Eighth Melody―決戦・秋季大会!―


木村「さあいよいよ秋季大会が近づいてきたぞ」

国定「まずは県大会を突破しなければいけませんね」

木村「ああ。だが夏、準決勝まで進んでるのを見ると3位まではいけるだろ」

 参考:86年関東秋季大会は千葉が開催地のようですので、開催県はたしか3校出れるはずです。     違ってもフィクションってことで許してください。詳しい方はご連絡いただければ幸いです(ぇ
慎吾「千葉での強敵は一宮、国立玉山ってところか」

連夜「後、ノーマークだった大岬だな。鳴海たちなら上がってくるだろ」

木村「その3校ってところか。国立玉山は3年が抜けたから脅威ってほどではない」

大河内「むしろ主力が2年だった一宮が厄介ですね」

連夜「でも山崎さん・藤谷さんといったプロ注目の選手が抜けてるわけだし、その点じゃうちの方が有利では?」

木村「まあな。ただ問題はピッチャーだ。国立玉山は恐らく1年の鈴村だ。しかし一宮は……」

国定「エース田仲が復活ですか」

木村「そう。恐らく、長いイニングスはいけなくても投げてくるだろ」

慎吾「元々、宮地や前田もいる学校だ。県屈指の投手リレーになるな」

連夜「しかも全員左なんだよな。鈴村もだし何でウチの県ってこんなに左投手多いんだ?」

木村「う〜ん、たしかにウチ主力打者に左が多いからな……」

慎吾「漣と姿が苦手としてますが久遠が逆に得意ですし、森岡や松倉だって苦手意識はないようですし大丈夫でしょう」

木村「そういや姿はどうした? 夏休み明けからまったく見てないんだが」

慎吾「………………」

連夜「……まあそのうち来るでしょう。メンバー登録だけでもしときましょう」

木村「……そうだな」









 順調に勝ち進む桜花高校。最初の難関は県大会3回戦だった。

千 葉 県 大 会 3 回 戦
先   攻 後   攻
国 立 玉 山 高 校 VS 桜  花  学  院
2年RF山   内 森   岡SS1年
2年SS藤   山   漣   1年
1年3B飛   騨 松   倉1年
2年1B小   暮 上   戸 LF2年
2年CF中   野 高   橋3B2年
1年達   川 久   遠 RF1年
2年LF川   田 佐 々 木CF 1年
1年2B木   内 山   里1B 2年
1年鈴   村 真   崎2B1年


連夜「最初が国玉とは意外だな」

慎吾「松倉、大丈夫か?」

松倉「ああ。楽勝だ」

慎吾「(1・2回戦と思ったより接戦だったからな……少なからず疲労はあるだろうな)」

シュウ「でもさ、国玉って戦力かなりダウンしてるっしょ?」

慎吾「まあな。ただ夏、鈴村にも抑えられてるのを忘れるなよ」

連夜「何とかなるって」

佐々木「………………」



鈴村「………………」

飛騨「どうした、そんな真面目な顔して」

鈴村「少しでも固有アイコンがついてるのでは?っと期待した俺がバカだった」

飛騨「いや、俺らもう夏の大会時点で出てるからありえねーって」

霧生監督「神滝や国立が抜けたんだ。1年とは言え、お前らには期待している。頼んだぞ」

鈴村&飛騨「はい!」



アナ「春のセンバツを目指し、秋季大会が各地で行われています。ここ千葉県も3回戦に突入しました」

??「3回戦の第1戦から面白い対決ですね」

アナ「なんとこの試合の解説は元オリックスのエースピッチャーだった奥居智隆さんです」

奥居「よろしくお願いします」

アナ「何でまたこんな地方局の解説に?」

奥居「アナウンサーが『こんな地方局』って言っちゃいけません」

アナ「……あ〜……とりあえず、プロの解説者が珍しいですね」

奥居「まあ、高校野球も年々レベル上がってますからね。こう言う場で見たいって気持ちもあったんで」

アナ「なるほど。では細かいところも聞いて行きたいと思います。 国立玉山高校の1番、山内君が左のバッターボックスに入りました」





1回の表

松倉「ハアッ!」

ククッ!

山内「くっ……」

スルスル……

藤山「あ〜!!!」

スバーン!

飛騨「ッ!」

アナ「3者連続三振! 松倉くん、上々の立ち上がりです」

奥居「全球種使ってきましたかね? 今日は早めの継投なんでしょう」


連夜「ナイスピー」

松倉「偉い本気リードだったな」

連夜「今日はノーノー狙いに行くんでヨロシク!」

松倉「………………」





1回の裏

鈴村「ん〜、松倉のヤツ飛ばしてるな〜」

達川「無理に合わせるなよ。向こうは薪瀬がいるけど、コッチはお前だけだ」

鈴村「うん、まあベンチに帰る時は覚悟した方がいいぞ」

達川「あん?」


先輩投手「………………」

達川「キャ」


アナ「桜花学院の攻撃は1番の森岡くん。夏の大会は.250ながら打点15とチャンス強さが目立ちました」

奥居「1番でチームトップの打点は凄いですね」


達川「(何だかんだでシュウはヒットの殆どは内野安打だ。スズの速球は打てないだろう)」

ビシュ

シュウ「てりゃあ!(スッ)

カーン!

鈴村「は?」

アナ「初球を叩いた! 打球はセカンドの横を抜けセンター前ヒット」

奥居「スムーズにバットが出ていました。ナイスバッティングです」


連夜「ほ〜ホントにバッティング上達したな」

慎吾「元々センスはあるヤツだからな。俺が真面目に指導すりゃ守備も上達するだろ」

木村「何かマジに俺の居場所なくね?」

連夜「まあいい。ここでの指示は?」

慎吾「いや、自由だが……まあ自信なきゃ送りだな」

連夜「あいよ」

佐々木「アイツ、数字上だとそこまで左苦手としてるわけじゃないけど、意識してるよな」

慎吾「自分が苦手と思ってるんだ。あんまりいい結果にはならないさ。それなら送りの方がいい」


鈴村「(シュウのヤツ、フォーム変えて来たな。しかし高めの速球についてくるとわ)」

達川「(後続打ち取るぞ)」

鈴村「(ああ)」

 2番、連夜はキッチリ送りバント。

達川「体調でも悪いのか?」

連夜「いや別に」

達川「(な〜んか不機嫌だな)」


松倉「シュウの足ならワンヒットで帰って来れるだろ。ここは先制だ」

鈴村「っりゃ!」

カーン!

アナ「またも初球打ち! 1・2塁間を抜けライト前へ。2塁ランナー森岡くんは……」


シュウ「(ダッ)

アナ「3塁を蹴った! ライト山内くんバックホーム」

奥居「刺せる位置まで前進してましたからね、タイミングはアウトかな」


達川「(パシッ)
シュウ「なんのっ!」

ダンッ! ズシャー!!!

アナ「森岡くん、回り込んだ! 主審の両手が開いた、セーフ! 松倉くんの先制タイムリー」

奥居「タイミング的にはアウトでしたが、森岡くんが上手かったですね」

達川「しまった……」

鈴村「………………」

上戸「キラーン☆」

 気落ちしてしまった、バッテリーを4番上戸は見逃さなかった。

パキーン!

鈴村「しまったぁ!!!」

 これまた初球を叩き打球はレフトスタンドへ。桜花学院、これで3点を先制した。

アナ「わずか4球で3点を取られてしまいました。鈴村くん」

奥居「う〜ん……桜花の選手たちは良く初球から思いっきり振れますね。指示が出てるんでしょうねきっと」


慎吾「ふっふっふ。達川のリードはいかに上手くファーストストライクを取るかにかかっている」

連夜「それを逆手に取ったってわけか。さすがだな」

慎吾「まあな」

国定「効率の良い点数の取りかたですね」

木村「うん。俺、いつ出番あるんだろ?」

国定「そこから離れましょうよ」





 1回こそ桜花が鈴村の立ち上がりを攻めたものの、それ以降は投手戦になる。  そして4対0で迎えた7回。球場は異様な雰囲気で包まれていた。

アナ「7回の表、国立玉山高校の攻撃は1番の山内くんから。なんと松倉くん、ここまで一人のランナーも出していません」

奥居「いくら黄金世代の3年生たちが抜けたとは言え、夏の甲子園ベスト4のチームですから……」

アナ「注目すべきは奪三振数。1・2回戦通じて15イニングス登板し僅か6個ですが今日だけで二桁10個を出しています」

奥居「スライダーの使い方が上手いですね。キャッチャーのリードがとても良いです」

アナ「流石にプロの血を受け継いでいるってことでしょうか?」

奥居「プロの血?」

アナ「桜花高校のキャッチャー、漣くんは元西武ライオンズのレイ選手の息子さんです」

奥居「…………うぉ! ホントだ! 連夜だ!!!」

アナ「…………………」

奥居「オホン。失礼しました」


松倉「OK、お前スゲーわ」

連夜「何言ってる。リード通り投げてくれるお前が凄いんだよ」

高橋「いつもこんなリードしてくれると助かるのに」

連夜「俺が本気リードしたら投手が持ちませんよ。完全試合なんて精神的に負担になりますし 先発できるのが松倉だけのウチには迫害以外の何でもないですよ」

山里「ならなんで今日は本気なんだ?」

連夜「…………相手が強豪だからですよ」

シュウ「ここまで来たら達成しちゃおうぜ!」

松倉「もちろんだ」

連夜「っし、行くぜ!」

内野陣「おう!!!」


山内「完全試合なんてさせるか!」

連夜「(内角にカーブだ)」

松倉「(ここでか? 自信ないんだけど……)」

連夜「(大丈夫。失投でも記録が終わるだけだ)」

松倉「(まあそうだけど)」


クッ

山内「んなろっ!」

キンッ

アナ「打球は1・2塁間! 初ヒットか!?」


真崎「(シュタタタ)

パシッ! シュ!

アナ「セカンド真崎くん追いついた! 一塁に転送しアウト! 初ヒットならず」

奥居「森岡くんに隠れがちですが彼もいい足を持ってますね」


山内「なんだぁ? 今のボールは」

霧生「どうした?」

山内「ちょっと今までのボールとは違いました。恐らくカーブだと思うんですけど……」

小暮「んだよ、曖昧だな」

山内「変化は対したことないが、少し沈んだように見えた」

小暮「そりゃカーブだもん」

山内「違う!!! そうじゃない!!!」

小暮「逆ギレすんな!!!」

飛騨「だまらっしゃい!!!」

2年コンビ「………………」

飛騨「俺が打ってきますから小暮さん、続いてくださいね」

小暮「お、おう」


アナ「2番藤山くん、内角の……恐らくカーブでしょう。ひっかけてサードゴロに倒れました」


連夜「(おお上々じゃん)」

松倉「(まだ不安だな。上手く縫い目にかからねーもん)」

連夜「(山内さんに通用しただけ儲けもん。ここからはスライダーフル回転で)」

松倉「(ああ)」


飛騨「絶対完全なんてやらせね!!!」

連夜「おーそんなに力んでたらチェンジアップで三振だぞ」

飛騨「話しかけんな!」

連夜「ひでぇ……これから切磋琢磨していくライバルに向って……」

飛騨「いや、試合中だからさ」

連夜「でも今の言い方はなぁ……」

飛騨「ああ、悪かったって」

連夜「…………(まだまだ甘いよ飛騨くん)」


 連夜のせいで集中力が途切れ、内角のスライダーにアッサリ詰まらされセカンドゴロに倒れる。

小暮「えっ? なんだって?」

飛騨「すいませんでした」

鈴村「………………」





 その裏、反撃の糸口が掴めない打撃陣に焦りを感じたのか鈴村の球が徐々に浮き出す。

バシッ

審判「フォアボール!」

アナ「おっと、先頭の8番山里くんにストレートのフォアボールです」

奥居「今まで根気強く投げてきましたが、限界ですかね?」


慎吾「チャンスだな。真崎!」

真崎「おっ初回以来の指示だな」

慎吾「エンドランをかける。下手なバッティングしたらタダじゃおかないぞ」

真崎「OK」


達川「(お前らしくないな)」

鈴村「(悪い。大丈夫だ)」

達川「(打てないのは俺らが悪いが、そのせいでピッチングが崩れるようじゃまだまだだぞ)」

鈴村「(そうだな。安心しろ、ビシッと投げてやる)」


アナ「ここで9番の真崎くんですが動きありますかね?」

奥居「4点差ついてますし、あるとしたらエンドランでしょうね」


山里「(ダッ)

真崎「はぁ!」

カーン

木内「(パシッ)

真崎「ありゃ……」

アナ「セカンド真正面! ゲッツーコース」

奥居「やはりエンドランをかけてきましたね」


藤山「(パシッ、シュ)

山里「んなろっ」

ガシッ

藤山「んな!?」


アナ「おっと? 山里くんの激しいスライディングに藤山くん体勢を崩された。送球が山なりだ」


真崎「どっせぇい!!!」

ズササ――ッ!

アナ「その間に真崎くんは一塁にヘッドスライディング! ゲッツーは逃れました」

奥居「守備妨害すれすれの高等技術ですよ。これも木村さんの指導かな?」

アナ「桜花学院の監督は元西武ライオンズで外野手として活躍した木村條さんです」

奥居「あれ? 1塁ランナーの様子がおかしいですよ?」


久遠1塁コーチャー「おい、大丈夫か?」

真崎「アハハン」


慎吾「あのアホ……」

大河内「ホント怪我しやすいな」

木村「代走どうする?」

大河内「俺がいきます」

木村「よし」


アナ「ここで真崎くんが負傷のため、代走で大河内くんが出ます」


鈴村「もらった!」

ビシュ!

大河内「なっ!」

アナ「牽制球! アウト! 代走に出たばかりの大河内くん、刺されました」


 続くシュウがサードゴロに倒れ、先頭バッターを出すも得点することが出来なかった。





 8回の表、注目の小暮・達川もバッグの好守に阻まれヒットを打つことが出来ず、ついに記録を保ったまま9回へ……


アナ「大記録まで後3人! 依然、一人のランナーも出さずついに9回まで来ました」

奥居「凄いですね。ここまで来たら達成してほしいです」


連夜「ここでやったら一躍有名だな」

松倉「上手く行きすぎだろ」

高橋「折角のチャンスだ。やってやれ」


霧生「積極的に打っていけ! 三振で構わん」

川田「はい」


パキーン!

アナ「センター返し! これはヒットになる!!!」


山里「はっ!(パシッ! スッ)

シュウ「(パシッ、ビシュ!)

川田「なっ!?」

審判「アウトッ!!!」

アナ「なっなんとっ!!! セカンド山里くん、打球に追いつきすぐさま森岡くんにトス。受けた森岡くんは 一塁に送球し、判定はアウト! 完全にヒットだった打球をアウトにしました」

奥居「凄いですね。プロでも滅多に見ませんよ」

アナ「これで後2人。後2人で完全試合となります」


松倉「ナイスプレー!」

シュウ「おぉ練習したかいありますね」

山里「こんな大事な場面で成功するとはな」


 続く木内は外角のスライダーで三振にとり、いよいよ後一人となった。


鈴村「………………」

霧生「悔いだけは残すな」

鈴村「ッス!」


ビシュ!

鈴村「タァッ!」

カーン

松倉「ッ!?」

連夜「セ、センター!」


アナ「右中間に高々と上がっている。追いつくか!?」


佐々木「(ダッ!)

ビシッ

アナ「センター佐々木くん、弾いた!」

奥居「記録どうなるんでしょうね……」

 近くまで来ていた久遠のカバーもあり、鈴村は1塁ストップ。

アナ「電光掲示板にHの文字が出ました。完全試合はここでストップ。鈴村くんのセンターへのヒットです」


松倉「あ〜ヒットか」

連夜「ありゃエラーだろ。享介なら追いついていた打球だぞ」

松倉「まあしゃーね。次で終わるぞ」

 しかし反撃もそこまで。1番山内も鈴村と似た打球を放つが今度は佐々木が余裕を持って捕りゲームセット。


アナ「今度は佐々木くん、しっかり捕りました。ゲームセット! 松倉くん、被安打1で完封勝利です」


連夜「お前ね。最後の打球、弾いたのと同じような打球だったぞ」

佐々木「ははは」

慎吾「完全試合のプレッシャーで固くなってたんだろ。仕方ないさ」

松倉「そうそう。気にすんな」


 千葉の強豪の一角、国立玉山高校を破り勢いに乗る桜花学院。この調子で試合に勝ち進んだ。









慎吾「さて、決勝の相手はどっちかな?」

 順調に勝ち進んだ桜花学院。ついに決勝進出を果たし準決勝第2戦に偵察に来ていた。

大河内「大方の予想通り、大岬と一宮か」

佐々木「やっぱ戦力的には一宮かな?」

 ちなみに偵察メンバーは慎吾・真崎・大河内・佐々木・久遠の5人だ。

真崎「それよりウチの方が問題じゃね?」

久遠「だよなぁ。明日誰が投げんの?」

慎吾「予定では先発薪瀬でいけるところまで行く。その先は未定」

久遠「………………」

 流石にほぼ1人投げている松倉が準決勝で137球を投げ、明日投げれるか微妙なライン。
 国定がドクターストップかかっているので明日投げれるのは司だけとなっている。


真崎「選手層って点じゃ大岬にも負けてるな」

慎吾「黙れ。それよりお前明日は出てもらうぞ」

真崎「はっ?」

慎吾「大河内先輩の肩だって万全じゃないんだ。お前の怪我はいつも通りなんだからそろそろ出ろ」

真崎「…………あっ! 肘が痛み出した」

慎吾「そのまま逝け」

真崎「酷ッ!」

大河内「とりあえず、もうすぐ始まるから試合見ようぜ」




千 葉 県 大 会 準 決 勝
先   攻 後   攻
一  宮  高  校 VS 大  岬  学  園
1年RF殿   羽 水   城2B1年
1年CF宮   地 和 田 谷CF 1年
2年3B松   山 鳴   海1年
2年LF角   谷 浅   月 SS1年
1年1B天   野 笹   部1B1年
2年2B河   崎 辻   井RF 1年
2年SS五 十 嵐 今   里 3B1年
2年斎   藤 園   部LF 1年
2年田   仲 水   野1年


殿羽「ついに準決勝Da! これで勝てば関東大会出場は確定だZe」

前田「気を抜くんじゃないぞ」

殿羽「無理でSu」

前田「………………」

天野「まあ相手は今年出来たばかりの新設校だろ? 余裕だって」

前田「その新設校が準決勝まで来たんだ。油断ならないだろ」

天野「大丈夫だって」

角谷「1年カルテットはいつも通りだな」

宮地「カルテットといいますか、あいつらだけですけどね」

広角監督「いつも通りなのは良い事だ。ッてことで田仲」

田仲「はい」

広角「5回までで良い。頼むぞ」

田仲「分かりました」



鳴海「………………」

城平監督「何をかっこつけている」

鳴海「固有アイコンついてるじゃないですか」

城平「んな確認か!!!」

水城「どうでも良いけど、オーダー酷いな」

城平「あん?」

水城「そこはホラ、螺旋好きにはたまらないオーダーですよ」

城平「………………」

浅月「螺旋の中でも固有キャラのネームはコッチでも固有ですよ」

城平「もうわけわからん」

浅月「まあ早い話、俺ら3人が固有なわけですよ」

城平「モウイイって」



アナ「準決勝第2試合、一宮高校対大岬学園。第1戦は桜花学院が延長の末2対1で勝利しました。 果たして桜花学院と戦うのはどちらか!? 今日の解説は残念ながら汎用さんです」

解説「すいません。奥居さんはさすがに忙しいので」

アナ「大岬学園は今年できたばかりの新設校。夏の大会も3回戦まで勝ち進みましたし早くも名前が知られてきましたね」

解説「決勝進出を果たした桜花も昨年共学になったばかりですし、新しい高校が増えてますね」

アナ「古豪対新設校、どちらが決勝に進出するのか!? まもなくプレイボールです」





アナ「1回の表、一宮高校の攻撃は1番ライトの殿羽くん。県屈指の俊足です」

解説「単純な足の速さなら桜花の森岡くんも負けてませんが殿羽くんの方は技術は格段に上ですね」


殿羽「さ〜出塁して走りまくるZe」

鳴海「そう簡単にさせるか!」

ビシュ!

殿羽「むU!?」

ズビシィ!

アナ「内角低め一杯のストレート! 精密機械の異名を誇る鳴海くん、見事のコントロールです」

解説「綺麗なフォームで投げてますね。余程のことがない限り失投はないでしょう」


スポーン

殿羽「甘いYo!」

カーン!


アナ「甘い球を叩いてライト前! 失投を逃しませんでした」

解説「いきなり失投してきましたね」


水城「なんでお前、制球は良いのに失投多いんだよ」

鳴海「まだ投手成り立てなんだ。文句言うな」

水城「もう2年はたってるんだろ?」

鳴海「う〜ん。一応もっと前から練習はしてた」

水城「じゃあもっとじゃねーか!」

鳴海「気にするな。点取られなきゃ良いんだ」

 俊足殿羽、2塁に悠々盗塁成功。宮地がキッチリライト方向に進塁打を放つ。  続く松山がライト前へ打たれ大岬が1点先制。

鳴海「むぅ! イヤなヤツめ!」

水城「んな簡単に盗塁を許すお前の方が問題だ」


殿羽「得点GET」

宮地「ウチの得点パターンでしたね」

広角「角谷、天野。畳み掛けろ!」

角谷&天野「うっす」


アナ「先制した一宮高校。更に1アウト1塁で角谷くんを迎えます」


鳴海「ここで打たせたら相手が乗ってしまう!」

水城「(もう乗りかけてるつーの)」

ズビシィ!

角谷「くっ」

スルスルスル……

天野「うんりゃあ!!!」

ブーン!!!


アナ「三振! 最後はゆったりと曲がるカーブボール! 2者連続三振です」

解説「4・5番の時はらしいピッチングでしたね」


水城「最初からちゃんと投げろ」

鳴海「盗塁でちょっと狂わされた」

水城「(図太い神経の癖に……)」




鳴海「よ〜し1点くらいなんだ! 取り返してやれ!」

水城「(誰のせいだと思ってんだよ)」


アナ「早くも1点を追いかけます、大岬学園はトップバッター水城くんが右バッターボックスに入ります」

解説「好投手の田仲くんが相手ですから、最初の失点は痛いですね」

アナ「夏の大会、投げていない田仲くん。データが少ないでしょうから余計やっかいです」


水城「(う〜ん……どんな球投げるか分からないから、様子見ようと思ったが……)」

 1打席捨ててでも球種を全部引き出そうとしたかったのだが、1点とられたため早く取り返したいという気持ちもあった。

水城「(ったく、鳴海のやろう手かけやがって)」

カキーン!

田仲「くっ!」


アナ「初球甘いストレートを逃しませんでした。打球はセンター前へ! 俊足水城くんがランナーに出ます」

解説「初回の一宮と同じ展開に持っていけるといいですけど」


水城「(2塁は確実に頂く。桜花の漣クラスじゃない限り俺は刺せない)」

田仲「………(ピシュ!)

水城「!!!」


アナ「あっと、牽制球! 帰塁できずタッチアウト!」

解説「勿体無いですね。2塁へ気持ちが行き過ぎましたね」


鳴海「はっ? なにしてんのお前」

水城「すいません」

 続く和田谷も簡単に打ち取られ、打席には3番鳴海。

鳴海「よ〜し、野球はツーアウトからだ! 続けよ浅月!」

浅月「あいよ」


田仲「(鳴海ね……夏の大会じゃハイアベレージを残したみたいだし注意必要だな)」

クククッ

ガキッ

アナ「外に逃げる球。恐らく伝家の宝刀スクリューでしょう。ミートできずピッチャーゴロです」

解説「この辺は見事!って感じのピッチングですね」


水城「はっ?」

鳴海「すいません」

浅月「………………」




 田仲・鳴海の投げ合いが予想されたこの試合、しかし展開はまったく違くなる。

・・・・*

パキーン!

アナ「これは行ったぁ!!! 4番角谷くんのホームラン! 2点差に開きました」

スポッ

水城「(アホが)」

パキーン!

天野「っしゃ!!!」

アナ「これまた入ったぁ! 2者連続ホームラーン! 5番天野くんにもホームランが出ました」

・・・・*

カーン!

田仲「しまった!」

アナ「ランナーを2塁に置いて、1番水城くんにタイムリーが出ました」

カーン!

鳴海「どうだ!」

キィーン!

浅月「OK」

アナ「連続タイムリー! この回追いつきました!」

・・・・*

シュタタタ

殿羽「ふっ♪ 俺を止めるなんて不可能Sa」

アナ「三盗成功! 今日4つ目の盗塁を決めました」

鳴海「やらしいやつめ」

水城「(だからそんなアッサリ許すなっつーの)」

カーン!

アナ「宮地くん、しっかりヒットを打ちました。勝ち越し成功!」

・・・・*

水城「うおぉぉぉ!!!」

ズシャアァァ

アナ「サード零している。セーフセーフ! スリーベースヒット。殿羽くんに負けず劣らずの俊足を魅せました」

田仲「(くっ速いな……)」

パッキーン!

アナ「これは大きい! 入るか? 入るか!?」

殿羽「あ〜こりゃ無理だ」

アナ「入ったぁ! ライトスタンドへツーランホームラーン!」

浅月「っしゃ!」

鳴海「サイコー!」

・・・・*

アナ「さぁ7対8、安打数は両チーム合わせて29本も飛び出している乱打戦となっております」

解説「ホームランも合わせて5本出てますしね。荒れた試合展開ですね」

アナ「大岬学園が1点リードしています。しかし一宮高校もこの回は1番の殿羽くんからです」


鳴海「くぅ……今日4打数4安打5盗塁。相性最悪だZe」

水城「(それ以前に5盗塁はないだろ)」

殿羽「喋り方パクッてんじゃねーYo!」

鳴海「………………」

ガキッ

鳴海「打ち取った!」

殿羽「うおぉぉO!!!」

鳴海「へっ?」

浅月「くっ……ダメか」

アナ「弱弱しくショートに転がったのを見て全力疾走の殿羽くん。足を生かす内野安打、今日5安打の固め打ち!」

鳴海「えっ? なんで投げない?」

浅月「間に合わないと思ったから」

鳴海「くそっ……これで7盗塁も許しちまった」

水城「三盗くらい防げや」

 予想通り、2球で殿羽は3塁まで進む。これにはさすがの水城も呆れるしかなかった。

鳴海「例え3塁にランナーが進もうとも、抑えれば一緒だ」

宮地「ほっ」

パキーン!

アナ「2打席連続タイムリー! 同点に追いつきました!」

水城「オメェよぉ。いい加減にしねーとキャプテン略奪だぞ」

鳴海「すんません」

 水城の脅しが効いたのか、続く松山を三振に抑える。しかし……

角谷「ハァッ!」

パキーン!!!

アナ「な、なんと外角低めに曲がり落ちてくるカーブボールを逆らわずライト方向へ! これは大きいぞ!?」

解説「無駄のないバッティングですね」

アナ「入ったぁ!!! この場面でのホームランは貴重な勝ち越しアーチ!」

解説「速球ならいざ知らずゆったりとしたカーブを流し打ちであそこまで飛ばすとは……」


鳴海「……すまん……」

水城「いや、今のは角谷さんが凄すぎただけだ」

浅月「ああ。変化も制球もかなり良かったぞ」

鳴海「………………」

 角谷に完璧に運ばれ戦意喪失したのか、続く天野にも今日二本目を運ばれ勝負あり。  田仲の後を受けた前田が完璧に大岬打線を封じた。

シュパーン!

浅月「ッ!」

アナ「良いコースに決まった! 判定は!?」

審判「ストライク! バッターアウト!」

アナ「ストライクだ! 見逃し三振! 前田くん、最後のバッターを三振にしとめゲームセット! 決勝進出は一宮高校。明日桜花と決勝を行います。なお、この2校は関東大会出場が決まりました」




慎吾「決勝は一宮か……」

大河内「この打線を薪瀬だけはキツいぞ」

慎吾「そうですね……頭からいったとして一回りは楽勝でしょうけど…… スタミナのない薪瀬ですから、5回辺りに捕まる可能性が高いですね」

真崎「どうするんだ?」

慎吾「ちと早いけど、切り札投入かな?」

真崎「切り札?」


 慎吾の言った切り札とは? その全貌は決勝戦に明らかになる。


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