Fiftieth Fourth Melody―文化祭での一コマ―


 文化祭当日。桜花は学校行事に力を入れるため、文化祭も大きく盛り上がる。  そして元々女子校だけあって、余所の高校の生徒などが多く来てくれるためいつも大盛況だ。


キャ――ッ!


ウワァッ!


慎吾「大盛況だな、お隣は」

透「シュールやな。この悲鳴を聞きながらたこ焼き焼くんわ」


サッ、サッ


慎吾「やっぱ手際いいな」

透「当たり前やん。でもワイ、野球部の方にはいけへんで?」

慎吾「分かってる。最初からそのつもりだ」


 倉科がたこ焼きを焼き、慎吾が隣で色々とフォローしている中、知ってる顔が客として来た。


姿「たこ焼き3つにコーラ6つ」

京香「やっほう! 頑張ってる?」


慎吾「よぉ、デートか?」

京香「まさか。そんなことしたら私、他の女子に怒られるわ」

慎吾「だって。残念だったな、姿」

姿「お前な」


 あの真崎の質問以来、何かと茶化される姿。  まだ本人は認めてないものの、真崎と慎吾は確信を持っているみたいだ。


透「星音ちゃんやったら裏で働いてるで。呼んでこようか?」

京香「別にいいわ。差し入れ欲しいだけだから」

透「オッケーや。ちょいと待ってな」

京香「(キョロキョロ)

慎吾「ちなみに森岡だったら野球部の方だぞ?」

京香「な、何も言ってないじゃない!」

慎吾「いや、親切に教えてやっただけだろ」

京香「うぅ……」

透「ちなみにつきあっとるんか?」

京香「つ、つ、付き合ってないわよ!」

慎吾「は? 付き合ってないの?」

京香「告白はしたけど、保留みたいな感じよ……」

透「中々罪な男やな」

慎吾「森岡に恋愛沙汰は似合わないけどな」


 ちなみにその出来事は皆が甲子園にいってる最中のことだ。


星音「はい、コーラ……ってなんだ京香たちだったの」

京香「ご苦労さま」

透「ほい、お待たせさん。早めに食ってな」

姿「サンキュ」

慎吾「じゃあ、俺も野球部のほう見てくるかな。倉科、樋野任せたぞ」

星音「はーい」

透「了解や」


 姿と橘は自分の教室に、綾瀬はグラウンドへ向かうべく2−Aの教室を後にした。  そして下駄箱で靴を履き替えてる時、バタバタと忙しそうな生徒会長と出会った。


慎吾「あんた、なんていう格好してんだ?」

瑞奈「あ、綾瀬さん。どうです、似合ってます?」


 瑞奈はメイドの格好をしていた。  クルっと一回して見せるが慎吾は特にコメントを残さなかった。


瑞奈「もう! 何か言ってくださいよ!」

慎吾「いや、なんて言っていいやら……」

瑞奈「あ、そうだ。綾瀬さんに聞きたいことがあったんです」

慎吾「ん?」

瑞奈「朝里が行っている野球大会ってご存知ですか?」

慎吾「あぁ、あったな。それが?」

瑞奈「いえ、秋季大会も早く終わってしまったようですので参加されてはいかがかなっと思いまして」

慎吾「あ〜……良いかもしれないな」

瑞奈「実はそう言うと思いましてこれが参加希望用紙です」

慎吾「お、ありがとな」

瑞奈「いえ、では私は忙しいので行きますね」

慎吾「あいよ」


 バタバタと瑞奈は本当に忙しそうに去って行った。  しかしそれならメイド服はどうなんだっとツッコミたいがそれは愚問だ。


慎吾「あぁいうの見たさに余所から来るんだもんな」


 俺はいまいち分からん、と言わんばかりにため息をついて  賑わっているグラウンドへと足を向けた。


…………*


 各クラスは劇など以外はそれぞれの教室を使っているためグラウンドは大抵部が行っていた。  野球部のところにも若者中心にそれなりに集まっていた。


慎吾「よっ、調子はどうだい?」

シュウ「オッケー、目標はいくペースだな」

慎吾「そっか」

鈴村「う〜す、来てやったぞ」

漆原「楽しませろよ、コノヤロー!」

慎吾「頼んでねーよ。帰れ」

鈴村「酷っ!」

慎吾「まぁ、いいや。で、何やる? 色々あるけど」

シュウ「オススメはストライクアウトか真剣勝負かな。それ以外にも早食い競争、これを食べきったら1万円とかあるけど」

鈴村「後半、野球関係ねぇ!」

飛騨「真剣勝負って?」

慎吾「うちの誇る松倉、大友から外野まで運んだら1万円。ゴロなら負けね」

鈴村「投げの方はないの!?」

慎吾「あるけど投げは午後からなんだよね」

鈴村「チェッ」

シュウ「漆原くん、パフェ大食いチャレンジだそうです」

鈴村「やるのかよ!」

漆原「俺、甘党だから大丈夫!」

久遠「それさっき、鳴海が来て同じこと言って医務室に運ばれたぞ」


ドンッ


漆原「ちょ、どんだけ」

シュウ「1分半で食べてね」

漆原「詐欺だろ!」

慎吾「まぁそう簡単に1万やるような真似はしないよ」

シュウ「しねぇっすよ」


 その後、チャレンジした漆原だったが、結果はもちろんダメだった。


漆原「うぅ、くるしぃ……飛騨かたきを……」

飛騨「はいはい。んじゃ勝負するかな」

シュウ「むっ、酷いぞ。大人げないのか!?」

飛騨「お前らが言うな!」

慎吾「よし、松倉。死ぬ気で抑えろよ」

松倉「飛騨かよ……ありか、んなもん」

鈴村「だからお前らが言うなって」


 1対1の対決。ルールは簡単。  内野の頭を越えれば打者の勝ち。越えなければ投手の勝ち。  どんな強い当たりでもゴロでは負けになるため上手く打てるかがカギとなる。


松倉「シッ!」


グググッ!


ガキィッ


飛騨「あっ……」


 粘りに粘った飛騨だったが、最後は松倉の低めに決まるスライダーを引っ掛けてしまう。  だが試合だったらもしかしたら1、2塁間を抜く打球だったかも知れない。


松倉「ふぅ、危なかった」

飛騨「もう1回だ!」

慎吾「悪いな。後がつっかえてるんだ」

飛騨「お前ら……」

慎吾「また来いよ」

飛騨&鈴村「2度と来るか!」


 このようにクラスの方も野球部の方もそれなりに盛況している状態だった。


…………*


 こんな感じで学校が盛り上がってる中、真崎はひなを昨日薪瀬と話してる所に呼びだした。


ひな「どうしたんですか? 真崎先輩」

真崎「単刀直入に聞くよ。ひなちゃん、何を俺に隠してるの?」

ひな「――! な、なにも隠してなんか……」

真崎「ゴメンね。昨日薪瀬と話してるのを聞いちゃったんだ」

ひな「あ……」

真崎「いや、その前から何となく気になってた」

ひな「ど、どうして?」

真崎「薪瀬と知り合いで、話してたろ? そして漣に接する機会も多く見た。 その漣がこんな結果になって、それに薪瀬が関わっていた。となれば嫌でも気になるよ」

ひな「そう……ですね」

真崎「詳しく聞こうとは思わない。けど、このままズルズルいくのは嫌なんだ」

ひな「わたしと別れたいってことですか?」

真崎「逆だよ。別れたくないから聞きたいんだ。このまま付き合えるのかをね」

ひな「真崎先輩……」

真崎「どうかな?」

ひな「あたし……綾瀬大地って人の傍にいて、何かと命令を受けてたんです」

真崎「命令……ね」

ひな「その人には恩があったから」

真崎「恩?」

ひな「あたし、高校入学前に母親が殺されたの」

真崎「えっ!?」

ひな「それで入学の時に大地さんにお世話になったの。だから……」

真崎「協力することにした、ってわけか」

ひな「そうなんです」

真崎「薪瀬とはその時に?」

ひな「はい」

真崎「なるほどね」


 真崎にとって一番聞きたかった薪瀬との関係。  それが聞けた真崎は一安心だった。


真崎「漣のことは聞いて良い?」


 だから今度は綾瀬のプラスになることを聞き出せないかと思った。  だが、ひなの返答は……


ひな「ごめんなさい、それは……」

真崎「分かった。ゴメンね」

ひな「ごめんなさい……」

真崎「いいってば」

ひな「あたし、真崎先輩の傍にいてもいいんですか?」

真崎「俺はどうあってもひなちゃんを信じてるよ」

ひな「先輩……(グスッ)


 泣きじゃくる駒崎を優しく抱きしめる真崎。  盛り上がる文化祭をそっちのけで静かな空間がここにはあった。


…………*


 大盛り上がりだった文化祭が終わり、野球部の面々は片づけを終え部室に集まっていた。  話があるからと慎吾が集合をかけたのだ。


慎吾「今日はご苦労さん」

シュウ「ほんと疲れたよ」

透「ワイなんて腕がパンパンや」

慎吾「集まってもらったのは他でもない。朝里が行っている野球大会って知ってるか?」

シュウ「何それ?」

佐々木「朝里が毎年行ってるんだけど、高校〜アマチュアまで無差別で参加できる野球大会なんだけど……」

久遠「何、出場すんの?」

慎吾「そう。社会人とやれる機会なんてそうないことだしな。力試しがてら面白いかなっと思ってさ」

姿「高校も参加出来るって言ってたけどどっか出てるとこあんの?」

佐々木「近くだと大岬や赤槻は去年出てたみたいだな」

姿「詳しいな」

佐々木「去年は資料を見たから。俺、親戚に朝里の職員がいるからさ。去年担当だったから」

姿「なるほどね」

慎吾「申し込みたいけど、いいか?」

姿「監督とお前が決めたんなら異論はねぇよ」

シュウ「試合がやれるんなら、文句ないよ!」

慎吾「じゃあそういうことで、当面は朝里の大会を目標にやっていくぞ」

全員「おぅ!」


 朝里の大会に出場することになった桜花学院。  社会人からも出場するなどレベルの高い大会となるが  桜花はどこまで勝ち進むことができるのか?




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