Thirtieth Eighth Melody―空を見上げて―


ウウウウウウ――ッ!!!


 ちょうどテレビで中継が始まったとき、試合の始まりを告げるサイレンが鳴り響いた。


カァァンッ


 そして初球を打ち先頭の大河内がライト前ヒットで出塁したところだ。


慎吾「さすが大河内先輩」

瑞奈「凄いですね」

慎吾「……なんであんたがいるんだ?」

瑞奈「1人でテレビ観戦も寂しいかと思いまして」

慎吾「余計なお世話だ」

瑞奈「良いじゃないですか。一緒に応援しましょうよ」

慎吾「……まぁいいけど」


 試合は2番佐々木が送りバントを決め、高橋がレフト前で続く。  1死3塁1塁で打席には4番上戸。


カッキーンッ!


慎吾「おしっ!」


 上戸の打球は打った瞬間分かるといってもいい大飛球。  レフトスタンド中段へ突き刺さる先制のスリーランが飛び出した。


慎吾「豊宣め、先発火影とはまだうちのこと下に見てるな」

瑞奈「後は抑えれば勝てますね」

慎吾「問題は国定先輩の状態だ。昨日、あれだけ投げたんだ。 正直、今日も投げられるとは思えないんだけどな」

瑞奈「国定くんはそんなにヤワじゃないですよ」

慎吾「あの人なら無理でも投げかねないんだよな……」

瑞奈「もう! 心配ばかりしてないで応援しましょうよ」

慎吾「まぁそれしか出来ることねぇしな」


 桜花の攻撃は更に連夜が続くも姿と真崎が連続三振に倒れ3点止まり。  対する豊宣は昨日と変わらず1番には豹が入っている。


慎吾「真崎のやろう……出れるのかよ……」


 肘痛で前の試合欠場した真崎がこの試合、7番ショートで先発出場していた。  現場にいないため判断はつかないが、恐らく真崎が志願しての強行出場だろうと安易に想像できた。  三振したときのスイングがおかしく、振り切れていないのは目に見えて分かることだった。


慎吾「……まぁ、初回の3点は大きいな」

瑞奈「ですよね!」

慎吾「後は国定先輩が……」


ピキィンッ!


 トップの豹がセンター前ヒットで出塁する。


慎吾「う〜ん……やっぱ思わしくないぞ」

瑞奈「綾瀬さんはネガティブですねぇ。たかがワンヒットですよ」

慎吾「そっちじゃねぇよ。国定先輩のフォーム」

瑞奈「ふぉーむ?」

慎吾「国定先輩は正当なオーバースローだ。それが今、完全に肘が下がっている」

瑞奈「良く分からないんですけど」

慎吾「…………とにかく、肩か肘、どちらかが思わしくないってことだ」


パキーンッ!


瑞奈「キャアッ!」


バシッ!


 送りバント後、3番火影の打球はサードの頭上。  連夜が完璧のタイミングでジャンプし捕球、素早く2塁転送でダブルプレー。


瑞奈「さすが漣くんです!」

慎吾「どうでもいいけど、一応病院だからさ。騒ぐのだけは止めてくれ」

瑞奈「ところで綾瀬さん、ちょっといいですか?」

慎吾「なによ」

瑞奈「綾瀬さんの病気って前から知ってたんですよね?」

慎吾「あぁ」

瑞奈「それなのに中学では野球やってたんですか?」

慎吾「真崎の執拗な誘いに折れてね。仕方なしに」

瑞奈「でも病気なんですよ? それ理由に断ることだって……」

慎吾「病気なんて言うとあいつアホだから気を遣うだろうからな。 あんまり言いたくなかったんだ。結局はバレたけど」

瑞奈「本当にそれだけなんですか?」

慎吾「……あんたは何が聞きたいんだ?」

瑞奈「ただ気になっただけです。それだけなら良いんですけど」

慎吾「あったとしてもあんたに言う義理はない」

瑞奈「ぶぅ! どうせ暇な入院患者じゃないですか」

慎吾「黙ってテレビ見てろ」

瑞奈「綾瀬さん、忘れたんですか?」

慎吾「何が?」

瑞奈「クリスマスイヴの時言ったじゃないですか!」

慎吾「は?」

瑞奈「は、じゃありません! 『俺はアンタが俺の中で特別な存在になるように意識してるつもりだ』って!」

慎吾「大声でそんなこと言うな」


 しかも一字一句間違わず記憶している辺り、慎吾からしてみれば怖いところがある。


瑞奈「忘れたとは言わせませんよ! ここに証拠が!」


 そう言って、テープレコーダーを取り出す瑞奈。  慎吾が聞く前に再生した。


少し低めの瑞奈の声『俺はアンタが俺の中で特別な存在になるように意識してるつもりだ』


慎吾「いや、あんたの声じゃん」

瑞奈「あの時言われたこと忘れないように帰ってから録っておいたんです」

慎吾「………………」

瑞奈「あの日、こうも言ってましたよ。好きな人に隠し事するかどうかって」

慎吾「俺はするぞ」

瑞奈「威張らないでください!」

慎吾「………………」


 あの時の慎吾は夜ということもありテンショウが上がっていた。  今となっては当然、後悔している。


慎吾「まぁあんたには関係ないけど……暇だしな」


 入院中ってことで少し気が滅入ってる部分もあった。  強がりの慎吾も今は、テレビの向こうでは必死に戦っている仲間たちがいるのに  自分は……という思いが強くあった。  もちろん、それを見抜いて瑞奈は今、ここにいるのだが。


慎吾「俺に姉がいたのは知ってるよな?」

瑞奈「えぇ」

慎吾「姉とある男が付き合っててな。歳がかなり離れてたんだけど」

瑞奈「そうなんですか……」

慎吾「俺が中学入ったとき、かなりラブラブでな。結婚に向けて準備してたわけだ」

瑞奈「えっと綾瀬さんが中学だから……」

慎吾「20歳だな。21の年だったけど」

瑞奈「随分早いですね……」

慎吾「まぁな。前にも言ったことあるけど、姉貴は母親に近い印象だったんだ」

瑞奈「つかぬ事を聞きますけど、ご両親は?」

慎吾「俺が生まれてから間もなく亡くなったらしいよ」

瑞奈「そうなんですか……」

慎吾「俺もガキだったし、姉貴しか頼れる人がいなかった。だからその男にとられるのが嫌だったんだ」

瑞奈「――!? まさか……?」

慎吾「そうだよ。姉貴の気を引きたかったから、野球を始めたんだ。もちろん体のことは分かってた。 ……いや、分かってたからこそ、なんだけどな」

瑞奈「綾瀬さんにそんな過去があったんですか……」

慎吾「バカだよな。自分が一番思ってるよ」

瑞奈「私はそうは思いませんけど」

慎吾「あん?」

瑞奈「たった1人の身寄りなのに誰かの元に行くなんてやっぱりショックですよ」

慎吾「……それで姉貴が言ったのか、どうだか知らないけどその男はいわゆる婿的な感じで結婚したんだ」

瑞奈「わ〜素敵じゃないですか」

慎吾「そして事件が起こったんだ」

瑞奈「え?」


 ふと伏目になり、目の色が淡く変わる。  昔のことを思い出してなのか、瑞奈にはとても切なさそうに映った。


カキーンッ!


瑞奈「はい?」


 久々の快音と歓声にテレビへ視線を向けると、1塁キャンパス上でガッツポーズする豹が映った。  これで3対1、豊宣が1点還した。


瑞奈「あーっ! 点とられちゃいましたよ!」

慎吾「……なぜ俺を睨む?」

瑞奈「綾瀬さんが国定くんのこと悪いって言うからです」

慎吾「悪いとは言ってない。ただ故障明けなんだ、今度壊したら二度と投手としては再生できないだろう。 国定先輩は今大会で評価を上げた。青波・桜井と並んで称されるぐらいにな」

瑞奈「誰です、その2人?」

慎吾「…………とにかく、将来も含めて考えたらこの試合での登板は良いことがない」


 別にスカウトやメディアの評価を一から説明する必要もないと瞬時に  思った慎吾はすぐさままとめに入った。  その辺の機転はさすがだった。


瑞奈「でもその後、抑えるあたりはさすがですよね」

慎吾「それはもちろんだな。大河内先輩のリードもいいし」

瑞奈「それより事件ってなんです?」

慎吾「………………」


 まったく流れを読まず、その流れを完璧に止めた瑞奈の切り替えし方に呆然とするしかなかった。


慎吾「あのな、この流れで言えると思うか?」


 慎吾にとっては辛い過去を振り返ることになるのだが、話すにはそれなりの雰囲気というか流れがやはり欲しいと思う。  そんな唐突に「はい、どうぞ」と言われて話し出すのは色んな意味で少々厳しいものがある。


瑞奈「言ってくださいよ。元々、その話をしてたんですよ?」

慎吾「あんたが野球に意識いったんだから野球見てろよ」

瑞奈「じゃあこの回、桜花が追加点挙げたら喋ってもらいますよ!」

慎吾「……わかったよ」


 期待していたわけではないが、この4回は8番からの打順。  この回に点は入らないじゃないかと予想……というか期待してしまった。  そしてその慎吾の間違った期待を見事に……


カキーンッ!


慎吾「………………」


 裏切った。  国定のヒット後、大河内のツーベースでチャンスを広げると  2番佐々木のスクイズと3番高橋の犠牲フライで2点を追加する。


瑞奈「ほら、約束ですよ」

慎吾「………………」


 試合のほうも火影から青波にスイッチするらしく、試合が止まったままだ。  ある意味、話を始めるにはいいタイミングと言える。  ……本人の気持ちの面以外では……


慎吾「まぁ、あれだよ。姉貴が事故で亡くなったことだよ」

瑞奈「そういえばただの事故じゃないって言ってましたよね」

慎吾「死因は絞殺って椎名探偵が言ってたしな」

瑞奈「そうでしたね」

慎吾「……あれ? そういや、あんたあの時いたな」

瑞奈「というか椎名探偵の情報は私が発生源ですよ!」

慎吾「あんた、普通に会話に入っていたが……俺、あんたには姉貴のこと喋ってないぜ」

瑞奈「え……な、何を言ってるんですか。その前に聞いてましたよ」

慎吾「姉貴がいたことはな。だけどその後の事故は真崎にしか話していない。どういうことだ?」

瑞奈「それは……」

慎吾「俺はあんたに姉貴の事故のことを調べたいとはお願いしたが、あの時のあんた、やたら詳しかったよな」

瑞奈「えっと実はですね……」

慎吾「………………」

瑞奈「あの時、帰るフリしてお二人の会話を聞いちゃったんです。それでちょっと私なりに調べてみたんです」

慎吾「……ふぅん、そうか」

瑞奈「えぇ、そうなんです」

慎吾「まぁ、いい。あんたには世話になったし教えておくよ」

瑞奈「なにをです?」

慎吾「椎名探偵から新しい情報をもらっててな」

瑞奈「なんですって!? いつの話です?」

慎吾「甲子園に行く前かな。ちょこちょこ連絡もらってたんだけど」

瑞奈「むぅ……そんな話初めて聞きましたよ」

慎吾「誰にも言ってないからな。あえて言うことでもないし」

瑞奈「それで、何が分かったんです?」

慎吾「元同僚とかにお願いして、解剖の結果とかをな」

瑞奈「それってかなり重要じゃないですか!」

慎吾「まぁな。どうやら死因は絞殺で間違いないらしい。犯人の大体の像も見えた」

瑞奈「えっ!?」

慎吾「姉貴より背の低い人……多分、女性じゃないかってさ」

瑞奈「どういうことです?」

慎吾「跡のつき方が後ろから、下に向かって締めたようなんだと。姉貴の身長は170cm超えてたし 男はまず考えられないだろうって」

瑞奈「相手が座ってたらどうです?」

慎吾「後ろから締めてるんだぞ。なぜわざわざ座る?」

瑞奈「それも……そうですね」

慎吾「でも、今更犯人どうこうは良いんだけどな」

瑞奈「そうなんですか?」

慎吾「俺はなぜ警察が隠すマネをするのか。その事件の後ろにある背景を知りたいだけだ」

瑞奈「綾瀬さんはどう考えてます?」

慎吾「そうだな……義兄の仕業だとは思ってるんだが、いまいち分からないことばかりだな」


 なんせ情報を捏造・隠蔽されているのだ。  背景なんて見えてくるわけがない。


瑞奈「そもそもの動機が分からないんですよね?」

慎吾「あぁ……こればっかりはここで考えても仕方ないことなんだけど……」


 軽い間が出来てしまい、お互いそれから口を開かなかった。  分からないことばかりで、どう言っていいか整理がつかないのも無理はない。


カッキーンッ


 その間ももちろん試合は続いている。  前日の疲れも見える国定は追加点をもらった4回に捕まってしまう。  ランナーを1塁において4番青波にツーランを浴びる。  更にツーベース、フォアボールと与えてしまったところで桜花ベンチが動く。


慎吾「交代か……そうだよな。投げたほうだよ」


 マウンドには薪瀬が上がり、国定はショートへ。  仮にも怪我人の真崎が退いた形になる。  その薪瀬はバントの後、内野ゴロの間に1点奪われこの回、5対4と1点差に詰められる。


慎吾「厳しいな……」

瑞奈「そうですね、薪瀬くん投入が早すぎます」

慎吾「あぁ……最後までいけるかどうか」


 先ほど暗い話をしていたところに、チームも追い上げをくらっている。


コンコンッ


 そんな中、軽快なノックが病室に響く。  時間を見て、まだ看護婦が来る時間じゃないことを確認してからドアの向こうに声をかける。


慎吾「はい、どうぞ」


 千葉とかだったら、誰かしら来ることは考えられるがここは兵庫。  瑞奈のように応援を抜け出して来た以外、知り合いが来ることは考えられない。  しかし表れた人は千葉でも有り得ないとしか言えない人物だった。


大地「よっ、倒れたんだって?」

慎吾「なっ!? お前、何してんだよ!」

大地「騒ぐな。また倒れても知らないぞ」


 スーツ姿で手には花束があった。一応見舞いに来たつもりなんだろう。  どこから倒れたことを聞いたのか不思議ではあるが。


慎吾「誰から聞いたんだ?」

大地「うん? 昨日、甲子園に見に行ったらベンチにお前の姿が見えなかったからな。 試合終わってから姿くんに聞いたんだ」

慎吾「……なるほど」

大地「まったくこのまま亡くなられると私も困るんだけどな」

慎吾「勝手なこと言うな」

瑞奈「えっと……」

大地「ん? おぉ、なんだ慎吾、お前もちゃっかりしてるな」

慎吾「は?」

大地「黙って入院してるかと思ったら彼女連れ込んで」

慎吾「アホか」

大地「現にこの状況どう説明する?」

慎吾「こいつが勝手に来たんだ」

瑞奈「何言ってるんですか。1人で暇がってると思ってきてあげたのに」

大地「うんうん、お前みたいなやつには健気な娘があってるよ」

慎吾「……もう帰れ」

瑞奈「それより紹介して下さいよ。誰です、この人?」

慎吾「あー……勝手に説明しろ」

大地「酷いな。まぁいいや、慎吾の義理の兄の大地です、よろしくね」

瑞奈「あ、朝森瑞奈です。よろしくお願いします。義理ってことは、お姉さんの?」

大地「そうそう」

慎吾「で、用件はなんだよ?」

大地「見舞いだって」

慎吾「嘘つけ」

大地「まぁ、近いうち話す予定だったけど、いい機会かな。あ、瑞奈ちゃんこれを花瓶にやってもらえる?」


 手に持っていた花束を瑞奈に手渡しする。  直訳すればちょっと席外しててくれるだが、言わないあたりは大地の  ジェントルマンとしての配慮だろう。  そういうのは慎吾が最も毛嫌いすることだったりするが。


瑞奈「はい、分かりました」


 そんな大地の配慮を知ってか知らずか、すんなりと受け取り花瓶を持って部屋を後にする。  瑞奈が出ていったのを確認してから、大地は瑞奈が座っていたイスに座り、足を組んだ。  雑誌のモデルも真っ青なほど様になっているその姿は、もし今、ドアが開いていたら看護婦とか  つい立ち止まって見惚れてしまうことだろう。


大地「さて慎吾、色々と話したいことがあるんだが」

慎吾「俺はねぇ……と言いたいところだが、ちょうど良かった。俺も聞きたいことがある」

大地「もちろん、答えてやるよ。こっちの質問にも答えてもらえるならな」

慎吾「質問によるな」

大地「お互い様だろ」

慎吾「姉貴の事件のこと、さっさと教えろ」

大地「ふぅ……高校は入る前に言ったこと覚えてるか?」

慎吾「ゲームのことか?」

大地「そう。教えたら私の負けになるだろ」

慎吾「じゃあ、本当のこと……つまり姉貴を殺した犯人、知ってるってことか?」

大地「さぁな」

慎吾「………………」

大地「犯人像、浮かんでるのか?」

慎吾「条件だけな。姉貴より背の低い……恐らく女性だろ」

大地「ほぉ、どうやら強力なバックアップがいるようだな」

慎吾「まぁな」

大地「ならもう一つ、特別に教えてあげるよ」

慎吾「ん?」

大地「知っている情報かな? 美佳は抵抗しなかった」

慎吾「あぁ、知ってるよ」

大地「そう……美佳が死ぬのは私にとって予想外だった」

慎吾「――!」

大地「いや、死を選んだのは……かな。クロフォードもあるいは、同じだったかもしれない」

慎吾「クロフォード……そういやそっちの件とあんたの関係は?」

大地「クロフォードを撃ったのは私だ」


 思いのほか、簡単に喋ったことに慎吾は一瞬戸惑った。


慎吾「あ、そう」


 だから空返事しかできなかった。  これで攻守交替、今度は大地が質問してきた。


大地「慎吾、漣連夜くんとは仲はいいか?」

慎吾「漣? 部活が一緒って感じだけど」

大地「まぁお前が交友広そうには見えないから安心しろ」

慎吾「…………で?」

大地「なんだ、釣れないな。連夜くんの性格は分かってるかな?」

慎吾「一応は……」

大地「よし、じゃあちょっとシュミレーションをしてみよう」

慎吾「は?」

大地「連夜くんの性格を考えて実際そうしそうなことを答えて欲しい」

慎吾「……何それ?」

大地「やるのか、やらないのか?」

慎吾「まぁいいけど……なんの意味がある?」

大地「それはお前には関係ないことだ」

慎吾「………………」


 有無を言わさぬ雰囲気に慎吾はそれ以上問いださなかった。  こっちに聞き出す情報がない以上、無理に聞いても答えは一緒だからだ。


慎吾「いいぜ、なんだ?」


 ならここは相手の言うとおりにしなければならない。  飛び込んで初めて得られる情報もきっとあるだろうから。


大地「うん、もし連夜くんが凄い力を持っているとしよう」

慎吾「は?」

大地「力を貸せと言って脅したら力を貸してくれるだろうか?」

慎吾「……意味がわからん」

大地「シュミレーションだと言ったろ? ようは連夜くんの性格を知りたいんだ」


 もちろん裏があることぐらい慎吾には分かっている。  ここは言われた通りにすべきか悩んだ。  自分のことならまだしも人のことをこの男に分からせていいのかどうか……


大地「どうした?」

慎吾「あんたは俺の性格を知ってるはずだ。あんたの目的が分からない以上、人のことは言えない」

大地「ふむ……確かに、それはあるな」


 そのことは考えていなかったのか、腕を組んだまま俯いて考え出した。  その間に慎吾も考えることができる。我ながら窮地によく思いついたもんだと自画自賛をしてみた。


大地「取引をしよう」

慎吾「取引?」

大地「お前の犯人を教えろ、以外の質問に答える。だからお前もきちんと答えるんだ」

慎吾「…………………」


 少々意外だったのは、それほどまでして連夜の性格を知りたいということだった。  だが慎吾にとってもチャンスと言えばチャンス。  悩んだ挙句……慎吾の答えは……


慎吾「いいだろう。応じるよ」


 恐らく断っても連夜の性格は別の形で情報を得るだろうと思った。  それほど知りたいのならある意味、慎吾に対しリスクを負ってまで聞く必要もないといえばないからだ。  ならここは自分のメリットの大きさを取った。  もちろん、連夜には悪いという気持ちを持ちながら……


大地「OK、取引成立だ。それで慎吾、先ほどの質問、どう思う?」

慎吾「前提がよく分からないがその力って具体的にどんなのってあるのか?」

大地「まぁそうだな……人々にとっては脅威になるものかな」

慎吾「ふぅん……」

大地「なんか関係あるのか?」

慎吾「いや、漣は自分より人のことを優先する男だ。自分の命がかかってても他人に脅威に なるようなもんなら、取引には応じないと思う」

大地「そうか……じゃあ人質が他人なら、話は別ってことか」

慎吾「まぁ……そうだろうな」

大地「くっくっく、なるほどな。助かったよ、慎吾」

慎吾「……じゃあ俺からも質問良いのか?」

大地「いいよ、何でも答えさせてもらおう」

慎吾「……あんたの姉貴と結婚する前の苗字を聞こうか」

大地「朝森だ。朝森大地、これが私の本名だ」

慎吾「……どうも」

大地「それじゃ、あのお嬢さんが帰ってくる前に退散することにしよう」

慎吾「なぁ、朝森さんよ」

大地「ん?」

慎吾「何で……姉貴は死を選んだんだろうな」

大地「それは、私が知りたいくらいだよ」


 ニッコリ微笑んで大地は部屋を去った。  その微笑みの裏には哀しみが潜んでいるような、そんな印象を慎吾は感じた。


慎吾「はぁ……疲れた」


 話ばっかりして野球をまったく見ていなかったと音量を少し上げ、野球を見ることにする。  元々、面倒くさいことは嫌いで出来るのなら、大地に関わるのだって避けたいのが本音だ。  しかしここまで来てしまった以上、引き返すことも出来ない。  不器用な自分の性格にほとほと愛想を尽かしたい気分だった。


カキーンッ!


慎吾「………………」


 試合は7回の裏、1番の豹がレフト前ヒットで出塁したところ。  気づけば点数は5−5の同点になっていた。


慎吾「踏ん張れよ、薪瀬」


ガチャ


瑞奈「あれ? あの人帰っちゃったんですか?」

慎吾「あぁ、さっきな」

瑞奈「でもいいお義兄さんですね」

慎吾「あれで性格が良ければな……」

瑞奈「顔はいい人はどっかで帳尻合わせささってるんですよ」

慎吾「フォローになってねぇから」

瑞奈「そうですか?」

慎吾「まぁいいや、良いから試合見ようや」

瑞奈「そうでした! どうです!?」







 甲子園球場では今、2番の水神が送りバントを成功させ1死2塁となり  桜花側が今日、2回目の守備タイムを取ったところだ。


透「どや、薪瀬?」

司「大丈夫と言うか出来るだけいかなきゃ大友に負担が……」

透「やめややめ。なんやおもろない。ちゃうやろ、わいらの野球って」

司「え?」

連夜「透の言うとおり。責任感とか大事だよ、だけどそれを前面に押し出すのは違う」

国定「俺が言えたことじゃないが、お前が自信を持って投げれば大丈夫だよ」

司「……わかりました」

透「ほな、頼むで」


 倉科が審判に帽子をとって一礼してからベンチへ戻っていった。  試合再開、打順は3番の火影。


火影「おしっ、絶対に打つ!」

大河内「(このバッターは緩急に弱いみたいだが……うちの投手って松倉以外で緩急使えないんだよな……)」

司「(どうしましょう? スローボールとか使います?)」

大河内「(急に使ってコントロールがつくとは思えないが……1球試してみるか)」


シュッ


パスッ


大河内「うん、もういいや」

司「………………」


 フォームも何も関係ないような手投げになってしまい、しかも大河内が立って捕球するほど高いボール。  普通に投げている投手が、急にいわゆるスローボールを投げるなんてコントロールがつくわけがなく  これでその場しのぎの緩急は使えなくなった。


火影「小細工なんて通用せぇへんで! 真っ向勝負でこいや!」

豹「(なんで関西弁?)」

大河内「(みたいだな。今日だってストレートの球威は悪くない、思いっきり来い)」

司「(分かりました)」


ピシュッ


火影「どりゃあっ!」


シュパァンッ!


 高めのストレート、司の威力が勝り火影のスイングは空を切った。


火影「へっへっへ、そう来なくっちゃ」

大河内「次、行くぜ」

火影「おっしゃあ!」


 もちろん、ここまで来たら勝ちたいのはどちらも一緒だろう。  目先の対戦に拘って自分を見失い、いわゆる自己満足といえるプレイは評価されない。  だが、その投手対打者の一騎打ちこそ、ファンが見たい対戦とも言える。  この瞬間、この対決だけは細かい理屈なしのその対戦だ。


司「しぃっ!」


ピッ


火影「だっしゃあっ!」


ガキャァン


火影「落ちろ――ッ!」


 打球はフラフラっと二塁ベース後方へ飛ぶ。  セカンド、ショートが回り込み、センターも突っ込んでくる。


豹「――!」


ダッ!


 ここで2塁ベースから少し離れたところで様子を見ていた豹がスタートを切る。  確実に落ちると思っての判断だが、セカンド山里が追いつきそうといえば追いつきそうだ。  しかしここは勝ち越し点を取るため、豹はギャンブルに打って出た。


山里「くっ!」


ズシャアッ


 山里が飛びつくも後一歩届かず、審判の両手は横に大きく開く。  そしてスタートをいち早く切っていた豹は3塁を蹴る。


連夜「4つ!」

佐々木「このっ!」


ビシュッ!


 佐々木から好返球がくるも豹がそれよりわずかに先に滑り込み、左手でホームベースにタッチする。  そして審判のセーフのコールが高々と響き渡った。


司「くっ……」


 青波が投げている豊宣にとっては大きな大きな1点が入った。


御藤「ナイスラン、進藤」

豹「ありがとうございます」

御藤「だが、それは結果論だ。次は青波だ。暴走する必要がどこにある?」

豹「あのピッチャーから連打は出来ないという判断の元です」

御藤「ランナー3塁なら犠牲フライで十分だろう?」

豹「………………」

御藤「まぁいい。お前がそう判断したのなら、何も言わない」

豹「ありがとうございます」


 しかし致命的ともいえる追加点をあげてしまった薪瀬は気持ちの整理ができずに  4番青波へ投じてしまい、長打を浴びてしまう。


コキッ


連夜「チィッ!」


 そして石水のスクイズで更に1点をあげる。  御藤もまた豹の意見を尊重し、スクイズという選択をとった。  しかし薪瀬もまた2点取られたことで逆に吹っ切れたところもあるのか、後続をたった。


真崎「ドンマイ、ドンマイ。まだ2点だぜ」

連夜「その通り。緒戦なんて10点差だ!」

国定「………………」


 反撃したい桜花は8回、6番の姿から。


木村「どんな形でもいい、塁に出ろ」

姿「ウィッス」


 しかし豊宣のマウンドには大会No.1左腕、青波龍滝がいる。


龍滝「――シッ!」


ズッバァンッ


姿「くっ……!」


 桜花はやたら対左投手の比率が多い。  地区予選では国立玉山の鈴村、一宮の田仲・前田・宮地など左の好投手が多く存在し  また甲子園大会でも富士中央の永倉や豊宣の青波・須山など、なんかの陰謀とも言えそうな対決割合だ。


ガキィン


姿「チッ!」

豹「オーライッ!」


 ただ姿も左投手総じて弱いわけではない。得意ではないがいわゆる技巧派ならヒットを打つことぐらいならできる。  右投手でも苦手なストレートを左投手で投げられた場合、正直言って話にならない。  そして青波は言わば、その姿にとって話にならない投手と言える。


ズッバァンッ!


司「………………」


ククッ


ガキィ


水神「おし」

山里「くっ!」


 もちろん、青波ほどの実力になれば姿に限っていえたことではないのだが……  ストレートの速さだけでなくコントロールがあるからこそ決め球といえる変化球がなくても打ち取ることができる。  要所ではそのストレートを存分に発揮して抑えることもできる。  青波が評価を受けているのは何もストレートが速いだけではないのだ。


ズビシッ


審判『ボールッ! フォア!』


大友「チッ!」


 8回の裏、ピッチャーを大友にスイッチするも先頭バッターにフォアボールを与えてしまう。


連夜「トモやん、分かってるな」

大友「……えぇ。でもトモやんは止めてください」


ビシュッ!


ガキッ


 内角のボール球を速さに惑わされ、スイングしてしまう。  バッターも打った瞬間、しまったという顔をした。


大友「セカンッ」


シュッ


国定「よっしゃ!」


 ピッチャーゴロ⇒セカンドベースカバーのショートへ⇒1塁転送、と綺麗にダブルプレーが決まった。  ピッチャーは何より気持ちの面が優先される場合もある。  選手層の薄さの問題だが、1年目から必要とされ大舞台で経験を積んでいる大友は課題だったメンタル面で大きな変化があった。


キィンッ


ビシッ


連夜「んげっ!?」

須山「おしっ!」

国定「ワンファンブル大丈夫だ。落ち着いて投げろ!」

連夜「このっ!」


シュッ!


姿「ちょっ」


ビシッ


 拾ってその流れで送球したため、1塁手前でショートバウンド。  前日、そういう送球を確実に捕球してきた姿だったが左投げの連夜の送球が早いこともプラスして弾いてしまう。


連夜「こらぁ、何してるんだ!」

姿「いや悪いとは思うが、お前も悪いだろ」

連夜「そうだ、記録は俺のエラーになるんだ。どうしてくれる」

姿「知らん」

連夜「と言うか左利きをサードに置くのが根本的に間違ってるって」

国定「今更それを言うか?」

山里「というか漣が外野守れれば全て解決なんだが」

連夜「守れますよ」

捕手&内野’s「(どこが?)」

大友「まぁワンエラーぐらい大丈夫ですよ。慣れましたし、抑えればいいだけですし」

連夜「さすがトモやん、良く言った」

大友「だからトモやんはやめてくださいって」

大河内「………………」


 大河内は中学のときの大友は知らないが、恐らく実力的にワンマンチームだったのが想像できる。  基本的に味方は信じず、自分が投げて自分が打てば勝てる、そんなチームだろう。  だから最初は苦労した。しかし慎吾の説得に最後は折れる形になり、今では一からと言っていいほど野球を勉強している。  実戦でしか学べないことも多いが、実戦だけでは学べないことも多い。


大友「ラァッ!」


ビシュッ


ガキィン


山里「(パシッ)

豹「あーしくった」

大友「おしっ!」


 一つのエラーで崩れない強さを大友は持った。  些細な一歩、その一歩がいずれ大きな結果を招くのだ。


連夜「ナイスピッチング!」

透「よっしゃ、まだ分からんで!」

真崎「頼みますぜ、国定先輩!」

木村「そんな露骨にプレッシャーかけるなって」

真崎「あ、すいません……」

国定「いや、構わないっつーかプレッシャーでも何でもない。味方の声援をプレッシャーに感じたら終わりでしょ」


 試合も大詰め9回の表、桜花の最後の攻撃は9番の国定からという好打順。  元々選手層が薄く、前の試合の疲労が残っているなど満身創痍の状態だがそれを負けた理由にできるわけがない。  選手層はともかく疲労に関しては一緒。むしろ横海とも延長戦をやっている豊宣の方が大きいとも言えなくもない。


国定「このまま負けるわけにはいかない」

龍滝「そうはいかないな」


ビシュッ


カキーンッ


国定「しゃあっ!」


ズダッ


豹「ほっ!」


パシッ


ズシャアッ


国定「――ッ!」

豹「よっしゃ」


 センター前に抜ける当たりを二遊間に詰めていた豹がダイビングキャッチ。  しっかりと1塁へ送球してワンアウト。


龍滝「ナイスセカン」

豹「まさか捉えられるとは、ですね」

龍滝「別に。あいつらをDランクにしてる時点でランク自体アテにならないよ」

豹「……ですね」


 龍滝も分かっていた。そんな評価になんの意味もないことを。  ある程度、目安にはなるかもしれないが実際戦わなければ相手の強さなんて分からない。  ましてや高校野球なんて一発勝負、過去のデータなんてアテにはならない。


キィーンッ!


石水「なっ!?」


 まさに今、石水は前日のデータ通りにリードしたのだが、大河内はその上をいった。


大河内「おしっ!」

滝口「さすがです!」


 流し打ったというよりは球威に押されライトに飛んだというのが正しいのだが  そこは大河内のミートセンスが光った。


木村「よし、エンドランだ」


 この木村の一言でベンチは騒然とした。


連夜「は? 正気ですか?」

真崎「2点差だぞ!?」

木村「2点差だからだ。ランナー進めなきゃ話にならないだろ」

国定「いや、佐々木は粘れますし自由に打たせた方が……」

木村「併殺打も怖いしな。だったら単独もあるけど?」

国定「エンドランでお願いします」

姿「(なぜ二者択一?)」


 9回1死、桜花は冒険に出る。  この辺が木村の采配は怖いだの、悪く言えば良くないといわれる所以である。


ズダッ!


龍滝「なっ!?」


 左ピッチャーの龍滝、予想外のランナーのスタートに戸惑ってしまう。


シュッ


佐々木「よしっ!」


ピキィンッ


 リリースのタイミングが少し遅れ、ボールが甘く入ってしまう。  そこを佐々木に打たれる。


パシッ!


龍滝「日高!」


 しかし塁間を狙った打球も一塁日高が横っ飛びで捕球。  1塁ベースカバーの龍滝と佐々木の勝負になったが、龍滝の方が1歩先にベースを踏んだ。  2死になるも大河内は2塁へ進塁し、打順はクリンナップへ。


高橋「うし! 続けよ上戸」

上戸「おう!」


石水「(広角に打てる打者だ。小細工なしに攻めようか)」

龍滝「(何リードするのサボってんだよ)」

石水「(いや、そんなつもりじゃ……)」

龍滝「(だが良いだろう。一気に行くぜ)」


ビシュッ!


ズバァンッ!


審判『ボールッ!』


高橋「(遅すぎるがようやく見慣れてきた。ちょっとスピード落ちてるな)」


 いかな青波龍滝と言えど横海との延長14回を投げ、前日も15回から4イニングを投げている。  ここまで須山、火影が中心に投げてきたとはいえ、リリーフ登板もしており披露は溜まっていた。  そう考えると自軍のエースは病み上がりだというのに凄い男だなと思わざるおえなかった。


龍滝「ハァッ!」

高橋「甘いッ!」


キィーンッ!


豹「――くのっ!」


 セカンド豹がジャンプするも届かず打球は右中間へ。  2塁ランナー大河内は3塁を蹴ってホームイン、6対7と1点差に詰め寄った。


石水「ドンマイ、まだ1点ある」

龍滝「分かってるよ。あと1つだしな」


 そう1点差には詰め寄ったが、今は9回ツーアウト。  だがランナーが出ており、次は4番の上戸。両チーム、まだどうなるか分からない状態だ。


連夜「上戸さん、頼みます!」

上戸「繋げるよ、なんとしても」


ビシュッ


上戸「ラァッ!」


キーンッ


 初球から振っていくも、打球は1塁方向へ大きくそれる。


石水「(変化球でカウントを作り、高めで大丈夫だろう。比較的ストレートなら ボールでも手を出しそうだし)」


 大河内の一件があったため、初球ボール球のストレートで様子を見てみた。


ククッ


ブ――ンッ!


上戸「くっ」


 スライダーとフォークでカウントを作り2−2の平行カウントとなる。  そして1球牽制を挟んでの5球目!


ビシュッ!


上戸「おらぁ!」


ズッバァァンッ!


 高めのストレート、龍滝の球威が勝り上戸のバットは空を切った。


連夜「………………」


カランカラン……


 ネクストにいた連夜は立てていたバットを不意に倒し天を見上げた。  その連夜の目は薄らと濡れているように見えた……









 病室でテレビ観戦していた2人もその瞬間は何も言わず黙っていた。  慎吾はこの大事な一戦にベンチ入りすることもできず、ただテレビで見ることしか  出来なかった自分の体を恨んでいた。  ただでさえベンチにいても何も出来ないのに……もどかしさでどうにかなりそうな気さえしていた。


瑞奈「残念でしたね」

慎吾「あぁ……」

瑞奈「でも部を作って2年目で甲子園ベスト8ですよ!? 凄いじゃないですか!」

慎吾「あぁ、そうだな……」

瑞奈「もう! なんなんですか、辛気臭い顔して!」

慎吾「負けた後なんだから少しぐらいしんみりさせてくれ」

瑞奈「似合いません!」

慎吾「………………」


 バッサリ切り捨てられる慎吾。  でも言われると自分でもそう思う部分もあり  また、落ち込んでても仕方がないっていうこともあった。


瑞奈「まぁ頑張りましたよ」

慎吾「あぁ、俺らが思っている以上にな」


 何もしてない自分より選手たちの方が悔しいに決まっている。  ましてや真崎や姿は気を遣ってくれてたし、負けたことに少なからず罪悪感を持っている気がしていた。


慎吾「選手のメンタル面も俺らの仕事か」

瑞奈「そうですよ!」

慎吾「寝てばっかりいられねぇな」


 そう言いつつも体はベッドに預け、後頭部を両手に支えながら天井を見上げた。

 桜花は色んな想いが交差したこの甲子園での戦いに終わりを告げた。  夏の終わりはもうすぐそこに迫っている……!





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