」

連夜「ん? 経験者なのか?」

真崎「おう! 俺と姿と綾瀬で小学校から中学途中まで同じチームでやってたんだ」

連夜「ふ〜ん。なんだやっぱ綾瀬も経験者だったか」

慎吾「姿や真崎と違って選手じゃないがな」

連夜「あん?」

真崎「こいつ、小学校の時1回か2回試合に出ただけなんだよね」

連夜「……理由は聞かない方がいいか?」

慎吾「デリカシーがあるならな」


シュウ「お〜い、漣〜? 順番だぞ」

連夜「ん? 飛ばしてていいぞ」

シュウ「飛ばすって次は姿だから……」

上戸「じゃあ俺だな」


連夜「そうそう。姿知らないか? 今日来なかったし、お前ら昔からの仲なんだろ?」

真崎「ああ、あいつなら……」

バキッ

真崎「痛ッ!?」

慎吾「知らないな。わざわざ俺らに言うようなやつじゃないし」

連夜「……まあいいか。後々連絡くらいくれるだろ」

慎吾「だろうな。そんじゃ俺らそろそろ帰るわ」

連夜「おう。明日は準決勝だからな」

慎吾「ああ、見に来るよ」


上戸「うおりゃあ!」

ガキ―ン!!!

国定「おぉ、スイング安定して来たな」

司「変化球にも少しは反応できるようになってますね」

上戸「徹底して下半身強化したからな。結構身になってるだろ♪」

国定「(守備はセンターラインがしっかりしてて、打撃では俊足・出塁率の高いシュウ・漣でチャンスメイクし、中軸で返す。 元々素質や実力がある連中ばっかり集まっていると思ってたが……夏とは違い、ほんとの意味でチームになってきたな)」






真崎「おい、綾瀬! テメーなんでさっき俺のこと殴った」

慎吾「お前が姿のこと言いそうになったからだよ」

真崎「言っちゃダメなのかよ!」

慎吾「当たり前だ。『姿が他の学校にスカウトされてました、そのことで悩んでるのでは?』なんて言えるか!」

真崎「何でだよ! その通りだろ」

慎吾「そうか……お前は姿が野球部に入る時言った台詞知らないんだな」

真崎「なんことだ?」

慎吾「あいつ、入る時漣たちにこう言ったんだ。『俺が甲子園に連れてってやるよ』ってね」

真崎「……………………」

慎吾「そうまで言ったヤツがそんなことで悩んでるなんて言えるか!」

真崎「ワリイ……それは無理だな」

慎吾「真崎…………」

真崎「姿のやつ、そんなこと言ったのか」

慎吾「……なあ真崎。もう一回だけ俺に付き合ってくれるか?」

真崎「ん?」

慎吾「姿のやつが帰ってこなかったら、俺があいつの言葉を本物にする」

真崎「………………」

慎吾「俺がこの野球部を甲子園に連れてってやる!」


 かつて野球を捨てた慎吾がまた一度野球の道へと戻る決意をした。
 友のため、そして未だに見続ける謎の夢の答えを見つけるため、慎吾は一歩踏み出そうとしていた……



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