Fiftieth Seventh Melody―朝里野球大会、一日目―


 朝里野球大会の当日。試合は三日間に分けて行われる。  今日はその予選だ。


慎吾「ルールだけど再確認するぞ。まず1グループ4チームでリーグ戦を行う。 上位2チームが決勝トーナメントに進むわけだ」

真崎「何グループなんだっけ?」

慎吾「8グループだな。つまり決勝に上がった時点でベスト16入り」

真崎「ふむふむ」

慎吾「俺らのグループはF。相手は大学2校に高校のチームが1校だな」

佐々木「高校ってこの東京連合軍ってとこだろ? どんなチームなんだろうな」

慎吾「まぁ対策が立てようがないから行き当たりばったりにはなるな」

木村「あと大事なことだが、予選ではイニングがいつもより短いから気をつけろよ」

慎吾「そうそう、あとコールドもある。点差には気を配れよ」


 決勝トーナメントでは9イニングフルに戦うが、予選では7イニングのコールドは5点。  更にタイムブレーク制が導入されており、延長は1死3塁1塁から始まる。


久遠「コールドは良いとしてこのタイムブレークは厄介だよな」

慎吾「まぁ延長まではいかないだろうけどな」


 こうして話しあってる中、続々と出場参加者がグラウンドに現れてきた。  桜花の面々は少し早く着いてしまったため、大分待っているためこうして話しあっている。


鳴海「チッス!」

姿「鳴海、大岬も参加するのか?」

鳴海「あたぼうよ! 昨年のリベンジだ!」

真崎「ちなみに去年の成績は?」

水城「予選敗退。やっぱりレベルが高いよ」

慎吾「大岬はグループBか」

鳴海「そ。神緑大学が入ってるのが痛いところだな」

浅月「お前らのところはあんまり強そうじゃなくていいな」

慎吾「大学ってだけでレベルが違うだろ」

浅月「どうかな。お前らの実力だったら並の大学には負けないだろ」

慎吾「お褒めにあずかり光栄だね」

ラザ「お互い全力をつくそう」

慎吾「あぁ」


 大岬の面々と別れた後、続いて現れたのは一宮高校の連中だった。


殿羽「よぉ、久々だNA!」

前田「今年はお前らも出るんだな」

姿「殿羽、前田。お前らこそ」

前田「俺らは国立玉山の連中に誘われてな。まぁ関東大会出れなかったし」

佐々木「そういや大岬の連中は関東大会も出るくせにこっちも出るんだな」

慎吾「まぁ、関東大会は来週だからな」

姿「誘われたってことは国玉も今年は出るんだな」

鈴村「その通り。リベンジを果たしてやる」

姿「リベンジって勝ったのお前らだろ」

鈴村「あの詐欺紛いなことしといて偉そうに」

姿「詐欺紛い?」

慎吾「あぁ、文化祭のことか。あんなもん時効だ」

鈴村「んなわけにいくか!」

飛騨「お遊びだったとはいえ、今度は負けないぞ」

松倉「あぁ、こっちこそリベンジしてやる」

宮地「俺らも秋季大会では国玉に負けてるからな」

殿羽「そうだZE! リベンジしたいのは俺らも一緒だYO!」

慎吾「随分敵と作ってるな」

真崎「性格が悪いからじゃね?」

鈴村&飛騨「お前らだろ!」


 一宮、国立玉山の連中がそれぞれの場に戻り、最後に桜花の元に現れたのは赤槻の選手だった。


暁「よぉ、久々」

松倉「暁! お前らも出るんだな」

暁「うちは毎年出てるからな」

慎吾「赤槻って確か部になる前に戦ったんだったな」

佐々木「いつかも言ったけどあの時のメンバーで赤槻に勝てたのって奇跡だよな」

久遠「まぁ、赤槻も一年主体ではあったけどな」

松倉「でも猪狩さんや小波さんといった黄金世代の主力もいたし、そう考えれば頑張ったよな」

暁「今度はそうはいかないからな」

松倉「またお前と投げ合えたら最高だな」

暁「上がってこいよ」

清村「ところで漣は?」

慎吾「あぁ、ちょっとわけありで大会には出ないよ」

清村「あ、そうなんだ。ちょっと残念」

暁「あ、そうだ」

慎吾「ん?」

暁「お前らのグループの東京連合軍、気をつけろよ」

慎吾「何だ、知ってるのか?」

暁「まぁ見てのお楽しみだけど、強いぜ、かなり」

慎吾「凄く曖昧な情報、センキュ」

暁「じゃあな」


 こうして赤槻の面々もそれぞれの持ち場に戻っていった。


慎吾「結構高校も出るんだな」

佐々木「そうだな」

慎吾「関東大会終わったら対外試合出来なくなるからな」

真崎「何それ?」

慎吾「知らん? 秋季大会終了からセンバツ出場校が決まる間は対外試合禁止されてるんだよ」

真崎「あーそうなんだ、知らんかった」

慎吾「高校球児が聞いて呆れるな」

真崎「ほっとけ」


 一方、連夜も朝里の選手として会場に来ていた。


連夜「知ってる顔が結構いるな」

迅「今年は結構高校チームが出てるみたいだからな」

名倉「うちは混合チームだから挨拶はきちんとやっとくか」

迅「そうっすね、キャプテン」

名倉「普通でいいわい」

迅「あ、そうっすか?」

黒瀬「じゃあ最初。光星大学4年の黒瀬彰規です」

続「同じく光星大学3年の師森続です」

迅「続? 珍しい名前っすね」

続「俺もそう思うが、名字で呼ばれるよりはいい」

迅「ふ〜ん」

八代「同じく光星1年の八代衛太! よろしくぅ!」

連夜「よろしくお願いします」

名倉「林藤と漣はさっき聞いたけど後はうちの面々だな」

迅「ま、俺ら高校生だから足引っ張るかも知れませんがどうぞよろしく」

名倉「よぉ言うわ」

連夜「(いいコンビだな)」


 朝里の面々は開会式前に自己紹介をしていた。  珍しい光景ではあるが混合チームでは割とあることでもある。  まぁ、普通は事前にチーム練をするのが普通だが朝里は時間がとれず出来なかった。


迅「さて、優勝目指して頑張るか」

連夜「……やるからにはな」


 開会式を終え、早くも試合が開始された。  試合会場はメインとなる朝里のグラウンドの他、4つある。  それぞれの移動は各球場からバスが出ている。


慎吾「んじゃ、頑張りますか」


桜花学院VS東京連合軍
朝里ナインスターズVS蒼月学園








 予選リーグを終え、決勝に残った桜花。  全試合終えたところでトーナメントの組み合わせを確認していた。


A1朝里ナインスターズE2国立玉山高校
B1神緑大学AF2桜花学院
C1JR東日本G2東芝
D1廣嶋カープズG2日本石油
A2神奈川学院大学H1織樟ウェーブス
B2慶倫大学G1芯逢大学
C2赤槻高校F1東京連合軍
D2NISSANE1宣秀大学


慎吾「神緑大学とだな」

シュウ「神緑……」

慎吾「どうした?」

シュウ「ううん、何でもないよ」

姿「にしても国玉、赤槻と残ったんだな」

真崎「鳴海や殿羽たちは負けたか。仕方ないよな」

鳴海「………………」

殿羽「悔しいYO」

真崎「あ、まだいたんだ」

鳴海「神緑大は強いぞ。気をつけろよ」

慎吾「神緑と同じだったのか。どうよ?」

鳴海「あ、そういやシュウのお兄さんいたっけよ」

シュウ「あ、やっぱり出てたんだ」

慎吾「シュウのお兄さん? 前言ってた人か(※)

シュウ「うん。だったら負けられないね」

真崎「その意気だぜ」


 そんなこんなで話をしている中、姿が連夜のことを発見する。


連夜「………………」

迅「………………」


姿「漣!?」

慎吾「え?」


 球場を後にするところを見つけたため、声はかけられなかったが確かに連夜だと姿は確信した。


慎吾「確かか?」

姿「あぁ、間違いない」

佐々木「どこかのチームで出てるのかな?」


真塚「漣っつー人なら朝里で出てるぜ」


姿「真塚!?」

真塚「よぉ、久々だな。綾瀬に真崎」

慎吾「うっす」

真崎「元気そうで」

姿「朝里で出てるって本当か?」

真塚「あぁ、戦ったんだ。間違いようがないよ」

姿「そうか……」

慎吾「何であいつ、朝里で?」

姿「隣に林藤がいた。林藤が関係あるんじゃないか?」

慎吾「ふ〜ん……」

真塚「朝里は強いぜ。神緑に勝てば当たるだろ」

慎吾「漣に問いただす意味でも負けられないな」


 決勝トーナメントに高校チームが3チーム残ったのは大会史上初のこと。  その1チームである桜花は、一体どこまで勝ち進むことが出来るのか?


※楽屋の裏話第11回、森岡秋気参照



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