Twentieth Fifth Melody―強者という言葉は弱者がいて初めて成り立つ―


 高校野球、夏の大会が各地で幕を明け、本編舞台となる千葉県でも熱闘が繰り広げられている。  松倉というチームを支えていたエースを欠いた桜花学院は2回戦からの出場となり……


ズッバーンッ!


大友「しっ!」

滝口「ナイスピー!」


 長いイニングス投げられる松倉の離脱で一気に投手事情が苦しくなった。  とりあえず初戦は正直、格下ということで1年バッテリーに任せてはいるが。


慎吾「まぁ大丈夫そうだな」

姿「次までは大友で行きたいところだな」

慎吾「……行きたかったところな……」


 はぁとため息をつくのも無理はなく、3回戦から鳴海率いる大岬学園と当たってしまう。  流石に大友じゃ厳しいだろうと国定を出す予定ではあるが、早く出してしまうと  トーナメント形式の高校野球のため後々厳しくなる。  ましてや国定は実力が高いといえど復帰直後。絶対的なスタミナが足りなかった。


連夜「だが大友でも短いイニングならいけるだろうぜ」

慎吾「だな。継投しかないよな」

真崎「とりあえず、早くコールドにしろよ。後2点だろ?」

連夜「その2点が難しくてな」


 桜花は5回までに5点を奪うも、コールド圏内の7点まで後2点が中々奪えず結局試合を9回までやってしまった。  大友は7回を投げ4安打無失点の好投を見せるも4つの四球を与えてしまい127球を投じてしまった。


大友「連投は慣れてるんで大丈夫ですよ」

慎吾「と言ってもな、やっぱ肩に疲れは残るだろ。そうしたらストレートの球威落ちるだろうしな」

国定「まぁ次は俺が投げるし、大友は完全休養だな」

連夜「いざとなったら俺やシュウも投げるし」

シュウ「おう、任せとけ」

慎吾「まぁ、考えとくわ」


 違う球場で行われている大岬学園が勝ったという知らせを受け、3回戦で戦うことが確定した。  桜花学院は唯一クジ運に恵まれているというのなら、一宮と国立玉山が別ブロックにいて決勝まで会わないということだ。  千葉大会と言えども、去年の甲子園出場校が同ブロックにいないのは唯一の救いだったかもしれない。



・・・・*



千 葉 県 大 会 3 回 戦
先   攻 後   攻
大  岬  学  園 VS 桜  花  学  院
2年2B水   城 森   岡SS2年
2年RF和 田 谷 大 河 内 3年
2年ラザフォード 高   橋3B3年
2年SS浅   月 上   戸 LF3年
2年鳴   海   漣  CF2年
2年3B今   里 国   定 3年
2年1B笹   部 久   遠 RF2年
1年CF会   津 山   里2B 3年
2年LF園   部   姿  1B2年



慎吾「で、まぁ順当に大岬学園とになったわけだが」

連夜「昨年は勝ったけど、ここ1年で伸びてると考えられるからな」

真崎「それはうちも同じだろ?」

連夜「まぁな」

木村「抑えるのはとりあえず国定と大河内に任せるとして、点とることを考えようぜ」

慎吾「それで鳴海の攻略だが、コントロールはいいくせにどこか抜けてる傾向が見られる」

シュウ「と言うことは?」

慎吾「ストレート狙いの失投待ちだな。あいつの変化球はタチが悪いから手を出すな」

高橋「それが出来たら苦労しないけどな」

慎吾「大河内先輩、高橋先輩、漣、姿には有無を言わさずやってもらいますよ。この4人の前にランナーを出せば勝ちだな」

鳴海「そうはいくか!」

慎吾「…………お前、試合前に敵チームのベンチに来るなよ」

鳴海「いや、ボールを取りにきたんだ」


 しかし鳴海はボールを持っておらず、よくよく考えたらノックを見ながらミーティングをしていたが  ボールはベンチの方へ来ていなかった。


連夜「そもそもお前、先発だろ。投球練習してろ」

鳴海「それならもう済んでいる。俺はやりすぎたらいかんタイプなんでね」

連夜「肩重いのか?」

鳴海「ふふっ。どう取るかは自由だ」


水城「試合前に敵チームと談笑してんじゃねーよ」

鳴海「お迎えが来たようだ。では今日はいい試合をしよう!」


 水城に引きずられながら鳴海は戻っていった。  鳴海がいなくなった桜花のベンチは軽く静寂の時が流れていた。


慎吾「し、しかし鳴海は1・2回戦を完封している。疲れは多少あるだろう」

連夜「図太い神経だからな。ゆさぶりはきかないだろうけど」

木村「だがクイックはヘタだ。偽装スタートとかしなくていいから、どんどん走れ」

シュウ&久遠「お任せを!」



 両チーム、オーダーを提出し試合前のノックも終わり、いよいよ試合開始。


両チーム「しゃす!」


 先攻は大岬学園、切り込み隊長の水城が右バッターボックスに立つ。  一方、守る桜花学院はエース国定、キャッチャーは大河内の復帰バッテリー。


大河内「(さて、一気にいこうか)」


 大河内から出た決め球のサインに力強く頷き、プレートに足をかける。  サイレンが鳴り響き、第一球目を投じた。


グッ


水城「くっ!」


キィン


国定「なっ!?」


 初球のシュートを詰まらされながらも振り切り、打球はショートの頭上をふわりと超えるヒット。  いきなり先頭バッターを許してしまう。


シュウ「ドンマイ、ドンマイ」

山里「ゲッツーとろうぜ」

大河内「(だが俊足の水城だ……俺の肩で刺せるかな……)」


 いくら肩が良くなったとは言え病み上がり。ましてや大河内は元々キャッチング・リードに長けたキャッチャー。  フットワークの良さで盗塁阻止率は高いものの、地肩という点ではあまり強くはなかった。


国定「…………っ!」

水城「おっと」


シュッ


審判『セーフッ』


 牽制を繰り返すも水城はゆっくり戻ってセーフ。  リードはさほど大きくはない。しかしだからと言って走る気がないというのはあてはまらない。  一口に盗塁と言っても選手によっては大きく変わってくる。


木村「俺なんかはリードを取って戻りに重点を置くタイプだったが水城って選手は逆のようだな」

慎吾「戻りへの意識を半減させて、スタートに重点を置くか」

木村「シュウや一宮の殿羽は俺と同じだな。水城は久遠とか……後、真崎もだろ」

慎吾「と言ってもこいつの場合、あんまりリードとると頭から帰ることになるから その際、肘痛めるんだよな」

真崎「アハハハハ」


 笑って誤魔化す真崎。一度ケガして以来、癖になってしまっている。  山里より攻撃面で勝っているのにベンチスタートの理由の一番はやっぱりケガがあるからの他ならない。


慎吾「初回から先制されるとキツいな……」


 慎吾はグラウンドの状況を見ながら、ペンを片手に呟いた。


大河内「くそっ」

国定「気にすんな。抑えていくぞ」


 懸念したとおり、水城に盗塁を許してしまい2番に送られ初回から1死3塁のピンチを迎える。  ここでバッターは3番の新戦力。


ラザ「ヨロシクオネガイシマス」

大河内「へぇ、日本語喋れるんだ」

ラザ「アメリカでマナンデきた」

大河内「そうか」


 一言、二言交え、改めて集中する。状況は初回から最悪と言わざる終えない。


大河内「(だが、抑えれば流れはうちに来る)」


 逆に決め球を使い打たれ、このままずるずると先制されたら流れは向こうにいく。  序盤にして早速山場が来たと言えるだろう。


大河内「(この選手のデータはないが……国定がきちっと投げれば抑えれるだろ)」


 手短にサインを送り、テンポよく投げ込む。


国定「しぃ!」


ピッ


ラザ「………………」


ズバーンッ!


 ストレート2球でカウント1−1とするがラザフォードはピクリともせず見逃す。


大河内「(変化球狙い? しかしこいつ、切れ者っぽいしな……)」


 読みでは負けないつもりでいても、得たいの知れない選手相手はちょっと怖い。  どういう考えをするのかも分からず、ましてや外国人。警戒するのは当然だ。


ククッ


ラザ「………………」


バシッ


 試しに今度はボール球の変化球を続けるも、これも見逃す。


国定「(ん〜どうしたんだ、大河内め。警戒しすぎだろ)」


 カウント1−3。次が4番と考えると歩かせてランナーを溜めるのは得策ではない。  ここは自信があるストレートとシュートで一気に打ち取ることにした。  そして……


ククッ!


バシッ


審判『ストラーイク!』


ラザ「………………」


 結局、1度もバットを振らず見逃し三振に倒れる。  これにはバッテリーも不審な気持ちになる。


ラザ「アサヅキ」

浅月「……了解」


 耳打ちされた浅月への初球!


カッキーンッ!


国定「何ッ!?」


 初球、外角のストレートを完璧に捉え左中間へ!


連夜「ゲッ、きやがった」


 センターの連夜が駆け足で追う。  それを見たレフトの上戸が思いっきり叫ぶ。この打球は完全にセンターの打球だ。


上戸「おーい! 漣ッ! 急げぇぇ!!」


 連夜がボールを取る頃には水城は悠々ホームイン。打った浅月も2塁を蹴って3塁へ。


連夜「なめんな、ボケェッ!」


ビシュウッ!


高橋「ナイスっと」

浅月「えぇぇっ!?」


 センターからワンバンで届き、3塁を狙った浅月はタッチアウト。  ピンチの芽は事前に摘むことは出来たのだが……  ベンチでは今の連夜のプレイで頭を痛くしているのが数名いた。


慎吾「……アイツ、守備良くなってねーぞ」

木村「あんだけ守備練して上達しないのも珍しいよな」

真崎「練習試合で負けた半分はセンターをエラーだしな」


 エラーと言っても打球に追いつかないなど、記録にならないエラーが多かった連夜。  バッティングやキャッチャーとしてのセンスと比べて、外野は余りにも酷いとしか言いようがない様だった。  とは言え、左利きの連夜が後普通に守れるのはファーストだけで姿とのコンバートを本気で考えたが  やはり連夜の肩と足は捨てがたいものがあったのも事実。


慎吾「しかし酷すぎるな」

連夜「何が?」


 先ほどのプレイでチェンジとなり、ベンチに戻ってきた。


慎吾「お前の守備だよ」

連夜「一生懸命やってんだけどな」

佐々木「せめて走って追えよ。何で駆け足なんだよ」

連夜「いや、追いつけるなって思ったら伸びてさ」

佐々木「距離感覚ゼロか!」

連夜「失礼な」

姿「綾瀬、本気で守備考えないと痛い目に合いそうだぞ」

慎吾「………………」


 守備の話もいいが、桜花は今、1点先制されている。  点を取られた以上、取り返さなければどんなに抑えても勝てはしない。  しかしそこに立ち塞がるのは現在18イニング連続無失点中の鳴海涼!


スパァッ


シュウ「キュッ」


クククッ


カァン


大河内「しまった」


スルスルスル


ガキッ


高橋「あっ」


鳴海「まいど!」

ラザ「ナイスピッチ」


 桜花自慢の上位打線がわずか7球で抑えられてしまった。


慎吾「そこに座ってください」

上位打線「すいませんでした」

連夜「だがあのキャッチャー、ちょっと注意だな」

慎吾「ん?」


 ベンチの端に座っていた連夜が手の甲に顎を乗せ、ベンチに戻るラザフォードの背中を見ながらそう言った。


連夜「予めデータがあったかは知らないがな」


 それだけ言い残して我先にグラウンドへ出て行った。


慎吾「まぁ、とにかく抑えてください。攻撃は何とか考えますので」

国定「了解」


 2回の表、5番の鳴海から。昨年までは3番を打っており、バッターとしての評価も高い。


大河内「(右の好打者か。点とられたらマズイし、シュート使って行くぞ)」

国定「(了解)」


 ストレートとスライダーでカウントを作り、1−2と並行カウントでの4球目。


ググッ


 伝家の宝刀、シュートを使う。


鳴海「いっくぜ〜」


キィーンッ


国定「ッ!」

大河内「なっ……!」


 腕を折りたたみ捉えた打球は三遊間のど真ん中を破っていく。  初回の水城といい、これでシュートを狙い打たれているのをバッテリーは察しつく……しかし…


国定「(シュートを簡単に打ってる……やっぱり前より威力落ちてるのか?)」


 シュートが打たれ、復帰直後の国定が自信をなくしかけている。  これこそが大岬が仕掛けた1つ目のワナ。  いくら打たれたとはいえ、打ったのは大岬でハイレベルバッターの水城と鳴海。  2人とも狙っていれば打つ実力者ではある。しかし国定にとって誰であれ決め球を打たれたことに変わりはない。


大河内「(次の今里・笹部も右だ。シュートで打ち取りたいんだけど……)」


 大河内は分かっていた。シュートの威力は悪くない、打った2人が良かっただけということを。  しかし当の本人が自信をなくし、シュートのサインに首を振った。  仕方なく、ストレートと他の変化球で打ち取ることにした。


ズバーンッ!


笹部「くぅ……」


 シュートがレベル高すぎて相変わらず他のボールが霞むが、高レベルにまとまっている国定にとって  大岬の下位打線はアウトカウントを増える要員に過ぎなかった。


浅月「どあほう」

笹部「最近、流行ってるのか、それ?」

浅月「元ネタは有名だから触れないぞ」

水城「どっちにしろここで話すことじゃない」

ラザ「カカシ、ココマデはヨテイドーリだロ?」

水城「かかし?」

ラザ「ン?」

水城「いや、なんでもない」

浅月「まぁラザフォードの言うとおりだ。会津、頼むぞ」

会津「任されました」


 2死1塁となり、バッターは8番の唯一1年でのスタメン、会津。


大河内「(こいつは去年見なかったな。1年か?)」

国定「(また右か……)」


 そしてまたシュートのサインが出た。  今里の時も笹部の時もしきりに出していたが、首を振っていた。  さすがにここでも振ったら読まれてしまうと思い、国定は渋々頷きモーションに入る。


国定「シッ!」

大河内「(よし、さすが国定)」


 大河内としてみればこの8番の右相手にシュートで打ち取り、今後シュートを使うメドを立たせるためだった。  しかしここまでは大岬が仕掛けたワナ。  そう、会津にシュートを投げさせるのは大岬にとっては予定通りなのだ。


カッキーンッ!


国定「………………」

会津「甘いですよ」


 完璧に捉えた打球はレフト線に入るツーベースヒット。  1塁ランナー鳴海は一気にホームイン、これで2−0と順調に点数を重ねる。


キィーンッ


 気落ちしてしまった国定は甘く入ったボールを捉えられる。


山里「よっ」


パシッ


姿「ナイスプレー」


 しかしセンターへ抜ける打球をセカンド山里が逆シングルで捕球しワンステップで1塁へ。  頼もしくなった内野の要のおかげで被害を最小限に抑えることができた。


国定「………………」

大河内「打ったのはたまたまだ。切り替えろ」

国定「な、何ッ!? 俺のシュートがたまたまで打たれたって言うのかよ!」

大河内「落ちつけ。あの1年、8番ってことで油断したのは事実だ。 それにその前の水城、鳴海は向こうの主力。狙われてたんだ。俺のリードミスさ」

国定「リードミスとか関係ねぇんだよ! 打たれた事実に変わりはない!」

慎吾「国定先輩、落ち着いてください」

国定「くそっ!」


バンッ


 グラブを乱暴に投げ捨て、ネクストバッターズサークルに向かう。  グラウンドでは上戸が三振に倒れ1死になったということろだ。


慎吾「よっぽどショックだったのか……」

大河内「薪瀬、早めに用意してもらってていいか?」

司「あ、はい」

木村「あー見えて国定もピッチャーだからな。プライドは高いんだ」

慎吾「自分の投球が出来る具合まで回復しただけに打たれたのがショックだったんだろ」

真崎「でも打たれるのってある意味普通だろ?」

大河内「多分、松倉不在が意外とプレッシャーになってるんじゃないかな」

松倉「……去年と逆ってことですか」

連夜「へ〜松倉ってプレッシャー感じてたんだ」

松倉「失礼な。投げ抜かなきゃいけないって気持ちはあったぞ」

姿「て言うか、何でお前がいんの?」

連夜「鳴海めぇ、ちと見ない間にあんなスローカーブ投げるようになったとは」

姿「いや、去年から投げてたぞ」

連夜「………………」


ズビシィッ!


審判『ストラーイクッ!』


鳴海「オッケーッ!」

ラザ「イイちょうしダナ」

国定「くっ!」


 国定も三振に倒れ、この回もわずか8球。非常に少ない球数になっている。


鳴海「いや〜絶好調!」

水城「疲れはないようだな」

鳴海「疲れ? 1・2回戦共に100球投げてないんだよ? 楽勝楽勝」

水城「改めて思うとスゲーな。ラザのリードがいいんだな」

ラザ「カカシ、ピッチャーがナルミしカいなイノハモンダイだロ」

浅月「かかし?」

ラザ「ん?」

浅月「なんでもない」

会津「(なんで先輩たちはつっこまないんだろう?)」


 試合は大岬のペースで進み、3回表、1番の水城からの好打順。  1回と同様、水城が出塁しバントで送り1死2塁とする。


国定「くそっ!」


シュッ


キィーンッ


ラザ「フッ」


 ラザフォードの打球は右中間を破るタイムリーツーベース。  更に1点追加される。更に4番浅月を歩かせてしまい、1死2塁1塁で5番鳴海を迎えたところで桜花ベンチが動く。


佐々木「タイム願います」


 佐々木が審判の元にいき、慎吾がベンチから手でポジション交代を指示する。


シュウ「ふっふっふ〜出番だぜ。本編初登板!」

佐々木「薪瀬が作り終えるまでな。とりあえず鳴海だけは抑えてくれ」

シュウ「任せろ!」


 ピッチャーとショートを交代し、シュウがピッチング練習を開始する。


佐々木「鳴海まで国定さんの方が良かったんじゃね?」

慎吾「あれじゃあ打たれるさ。それより森岡の方がなんか起きそうだったから」

木村「ところでシュウってピッチング練習してたの? 初めて見るんだけど」

慎吾「セットポジションだけは教えておいた。ボーク出されたらたまったもんじゃねーし」

木村「え、変化球とかは?」

慎吾「とりあえず肩がいいからやらせてみただけだし」

木村「………………」


 ピッチング練習を終え、状況1死2塁1塁で鳴海を迎える。


鳴海「まさかシュウがピッチャーとはな。秘密兵器ってところか?」

シュウ「せい!」


シュッ


審判『ストライク』


鳴海「は?」

大河内「(スゲー棒球)」


 言うまでもないが肩が強ければピッチャーをやれるというのは別の話だ。  もちろん肩が強いに越したことはないが、プロの野手でも140キロ超えるボールを投げれる選手は多く存在する。  でもピッチャーは出来ない。球の質というのがピッチャーの投げるボールは違うからだ。  故にシュウの投げるボールは棒球、つまりスピードの出てる割には威力がない、打ちやすいボールとなる。


カキィン


鳴海「なめんな!」


バシッ


高橋「セカンッ!」


 三遊間への打球をサード高橋がファインプレー。  セカンドへ送球、更にファーストへ転送しダブルプレー。  シュウを投手という博打は奇跡的に抑えることに成功した。


慎吾「よ〜し」

シュウ「無事、帰還しました」

真崎「何とかなるもんだな」

姿「グラウンドにいたら余計、そう思うぞ」


 イニング毎に点を取られてるため早くも3点ビハインド。  いい加減、点取っときたい桜花。3回裏は7番の久遠から。


連夜「久遠、最初で最後の打席だ。思いっきりやってこい」

久遠「は? なんでよ」

連夜「次から司なんだろ? 国定さん下げるわけにもいかないしな」

久遠「で、なんで入れ替わりが俺なの?」

連夜「ポジション的にはお前がベストだから」

慎吾「まぁ山里先輩にするとセカンド漣になるからな……すまんな、久遠」

久遠「へいへい、チームのためですからね」


 と言うことでこの打席がこの試合の最終打席となる久遠。  並々ならぬ覚悟で打席に入った。


ラザ「(ン? ナンカこのばったー、キハクが……)」

鳴海「どうした、久遠。試合序盤から」

久遠「俺はこれで最後なんだ!」

鳴海「は?」


カキーンッ


久遠「おっしゃ!」

鳴海「えぇ――ッ!?」

ラザ「ぼ、ぼーるダマ……」


 外角に外したボールを強引に叩き、ファーストの頭上を超えるヒット。  ライトが捕球する間に俊足を飛ばして2塁へ滑り込み、セーフ。  2塁に到達した瞬間、拳を自軍のベンチに突き出す。


連夜「あいつ、代打降格の方がやる気出すんじゃね?」

佐々木「それを言うな」

姿「綾瀬、作戦は?」

慎吾「ここはバントだろ。1点ずつ返していこう」


 続く山里は指示通り送りバント。  しかしここで焦った鳴海が3塁へ送球。野手選択となり、無死3塁1塁とチャンスが広がる。


ラザ「ナニヲあせルヒツヨウがアッた?」

鳴海「いや、ついね」

水城「次が姿だからだろ」

鳴海「まぁ……それもあるね」

ラザ「アノ9バン、そンナにウツノカ?」

鳴海「あぁ。普通ならクリーンナップだろうな」

ラザ「ナルホドナ」


 相手側も警戒するバッター、姿のところではあるが桜花ベンチはここで奇襲をかける。


慎吾「山里先輩を走らせよう。ダブルスチールだ」

真崎「は? ここで!?」

木村「しかもわざわざダブル? 単独でいいじゃん」

慎吾「漣はゆさぶりは効かないと言ったが、姿がバッターということであのミスだ。 少なからず動揺はするとふんだ。ここは勝負に出る」

連夜「まぁ良いと思うぜ。流れ良くないし」


 ここで山里がスタートを切り、2塁送球間に3塁ランナーが突っ込むダブルスチールを敢行することにした。  そのサインは2人のランナーとバッターに送られ、皆、驚きを隠せなかった。


姿「(おいおい……いきなり動くなぁ……)」

ラザ「…………?」

鳴海「(ん〜なんか様子がおかしいな)」


 ランナーとバッターの微妙な表情変化でバッテリーも警戒する。  様子見で1球外すことにし、姿への第1球を投じた。


ダッ!


鳴海「おっと!?」

ラザ「――!」


 投球と同時に1塁ランナー山里がスタートを切る。  少し遅れたが、ダブルスチールを考えるとベストとも言える。


ラザ「ナルミ!」

鳴海「へ?」


ビシュッ!


久遠「よっしゃ!」


バッシィッ!


鳴海「うわっ!?」

久遠「へ?」


 ラザフォードから送球されたボールは避けていた鳴海へ一直線。  呼ばれていたため、反応できたが並の反射神経、もしくは気づかなかったら絶対に大怪我していただろう。  しかし、これで送球と同時にスタートを切っていた久遠が三本塁間に挟まれてしまった。


鳴海「さぁ、どうしてくれよう」

久遠「………………」


 なすすべがなく、タッチアウトとなる。


連夜「スタートが早すぎるわ!」

久遠「嘘やん。あれぐらいじゃねーとホーム間に合わないって」

慎吾「まぁ読まれてたんだな……」

連夜「しかしあのキャッチャー、肩いいぞ」

シュウ「むぅ! それは是非、勝負を挑みたいところだな」

慎吾「鳴海はスローカーブ使いだ。球種さえ読めば大丈夫さ」


 奇策は失敗に終わったが、山里は2塁へ行きまだ得点圏にランナーはいる状態。


鳴海「(3塁よりは気が楽だよな。うん)」

ラザ「(データによるとファストボールにフりオクレるか……)」


 基本的にラザフォードが使うデータは昨年を元に鳴海や水城が集めたもの。  そう、上昇幅によってはデータの予想より上回っている場合もある。


カッキーンッ!


鳴海「えぇ!?」


 外角へ自信を持って投げたストレートを左中間へ運ぶ長打コース。  2塁ランナーはホームに返ってきて、これで3−1とする。


姿「確かに速い球は嫌いだが、お前のストレート速くねーし」

鳴海「んだとぉ!?」

ラザ「(……タシカニ、ナルミのファストボールはスピードナイナ)」


 あまりにデータに頼りすぎてしまったことを即座に反省したラザフォードとは対照的に  ピッチャーの鳴海は姿の一言でぷっつり糸が切れてしまったようだ。


シュウ「おりゃあぁっ!」


キィーンッ!


鳴海「!!!」


 ストレートをムキになって投げたところをシュウに打たれ打球はセンター前へ。  2塁ランナー姿は3塁を蹴ってホームに返ってきて、これで3−2と1点差とした。


慎吾「よしよし、さすが森岡」

木村「どうして、このチームって序盤から試合動くことが多いんだろうな」

慎吾「守りがきちんとしてなくて、打のチームだからだろ」

木村「俺、そんなチーム目指してないんだが」

連夜「うち、そんな守備悪いかな?」

慎吾&木村「………………」


 松倉離脱もあるが、センターのお前がかなり守備で足引っ張ってるんだよと言いたい2人だったが思うだけにした。  一応、コンバートを言った側であり、連夜が望んだわけではないからだ。


キィィン


大河内「よしよし」


 大河内も続き、これで2塁1塁。逆転のランナーも出し、バッターは3番の高橋。


水城「バカ、落ちつけ」

鳴海「お、おう。そうだよな」


 鳴海がどんなに打たれ強くても、連打が続けば動揺ぐらいはする。  それを打のチームが見逃すわけがなかった。


カッキーンッ!


鳴海「!!!」

高橋「おーし!」


 高橋の放った打球はライトスタンドへ夏の大会チーム第1号、逆転スリーラン!  スタンドとベンチは大盛り上がりだ。


慎吾「ナイスバッティングです」

高橋「自慢の制球力が甘かったな」

連夜「上戸さん、畳み掛けましょう」

上戸「よっしゃ!」


 ここで大岬は1回目のタイムを使い、鳴海を落ち着かせる。


水城「お前らしくもない。どうした?」

鳴海「ん〜、やっぱ疲れてんのかな。ボールが走らん」

ラザ「キニシスギダ。ウデさえフレばボールはキテるぞ」

鳴海「そうか?」

水城「なんなら一回下がっておくか? 次、漣までまわるし、これ以上の加点は困るんだが」

鳴海「いや、頑張る」


 鳴海は制球力に定評があるが、一試合で出す失投の数は比較的多めだった。  つまり被本塁打は被安打率のわりに高い数値を出している。  だが、この逆転の場面でのホームランは鳴海にとって大きな一撃となった。


カキィーン!


上戸「どーでい」


ピキィン


連夜「まだまだ!」


 二人ともボール先行してからのファーストストライクを叩き連続ツーベース。  3点のビハインドを逆に3点のリードとした。


水城「鳴海、ファーストにつけ。このままじゃキリがない」

鳴海「分かった」


 ここで大岬は鳴海を断念。一塁の守備につかせた。  しかし変わった投手も抑えきれず、久遠にタイムリーを浴び7−3としてしまった。


慎吾「よし、薪瀬行くぞ」

司「了解」


 4回表、早くも投手を司にスイッチする。  国定はサードにまわり、サードの高橋がライトにまわった。


シュッパーンッ!


司「よし!」

大河内「(スタミナがついたおかげか、威力も上がってるな)」


 お互いの先発がピリッとしなかったせいか、両チーム2番手を出してから試合がこう着状態に。  中盤以降、7−3のまま過ぎていき、迎えるは8回の表。  大岬の攻撃は1番水城からの好打順。


司「ふぅ……」

水城「どうした、疲れたか?」

司「さぁな」

水城「ふっ」


 4回からロングリリーフをしている司。  完璧に抑えながらも、大岬の粘りの前にすでに70球近く投じていた。  そしてこの水城の打席でも……


キィン


水城「………………」

司「はぁ……はぁ……」


 2ストライクから粘りを見せる。  もう細かい制球力がなく、明らかなボール球かストライクゾーンのカットしやすい球しか投げられない。


慎吾「やばいな、水城め。アウトになってもここで薪瀬を降ろす気してるな」


 それは甘い球が来てもカットにいっていることから想像がつくことだった。


真崎「じゃあアウトになってもらって代えたら?」

慎吾「誰によ」

真崎「あっ……」

木村「でもおかしくないか? 松倉が投げられないのなんで知ってるんだ?」

慎吾「ん?」

木村「ベンチ入りには登録してるし、こうしてベンチにも入れてる。 でも攻撃の仕方がもうピッチャーがいないという自信が表れてる気がするんだが……」

慎吾「そういや……」

松倉「薪瀬を引っ張ったからじゃないか?」

慎吾「……かもな」

大友「俺、そんなに信用ないですか?」

慎吾「いや。だが、国定先輩を早期に降ろし、薪瀬をイニングをかけながらも球数を投げらせてる。 ってことは、だ。次に投げるのは大友だと判断がつく」

松倉「つまり、1イニングで攻略できる自信があるわけだ」

大友「………………」

慎吾「面白くはないだろうがな。国定先輩を向こうの策略通り降ろしたのが間違いだったな」


バシッ


水城「もう終わりか?」

司「くっ……」


 14球粘られた挙句、フォアボールで歩かせてしまう。


慎吾「……まず、水城対策だ」


 ここでキャッチャーをセンターの連夜に変える。  大河内はファーストに。姿はセンターへ。


連夜「司、まだいけるか?」

司「あ、あぁ。何とかな」

連夜「水城をこれ以上、調子に乗らせるわけにはいかない。頼むぜ」


 司は静かに頷く。しかし慎吾も連夜も根本的な部分を見落としていた。


シュッ


バッ!


連夜「なろっ!」

水城「おっと」


 ややリードの大きかったが、連夜の牽制には引っかからなかった。


水城「(漣から盗塁は中々厳しいだろうが……ゆさぶればピッチャーのほうがまいってくる)」


 偽装スタートを繰り返し、牽制を多く投げさせる。  元々水城用のキャッチャー交代だっただけに、意識がランナーにしかいっていなかった。  その結果……


ピシュッ


司「あっ」

連夜「(やばっ、棒球――!)」


キィィン


 司特有の螺旋回転にはならず、失投をセンター前へ運ばれる。  これで無死2塁1塁。4点差あるとはいえ、厳しい状況下だ


連夜「(ダメ、交代)」


 連夜がベンチに向かって交代のサインを送る。


連夜「悪いな、司。気づかなくて」

司「いや……」

大河内「ベンチはどうする気だろうな」


 まだ動きのないベンチをマウンドに集まっている内野陣が見守る。  審判もまた桜花ベンチ近くまでいって交代なのか、急かすように言ってくる。


国定「綾瀬、俺にいかせてくれ」

慎吾「国定先輩」


 一人内野からベンチに来ていた国定が直訴。  その目は試合序盤の目と全然違い、決意に満ちた目だった。


慎吾「……わかりました。タッキー」

滝口「待ってました!」


 ピッチャーを国定に、キャッチャーを大河内とバッテリー変更。  サードに滝口。センター連夜、ファースト姿と最初のポジションに戻った。


ズッバーンッ!


ラザ「フム……」

大河内「(よし、普段に戻ったな)」


 投球練習を終え、迎えるは3番ラザフォード。


コツッ


国定「おっし」

大河内「サード!」

ラザ「――!」


 無死2塁1塁、4点差ついてるとはいえ送ってくるという国定の直感が当たり  素早いフィールディングを見せる!


滝口「へ?」

国定「………………」


 バントに焦ったサード滝口も飛び出してきており、シュウが慌ててカバーに入るも間に合わず1塁へ。  結局、送りバント成功で1死3塁2塁。


滝口「あれ、バントの時ってシュウ先輩が3塁入るんじゃ?」

国定「時と場合によるだろ。ましてやサードフォースプレーを狙うところを、スタート遅れてわざわざ出てくるなよ」

滝口「あーなるほど」

国定「………………」

大河内「で、国定。どうする?」

国定「満塁策でいこう。鳴海を打ち取る」

大河内「よし」


 ここで4番浅月を歩かせ、5番鳴海との勝負に出る。


浅月「俺、なんか地味だよね」

姿「気にするな。比較的4番ってどこも目立ってないから」


 1死満塁。4点差、ホームランが出ると一気に同点になる場面。


鳴海「(本調子になった国定を打つのはな……守備の粗いところを狙うのも手だが)」


 大量点が欲しい場面。犠牲フライはあくまで最低ライン。必ずそれ以上打たなければ勝ちはない。


大河内「(自慢のシュートで……って言いたいがサードが怖い。ここはスライダーを引っ掛けさせ、山里を使う)」

国定「(了解)」


ククッ


鳴海「………………」


 初球、外角へ外れるスライダーを見逃す。  普段バカやっているが、元々はキャッチャーの鳴海。配球を読む、組み立てるに関してはかなりのレベルだったりする。  桜花の要、大河内に匹敵するほど……


鳴海「(つまり守備のいいセカンドへ打たせたいってことか)」


シュッ!


 二球目。1球目と同じような球。しかし今度はストライクゾーンへ。


鳴海「抜けろッ!」


ガキッ!


 鳴海は逆らわず右へ。バッテリーの思惑通りだが、みすみす打ち取られもしない。


姿「くっ!」

山里「届けッ!」


 甘く入ってきてしまったため、ミートの上手い鳴海は確実に捉え右打ちを見せる。  打球は一二塁間へしぶとく転がっていく。


パシッ


国定「山里!」

鳴海「くっ!」


シュッ


審判『セーフッ! セーフッ!』


 鳴海の方が一歩速く駆け抜け内野安打。この間に3塁ランナー水城が生還し7−4に。


国定「チッ!」

姿「ドンマイです。大岬は下位大したことないんで」

国定「あぁ、守るぞ」

鳴海「なにぃ!? なめられてるぞ、今里ォ!」


ガキッ


滝口「まいど!」

大河内「セカンッ!」


 初球のストレートを引っ掛け、三遊間側へサードゴロ。  中間守備を敷いていたため、2塁へ送球する。  2塁フォースアウトでツーアウト。ベースカバーに入った山里がそのまま一塁へ……


鳴海「させーん!」


ガシッ


山里「うわっ!?」


 鳴海の好スライディングで1塁はセーフ。  その間に3塁ランナーが生還し、7−5。確実に点差をつめてきている。


山里「悪い」

国定「後、ワンアウトだ。しっかり守ろうぜ」

大河内「………………」


 内野を守っている間にすっかり元の国定戻ったと安心した大河内は自慢の頭脳をフル回転。  次打者を三振に抑え、このピンチを脱した。それは桜花が誇る黄金バッテリーの復活を意味した。  国定だけじゃない。大河内も復活後、初の公式戦。そして最後の夏ということで気負いがあった。  だからその場限りの声のかけ方をしてしまった。国定と言うピッチャーの性格も忘れて。


大河内「さすがだな。全中優勝投手」

国定「過去の栄光だよ。今はいっぱしの弱小校のエースさ」

大河内「ふっ」


パシィン


 気持ちのいいハイタッチがグラウンドに響いた。


慎吾「さて、追加点とるぞ」

シュウ「この回の先頭は?」


カッキーンッ!


大岬二番手投手「なっ!?」

連夜「バーカ、俺がただ5番に座ってると思ってんのか!」


 8回裏、先頭の連夜が右中間真っ二つのツーベースヒットを放つ。  最初は違和感があった打順だが、練習試合を重ねていく中でその役割を理解し、また実力を発揮するまでに至った。


連夜「(まぁ本当は姿が座るべき場所なんだろうけど)」


 追加点を奪いたい桜花はここで6番国定に送りバントをさせ、チャンスを広げる。


滝口「いや〜こんなおいしい場面でいいんですか?」

慎吾「ん〜……」

滝口「まさか代打と言うんじゃ……?」

慎吾「いや、いいや。打って来い」

滝口「おっしゃ!」


 ここは大きいのを打てる滝口に任せた。  表の攻撃の鳴海の時と違い、ここは犠牲フライでいい場面。  しかし大岬にとっては追加点は許せない。ファーストにまわっていた鳴海が再度マウンドへ上がった。


鳴海「引っ張り出されたか」

水城「せっかく取っておいたしな」

鳴海「一度KOくらった投手が通用するか?」

浅月「自分で言うなよ」

水城「プロじゃないんだ。通用させろ。と言うか向こうだってそうやってんだし」

ラザ「ソウガうすいトたいへんダナ」

2番手投手「ところで僕は名前すらないんですか?」

鳴海「すまないな。もう螺旋のキャラは使い果たしたんだ」

2番手投手「…………………」


 緩急を使うのが上手く、投球術がずば抜けている鳴海。そしてリードが巧みなラザフォード。  一方打者はストレート大好きっ子滝口。勝負の結果はすでについてるようなもので……


スルスルスル


滝口「く……のっ!」


ガキッ


浅月「よし」

連夜「チッ」


 しっかり視線で連夜を牽制し、1塁へ。  これで2死3塁。


滝口「すんません!」

慎吾「まぁしゃーない」

山里「どうする?」

慎吾「……いや、山里先輩でいきましょう」

真崎「へ?」


 すでにヘルメットを被り、バットに手をかけようとしていた真崎が豪快にずっこける。


慎吾「2点差ですし、次が最終回。守備のいい山里先輩は下げたくない」

山里「それじゃ、いくわ」


 真崎に悪い気持ちになりながらも、山里は打席に向かった。


鳴海「おりゃあ!」


クククッ


ガキッ


山里「あぁ……」

水城「そらよっ」


 ここは鳴海の気迫が勝り、セカンドゴロに打ち取る。  チャンスを作るも得点できず、試合はいよいよ最終回へ。


連夜「よっしゃ、守るぞ!」

滝口「おぉ!!!」

慎吾「漣、タッキー」

連夜「ん?」

慎吾「交代」

連夜&滝口「………………」


 センターの連夜に代わって佐々木。サードの滝口に代わって倉科がそれぞれ入った。


透「やっと出番かいな。忘れられたかとおもっとったわ」

慎吾「代打じゃないと中々使えないからな。まぁ守ってくれ」

透「リョーカイや」

滝口「俺より左利きの倉科先輩の方がいいと?」

慎吾「あぁ」

滝口「!!!」

慎吾「と言うより2回戦でも出番なかったし、ここいらで出してやらないと」

連夜「俺より享介のほうがいいと?」

慎吾「それはもちろん」

連夜「………………」


 守備固めをし、このまま逃げ切りたい桜花。  逆に追いつきたい大岬は8番の会津から。  下位打線とはいえ、会津と1番の水城にまわるため、油断できない打順の流れだ。


大河内「(今日2安打か……このバッティングセンスで8番ねぇ……)」


 単純に考えれば大岬の打線から言えば上位打線は任せられるだろう。  でも8番に置いている。作戦なのか……それとも弱点があるのか……


大河内「(弱点……そういや薪瀬のストレートには振り遅れてたな)」


 2安打と言っても打ったのは国定のシュートと薪瀬のスライダー。  共に変化球だ。大河内の頭脳に一つの仮説が浮かんだ。


大河内「(ま、物は試しだな)」


 素早くサインをだし、国定は一発で頷く。


国定「おらっ!」


ビシュッ!


会津「――ッ!」


ズッバーン!


 内角高めのストレートを見逃す。いや、見極めたというより手が出なかったように見えた。


大河内「(よしよし、いけるな)」

会津「すいませんが、別にストレートが苦手なわけじゃないですよ」

大河内「えっ!?」


シュッ!


スゥゥ……


大河内「(これは……)」


 打球を遠くへ飛ばすにはスイングスピードの速さ、力強さが影響するが  スピードの速いボールを捉えるのにスイングスピードの速さが必要かと言うのは話が別になる。


キィーンッ!


シュウ「むぅ!?」

透「アカンわ」


 会津のスイングは極力無駄な力を抜き、肩を開かずにボールを呼び込んで捉えるスイング。  そのせいで、スイングがゆっくりに見える。  いや事実、スイングは速くはない。だがボールは確実にミートし打ち返す。


大河内「(そういやプロ選手にインタビューで似たようなこと言ってたな)」


 1年ながら会津のバッティングセンスの良さに感服しつつ、次をどうするか考える。  2点差、とはいえ併殺が怖い場面。単独スチール、エンドラン、送りバント、などなど考えられる。


鳴海「確実に送ろう」

浅月「は? 本気か?」

鳴海「得点圏に送り、水城で1点。同じことを繰り返してラザフォードで1点。 これで同点に追いつこう」

浅月「凄く後の無い戦い方だな」

鳴海「現に後がないんだ。攻撃力のないうちが出来る最良の作戦だ」

水城「了解。乗るぜ、鳴海」

ラザ「OK」


 キーとなる2人が作戦に賛同し、大岬の作戦は決まった。  9番が送り1死2塁とし、1番の水城のまわってくる。


国定「(まさか送ってくるとはな)」

大河内「(水城に賭けてくるか。まぁ俺が向こうの立場なら同じことしただろうけど)」


 打たれている水城相手のため、ここは慎重に投球の組み立てをする。  やはりここはシュートをどこで使うかがポイントになる。


大河内「(1−2、1−3とボール先行にしてシュートを使うか……)」


 恐らく水城はランナーにでる以前に2塁ランナーを返す役目にもなっているだろうと読んだ。  そのための送りバントじゃなければ、合点があわない。  しかし、水城はその裏をかいた。


クッ


水城「なろっ!」

大河内「初球!?」


 外角へ外れる変化球に食らいつき、しぶとくライト前へ運ぶ。


水城「初回と違ってわざわざ後が無い状態でシュートは狙いませんよ」

大河内「(しまった。やっぱりシュート打ったのは偶然か)」


 いくら狙ってても国定の必殺シュートはキレ・変化共に1級品だ。  つまりヒットになったのはあくまで偶然。アウトになっても構わない初回と違い、いわゆる博打は避けたのだ。


高橋「いかせるかよ!」


ビシュッ!


大河内「――!」

園部「えぇ!?」


 しかしこの試合、中盤からライトに入っていた名手高橋から好返球が大河内へと届く。  ホームに突っ込んだ2塁ランナーはアウトになる。


鳴海「………………」

浅月「……スゲー……」


 このプレイにはランナーを怒るというより、守った高橋に対し驚くしかなかった。  これでラザフォードにまわるどころか、2死2塁(水城はホーム返球の間に2塁へ)  後がなくなってしまい……


国定「おらぁっ!」


ククッ!


スパァッ!


審判『ストライクッ!』


 最後は決め球シュートで見逃し三振を奪い、7−5で桜花学院が勝利を収めた。


鳴海「あーあ、負けました」

連夜「残念だったな」

鳴海「勝てよ」

連夜「……あぁ」


 試合終了の挨拶をし、両チームの選手は強く握手した。  試合のときは敵同士、終わってしまえば同じ野球の道を進む選手同士。  大岬の選手は桜花に自分たちの夢を託し、鳴海たちの2年目の夏が終わった……



・・・・*



連夜「で、何でいるんだよ」

鳴海「見といて損はないカードだろ」


 先ほど戦った大岬のメンバーと早速、同球場の観客席、バックネット裏で会った。  感動的に終え、握手までしたのにこの呆気なさは、先ほどまでの感動を一気になくしてしまった。


鳴海「鈴村がどのくらい成長したかみたいしな」

連夜「もう戦わないのに?」

水城「まだ秋も来年もあるわ。強豪のデータは取っといて損はないだろ」

連夜「帰って練習でもしてろ」

水城「うるせーよ!」


 試合開始前のシートノックが両チーム分、あるためわずかな時間ながら連夜は熟睡モードに入った。


連夜「Zzz……」

鳴海「こいつは……」

水城「ところで、松倉は何で投げなかったんだ?」

松倉「いや、大会前に肩壊してな」

水城「何ッ!?」

鳴海「ってことは俺ら、投げれないお前にビビッてたのか」

佐々木「ビビってたのか?」

水城「一応な。薪瀬を引っ張るから温存策かなっと思ってさ」

鳴海「本当はバテた司を打つつもりが、国定さんがまた出てきたから不思議で不思議で」

松倉「まぁベンチ入りしてるし、打撃や守備は一応問題ないんだ。ここだけの話にしておいてくれ」

ラザ「トコロデ、ききタイコトガアルンダガ」

松倉「俺らに?」

ラザ「レインってヤツシラナイか?」

松倉「外国人の知り合いはいないぞ」

佐々木「……? あれ、緑央の外国人、そんな名前じゃなかったか?」

松倉「緑央?」

佐々木「昨年の練習試合の相手。宮城だったかな? お前が途中出場したやつだけど」

松倉「あーいたな。左投げのピッチャーな」

ラザ「Yes。レインにマチガイナイ。ドコニいる?」

松倉「どこに……って宮城県だから……上」

ラザ「うえ?」

佐々木「上じゃねーよ」

水城「ラザフォードも空を見るな。死んだみたいだ」

佐々木「宮城の緑央学園ってところだ。後は帰ってから地図みて水城にでも教えてもらったら」

ラザ「ソウスルカ。タノムぞ、ミズシロ」

水城「へいへい」


ウウウウウ――ッ!


鳴海「始まったぞ」


 サイレンが鳴り響き、気づけば後攻チームである国立玉山が守備につき、試合が始まっていた。


ズッバーンッ!


審判『ストラーイクッ!』


連夜「鈴村め、また速くなったな」

松倉「うわっ、急に話すな」

鳴海「ビックリしたわ」

連夜「あんだけうるせぇサイレンと応援団が騒ぎ出したら起きるわ」

佐々木「うるさいって言うなよ」


 1年秋より名門国立玉山のエースナンバーを背負っている鈴村。  甲子園も経験しており、同学年では場数はかなり踏んでいる方だろう。  一端の高校では序盤の鈴村の速球にはついていけず、3者連続三振に倒れる。


連夜「相手になんねーな」

佐々木「まぁ……よっぽどがなければ負ける相手ではないだろう」

鳴海「………………」

連夜「ん? どうした、鳴海。らしくもなくマジメな顔して」

鳴海「らしくもないは余計だ。いや、あのピッチャー見たことねーかって」

連夜「ピッチャー?」


 攻守交替し、国立玉山の攻撃……なのだが、鳴海はマウンドに上がった相手高校のピッチャーを真剣に見ていた。  鳴海の言葉に全員注目してみるも……


??「よっし、軽く流していくぜ」

漆原「あ? うち相手に軽く流すだと?」

??「おいおい、名門って過去の先輩たちが作り上げた伝統を指すんだぜ? お前たちは実際、そんなレベル高くないっしょ」

漆原「んだとぉ!?」


審判『こら、二人とも私語を包みなさい』


漆原「すいませんでした」

??「はいはい、すいませんね」


審判『なっ……!』


 そんなことがグラウンドで話されてるとも知らず観客席のメンツはピッチャーについてまだ協議中だった。


連夜「いや、知らねぇ」

鳴海「お前には求めてない」

松倉「いや、知らないな」

鳴海「あれ、そっか? 水城たちは?」

水城「ん〜……覚えはないな。確かに初めて見た感じはしないけど」

連夜「まぁいいよ。試合見ようぜ、なんかモメてたみたいだけど」

鳴海「漆原のやつ、1番に抜擢されてるな」

佐々木「昨年はベンチ入りすらしてなかったのにやるな」


 連夜たちは同学年の他校の選手と交流が深く、国立玉山や一宮の選手とも仲が良かった。  だから他からしてみれば新戦力と言うような選手も漆原のように顔なじみだったりする。


漆原「(あのやろう、舐めやがって……コールドにしてやる)」

??「じゃ行くぜ〜。よっ」


ピッ


漆原「なろぉっ!」


 思いっきりバックスイングをとり、強振に行くがそこから漆原は自分の眼を疑った。  ピッチャーから放たれたボールを確認できないのである。  わけもわからずスイングをするが、当たるわけもなく……


ズッバーンッ!


 そしてスイングが終わる前にキャッチャーミットに収まっていた。


連夜「は、速ッ」

鳴海「鈴村より出てたかもな」

ラザ「コレデハ、ナルミノファストボールはスローボールダナ」

鳴海「うるさいわ!」

佐々木「今の何キロだったんだ?」


ズッバーンッ!


漆原「くっ……」

??「おやおや、どうした? その程度か、名門のトップバッターってよ」

漆原「グッ……このやろう!」

??「喚け喚け。負け犬の特権だからな」


ズッバーンッ!


 遊び球なしの三球三振。そのストレートの速さに球場中ザワついていた。


スカウト「ひゃ……145キロ!?」

スカウト「なんだって!?」


連夜「145? 嘘だろ」

水城「でもあの人たちスピードガン持ってるぜ」

連夜「壬生もそんぐらい投げてたらしいけど、ここから見てる分でもあのピッチャーの方が速いぜ」

鳴海「あのふざけた投球モーションの影響もあるかもな」


 背中が打者に見えるほど大きく捻り、そこからオーバースローで投げ込んでくる。  現実ではトルネード投法と世間を震撼させたものにソックリの投げ方だ。


松倉「しかし、漆原がストレートだけで三振だぞ? 有り得るのか?」

鳴海「かかし?」

松倉「は?」

鳴海「あ、いやなんでもない」

松倉「何言ってんの、お前」

水城「(ラザフォードのせいで、全部そう聞こえるんだな)」

連夜「有り得るも何も、さっきしたばかりだからな」

松倉「まぁそうだけど……」


 続く2番山内、3番小暮もストレートだけで連続三振を奪い、鈴村同様、完璧な立ち上がりをみせる。


スカウト「あった。林藤迅だ!」

スカウト「林藤迅? 聞いたことないな」


連夜「林藤迅だと。鳴海、知ってるか?」

鳴海「ん〜……いや?」

連夜「なんだよ。じゃあどっか街ですれ違ったとかじゃね?」

鳴海「かもな」


 ピッチングで球場を虜にした迅が2回に先頭バッターで登場する。


鈴村「俺とあいつの投手戦になりそうだな」

達川「あぁ。だから気を抜かずに投げろよ」

飛騨「この試合さえ投げれば一宮戦まで休んでていいってさ」

鈴村「いいや、休まん」

飛騨「いや、それぐらい計算してるってことだ。飛ばしていけ」

鈴村「あいよぉ」


迅「ザコがいくら頑張ろうとザコに変わりはない」

鈴村「そうか? そうやって足元すくわれることだってあるんだぜ」

迅「違うな。それは本当の強者じゃない。ザコとは決定的な力。それこそ強者」

鈴村「なるほど。なら勝つのは俺らだ」


グワッ


 豪快なモーションから第1球が放たれる。


迅「………………」


ズッバーンッ!


鈴村「どうだ?」

迅「初速145キロ、終速137キロか。高校生レベルじゃトップクラスだろう」

鈴村「………………」

達川「(適当か? いや……確かに今のボールはそれぐらいの威力だった)」


 この鈴村の速球にスカウト陣は釘付けだった。  と言うより元々鈴村など国立玉山の選手チェックだったのに、迅がいたのが予想外だっただけのこと。


連夜「林藤とやらのモーションが変と言ったが、鈴村も十分変だぞ」

鳴海「ま、まぁな」

佐々木「しかし、4番か。相当打つんだろうな」

連夜「1・2回戦のデータねぇの?」

佐々木「1回戦はうちと一緒でなくて、2回戦から。2回戦のデータだけみるとあんな選手だとは思えない」

連夜「ん〜?」


 佐々木の持っていたデータを全員で覗き見てみるが  9回を投げ5失点。被安打4に対し四死球7個、味方のエラー4。しかし奪三振は7個奪っている。  一方打っては4打数1安打2打点1四球。


連夜「…………ザルやん」

ラザ「Base on ballsガおおスギルな」

鳴海「なんだって?」

ラザ「フォーボール」

水城「フォアボールね。日本だと」

ラザ「ヤヤコシイネン」

水城「………………」

連夜「速いだけってことか」

松倉「まぁ、そうとも考えられるな」


ザワザワザワ……


連夜「ん? 何した?」

佐々木「………………」

連夜「享介?」

佐々木「このデータはアテになりそうにないな」


 今の佐々木もアテになりそうになかったから、グラウンドに目を移すと迅がゆっくりとダイアモンドをまわっていた。


鈴村「な……」

飛騨「鈴村、落ちつけ」

漆原「そうだ! やられっぱなしなんてお前らしくもねーだろ!」

迅「ハッ、だから言ったろ。力の差を肌で感じな」

達川「(まずいな。鈴村のやつ、完璧に打たれてショックを受けてやがる)」


 それから制球力を乱した鈴村はフォアボールも挟み6連打浴びノックアウト。  2回戦を11対5で勝った打撃のチームは2番手とはいえ名門の好投手をも打ち崩し試合を決定づける。


連夜「冗談やめろよ。国玉の負け試合見に来たわけじゃねーぞ」

鳴海「……佐々木のデータ通りじゃないといえばやっぱり打撃か?」

連夜「バカ言うな。あのピッチング見て、5失点を信じられる方がどうかしてる」


 確かに国立玉山も黄金世代が抜け、打撃力がかなり低下している。  しかし漆原や真田と言った2年勢の成長もあり、県内ではトップクラスだ。  その国立玉山の打線が迅の前に8回終了時点で2安打しか打てていない。


連夜「フォアボールは3個か。まぁ多いっちゃ多いか?」

水城「と言うよりスピードに惑わされてボール球を振ってるな。もっと増えててもおかしくないぜ」

ラザ「コントロールはナイナ。ミズシロの言うとおり、ヤツにとってはスクナイぐらいだろう」



迅「弱い、弱い過ぎる。これが名門だと? 笑わせるな」

飛騨「このやろう!」

迅「喚け、喚け。そして絶望を持って朽ち果てるがいい!」


ビッ


飛騨「うぉぉぉっ!」


ズッバァァンッ!


飛騨「ぐっ……」


 同学年でもトップクラスのバッターである飛騨。それは連夜たちも認めているほどだった。  しかしその飛騨ですらこの9回のストレートにかすりすらしない。  いや、違う。9回だろうと1回だろうと威力は変わっていないのだから。


ズッバァァンッ!


飛騨「ちくしょう!」


 4番飛騨が倒れ、5番も三振に抑えられる。  後がなくなり、6番には漆原同様、今大会からレギュラーを勝ち取った2年真田。


真田「………………」

迅「来たな」


 何を隠そう、2安打のうち1本は漆原の内野安打、そして後は真田が放っている。  真田は大岬の会津と同じ技術を会得していた。しかも、会津以上の完成度を誇っている。  だから桁違いのストレートにも反応し、見事に打ち返した。


迅「お前を三振に奪えば完全なる勝利だ」

真田「みすみす負けるわけにもいかないんだ。鈴村や飛騨、うちが誇るピッチャーとバッターが同時に敗れてるわけだからな」

迅「ふっ。ヒダ? お前が6番で打てないアイツが4番の意味が分からん」

真田「だろうな。お前じゃ分からんよ」

迅「別に分かりたくもないがな。さぁ、終わりにしようか」


ピッ!


真田「ハァァッ!」


クァキィィン!


迅「――!!!」


 高々く上がった打球は快音と共に球場中の視線を独り占めにし、センターバックスクリーンへ舞い降りた。


水城「す、スゲ……」

松倉「一矢報いたってところか」

連夜「……どう見る。ラザ、鳴海」

ラザ「(イキナリりゃくサレテモな……)」

鳴海「打った真田が上手かった。じゃ、ねーよな」

連夜「そりゃ打った真田は上手いさ。だけど、林藤のストレートには致命的な弱点がある」

佐々木「え?」

松倉「だが、球威やキレって点では悪いが鈴村よりも……」

連夜「さぁな。真田にでも聞いてみろ。あいつは気づいたからこそ、打てたんじゃねーかな」

佐々木「なんでもったいぶる。教えろよ、戦うかも知れないんだぞ?」

連夜「それは決勝にくればの話だ。まだ一宮、殿羽や前田がいる。あいつらなら勝てるさ」

佐々木「そうか……そうだよな」



 真田の一発で意地を見せるも千葉の名門、国立玉山が3回戦で負ける大波乱が起きた今大会。  そして甲子園初出場を目指す桜花学院の前に現れた新たな敵、林藤迅。  果たして、決勝で相対することになるのか……?





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