Tenth Melody―嵐の前の静けさ―


連夜「さ、関東大会だ」

佐々木「シュールな始まりだな」

連夜「簡潔で分かりやすいと言って欲しい」

佐々木「………………」

シュウ「なんかさ俺ら、千葉大会1位通過ってことになってるけど?」

連夜「抽選とクジの結果でな。ついてるわ」

木村「今年はウチの県が開催県だからな。1位通過はシードになる」

シュウ「ほほぉ。だから1位通過にこだわってたんだな」

連夜「それ以前に2位だと神奈川1位、つまり横浜海琳と当たるんだよ。それが嫌だったんだ」

久遠「ちなみに俺らの対戦高予定は?」

木村「栃木1位の栃木第一か神奈川2位の葉梨高校だな」

国定「なら栃木第一で決まりですね」

連夜「でしょうね」

シュウ「まぁ2回戦からなら松倉も間に合うし、してやったりですな」

連夜「その仕組んだ感が出る言い方はやめてくれ」





慎吾「そうですか……ありがとうございます。良し、次行くぞ」

真崎「え〜! まだ行くのかよ! 少し休もうぜ」

慎吾「お前から昔の事件を洗ってみようって言ったんだろ!」

真崎「そりゃお前、あのAYASEってヤツが絡んでるなら姿の1件にも繋がるかと思ってよ」

慎吾「アホのわりには良い思考している。後は足を動かせ」

真崎「少し休もうぜ。これで2時間歩きっぱなしだぜ?」

慎吾「時間は限られてるんだ。文句言うな」

真崎「鬼――ッ!」


瑞奈「綾瀬さ〜ん!!!」


慎吾「お、どうかしたか?」

瑞奈「有力情報です。お姉さんの事故のとき現場を調べた警察官の方を見つけました」

慎吾「ん? それはおかしな話だな」

瑞奈「なんでですか?」

慎吾「俺らもその事件の時の警官たちは当たった。が有力な情報は得られなかった」

真崎「ついでに守秘義務があるってんで、家族の綾瀬相手でもダメだった」

瑞奈「ふっふっふ。甘いですよ、綾瀬さん」

慎吾「あん?」

瑞奈「私の調べ上げた人は元警察官です!」

慎吾「……も、元?」

瑞奈「そうです! つまり守秘義務なんてあったもんじゃありません!」

慎吾「いや、それは違うだろ」

真崎「でも、普通のサツよりかは話通じるんじゃね?」

慎吾「ま、そうかもな。っで今、ソイツ何してんだ? まさか退職したよぼよぼなジジィとは言わないよな?」

瑞奈「言いませんよ! 理由は分かりませんけど、今は辞めて探偵業をやってるみたいです」

慎吾「うさんくせーな」

瑞奈「良いじゃないですか! 探偵ですよ探偵!」

真崎「そうだな、探偵だもんな」

慎吾「お前ら、探偵って響きだけだろ」

瑞奈「とりあえず事務所まで調べたんで行ってみましょう!」

慎吾「……アンタ、どこからそんなの調べ上げたんだ?」

瑞奈「企業秘密です☆」

慎吾「………………」

真崎「(一度使ってみたかったんだろ? 作者)」

(´ー`)ノ<はい

慎吾「………………」


・・・・*

瑞奈「ここです。『椎名探偵事務所』」

慎吾「…………すまん、どこがだって?」

瑞奈「この目の前に広がっているプレハブがです」

真崎「……ほんとに?」

瑞奈「はい。私の情報が間違ってるわけありません」

慎吾「…………良し、真崎。行け」

真崎「ってなんでやねん! みんなで行こうぜ!」

慎吾「犠牲になるのは一人でいい」

真崎「おい! 犠牲って言うな!」

瑞奈「ようは偵察ですよ偵察」

真崎「いやいやいや!」

慎吾「良いからさっさと行け!」

ドンッ!

瑞奈「(ガラッ)

真崎「うわっとっとっと」

ズシャアァ!

真崎「痛ッ……なんつーコンビネーションだ……」


??「キミは……誰かな?」

真崎「いえ! 通りすがりの高校生です!」

??「……どうやったらこんなところ通りすがるのかな?」

真崎「勘弁してください。ここで見たことは内緒にしますので」

??「あ、いや、そんなつもりじゃ……」

真崎「ほんと、まだ死にたくないんです……」

??「いや、だから人の話を聞こうよ」

真崎「取って食ったりしません?」

??「するように見えるかい?」

真崎「はい」

??「…………食べたりしないから、とりあえず事情を話してくれ。なんでいきなり事務所に飛んで入ってきたんだ?」

真崎「……………そうだ! あいつらぁ!」

??「お〜い……」

真崎「あ、私桜花学院1年、真崎要と言います。とある事件のことで友達と調べてるんです」

??「ほぉ。っでその友達とやらは?」

真崎「外にいます。呼んで来ますね」


・・・・*

慎吾「……真崎のやつ……出てこないな……」

瑞奈「もしかして取って食べられちゃったんじゃ……」

慎吾「良し、帰ろう」

瑞奈「そうですね」


ガラッ!

真崎「おい、話がついたぞって何帰ろうとしてんねん!」

慎吾「お、無事だったか。取って食われたかと思ったぞ」

真崎「結構話の通じる人だ。さ、さっさといくぞ」

慎吾「……ほんとに大丈夫か?」

真崎「半々だな」

慎吾「………………」


・・・・*

シイナ「ようこそ椎名探偵事務所に。所長の椎名辰彦だ」

慎吾「綾瀬慎吾です。3年前に起こった事故のことで調べてました」

シイナ「3年前? ……あぁ、綾瀬って言ったら綾瀬美佳のか」

慎吾「はい。僕の姉にあたります」

シイナ「なるほど。それで私のもとに来たわけか。良いだろう、君が知りたいことを知っている範囲で教えよう」

慎吾「……聞きたいことは一つです。あの事故……ほんとに事故だったのか?」

シイナ「ふむ……キミはどう思うかな?」

慎吾「……正直、事故とは思えません。不自然な点が少なくても2点あります」

シイナ「ほぉ?」

慎吾「一つ目。あの自動車、ブレーキをかけた痕跡がありませんでした。二つ目、なぜ姉の体に切り傷があったのか?」

シイナ「たしか警察の考えは……」

瑞奈「一つ目は咄嗟のことで反応できなかった。二つ目に関しては本件とは関係ないという考えみたいです。」

シイナ「キミは二つ目に関して怪しいと思ってるんだね?」

慎吾「ええ。関係ないはずないんです。多分……」

シイナ「誰かに切られ、懸命に逃げたがひき殺されたってところか。だが……」

慎吾「……その運転手は逮捕されました。過失致死で」

瑞奈「そのせいで二つ目は本件と関係ないという判断になったようです」

シイナ「キミの考えは分かった。っで私のところにきたのは?」

慎吾「あなたは当時、この事件に関わってました。なんか知ってるんじゃないですか!?」

シイナ「ふむ。たしかにあれは不可解な事故だ。私も調べては見たよ、警察を辞めた後にね」

慎吾「!!! そ、それで!?」

シイナ「明確な証拠なんて一つもない。ただ間違いなく、あれは他殺だ」

真崎「それは知ってるよ。事故にしろ自殺ではないんだ」

シイナ「違う、そうではない。綾瀬美佳、彼女は車にひかれて亡くなったんじゃない、そう言ってるんだ」

真崎「なっ!」

瑞奈「なんですって?」

慎吾「ど、どういうことだ!?」

シイナ「首を絞められた跡が……あったようだよ。死因は絞殺だ」

慎吾「ちょ……マテよ。警察はたしかに……」

シイナ「警察の情報を変えれるような大きな存在が後ろにいるってことさ」

慎吾「………………」

シイナ「この件、私のほうでも調べておこう。キミたちはまだ高校生なんだろ? 危険かも知れないことに巻き込むわけにはいかない」

慎吾「……悪いがそれは断る。アンタみたいなのが調べてくれるのはありがたい。だがこれは俺の問題だ」

シイナ「あくまで自分で調べると?」

慎吾「ああ」

シイナ「良いだろう。ま、私は勝手に調べるとしよう。なにかあったら来なさい」

慎吾「……ありがとうございます」


・・・・*

慎吾「…………悪くない結果だったな」

真崎「やっぱ睨んでた通りってわけか?」

慎吾「ふっ。後はアイツがどう絡んでるか、だな」

真崎「一歩前進じゃん」

瑞奈「そういや野球の方は?」

慎吾「来週からだろ? 関東大会」

瑞奈「勝てるんですか?」

慎吾「さぁな。選手次第だな」

真崎「お前も出れば良いじゃん」

慎吾「断る。俺は自分のことで精一杯だ」

真崎「あっそう」




連夜「さて関東大会もすでに何試合か経過してるぞ」

佐々木「………………」

連夜「なんだ、何か言いたそうだな、享介」

佐々木「いや、別に良いや」

国定「次、葉梨と栃木第一の試合だろ?」

連夜「ええ。仕組んだかのようですね」

国定「見に来たんだろ。何言い出してんだよ」

連夜「ま、とにかくしっかり偵察しましょう」

国定「………………」


 しかしいざ試合が始まると予想に反して葉梨高校が有利に試合を展開する。

パキーンッ!


連夜「今打ったのは?」

国定「4番の響だな。投手でもあるようだ」

連夜「ワンマンチームか?」

佐々木「後1・2番の足は要注意みたいだな」


パキーンッ!

連夜「お? 良い当たり」

佐々木「今打ったのは……紅松ってやつか。良い駒が揃ってるじゃん」

国定「激戦区の神奈川2位ってだけはあるな」


カクンッ!


連夜「スゲー落差。今のカーブか?」

国定「多分な。俺や松倉が今練習している、簡単に言うと縦のカーブだろうな」

連夜「あんなに落ちると厄介だな。左バッターは」

佐々木「どうやら葉梨高校が上がってきそうだな」

連夜「みたいだな」


ズバーンッ!


連夜「ゲームセットッと」

国定「葉梨か……予想外だったな」


??「………………」


連夜「なっ!?」

佐々木「どうした?」

連夜「……あ、いや……なんでもない」

佐々木「なんだよ……」

連夜「(今の……壬生?)」

国定「さ、結果を監督のところに言って、早急に対策練ろうぜ」

連夜「(……まさかな。あいつがこっちに来てるわけがない……つーかそもそも野球できる体じゃ……)」

佐々木「おい、漣、大丈夫か?」

連夜「……あ、すまん。……大丈夫」

佐々木「そうか?」

連夜「(まぁ試合になれば分かるか……)」



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