Sixtieth Ninth Melody―新たな戦力たち―


 赤槻戦、同日の午後。同じく東京都の蒼月学園と約束している球場に向かっていた。  そのバスの中、ミーティングが行われていた。


慎吾「木村監督からあったように次の試合は1年主体で行く。ベンチ入りさせた6人は全員スタメンで行くぞ」

真崎「全員? それはいくらなんでも……」

慎吾「うちは夏にだって人数的にも1年がベンチ入りする。戦力は一気にチェックしたいからな」

姿「で、オーダーは?」

慎吾「赤木、雨宮のバッテリー。内野は1塁から姿、月見里、布袋、高波。外野はレフトから向江、漣、久遠以上で行くぞ」

連夜「俺、外野?」

慎吾「次の試合、出たかったんだろ?」

連夜「良いのか? 俺の外野怖いんだろ?」

慎吾「……その辺のフォローは久遠にしてもらうとしてだ」

久遠「マジかよ……」

慎吾「蒼月学園は無名だが、昨年夏、帝王を破って甲子園に出ている。決して力がないチームじゃないぞ」

連夜「特に主軸の流戸には気をつけろよ。なめてかかると簡単に持ってかれるぞ」

赤木「はいっ」

雨宮「分かりました」

姿「蒼月って言ったら真塚も行ったよな」

真崎「懐かしい名だな」

慎吾「俺も詳しくは知らないが漣が挙げた流戸と真塚は打者として気をつけるべきだな」

連夜「投手はその場で対応しなきゃいけない。実力が問われるぞ」


 連夜の言葉に1年たちはしっかり頷いた。  今年の1年は中々肝が据わっている。


慎吾「じゃあオーダーだが……」


 オーダー発表が行われてそれから間もなく、バスは蒼月学園と練習試合を予定している球場に到着した。


真崎「おー真塚!」

真塚「真崎か? 久しぶりだな」

姿「よぉ」

真塚「オッス。お手柔らかに」

慎吾「悪いが今日は1年を試させてもらうよ」

真塚「勝負は度外視か?」

慎吾「まさか。1年も試しつつ勝たせてもらうよ」

真塚「なめるなよ。そうそう簡単に負けるつもりはないぞ」

慎吾「お互い様だよ」


流戸「おー連夜! 学校に戻ったか」

連夜「ウィッス。何とかな」

流戸「今日出るのか?」

連夜「外野としてだがな、よろしく頼む」

流戸「こちらこそ」


 挨拶を終え、軽くノックで体を動かし、試合となった。  対蒼月、勝つのはどちらのチームか!?


練  習  試  合
先   攻 後   攻
桜  花  学  院 VS 蒼  月  学  園
1年3B布   袋 蒼   界CF 3年
1年2B月 見 里   迎   SS3年
3年CF  漣   流   戸RF 3年
3年1B  姿   海   塚3年
1年LF向   江 真   塚 3年
3年RF久   遠 神   山3B3年
1年赤   木 三   嶋1B 2年
1年雨   宮 千   葉LF2年
1年SS高   波 秋   原2B2年


慎吾「背伸びはしなくていい、自分にできるプレーを心掛けろ」

1年「はいっ!」

慎吾「後は先輩たちがカバーしてくれる」

久遠「おぉ、軽くプレッシャー」

姿「でも綾瀬の言う通りだぞ」

連夜「ま、そんな固くならんと普通にやろうや」


真塚「向こうは昨年夏、甲子園ベスト8と実力をつけてきたチームだ」

流戸「でも1年主体なんだろ?」

真塚「俺の知り合いがいるんだが、そいつが指揮を取ってる以上、1年主体でもそれなりの実力だと思う」

流戸「ま、連夜の野郎も出るみたいだしな。海塚、気を引き締めろよ」

海塚「おう!」

世那「ってか、俺、1番に戻ってるんだけど」

真塚「そろそろ戻ってもらわないとな。お前の足は貴重だし」

世那「迎の方がバッティング良いんだし、そのまま固定しちゃったら?」

流戸「お前ね、もう少し自信持てよ」

世那「んなこと言われてもねぇ……」

迎「ま、フォローはしてやる。思い切ってやれ」

世那「あ、あぁ」


 1回表、桜花の攻撃はこの試合、トップバッターに入っている新戦力布袋から。


連夜「確かにいいバッティングはしていたが1番か?」

慎吾「お前は見てないが、足結構速いぞ? うちでいうなら森岡と良い勝負」

連夜「あん? そんな速いのか?」

シュウ「高波も速いし、僕もうかうかしてられないね」

木村「一気に機動力で勝負出来るチームになったな」


海塚「おいっしょ!」


グググッ!


ブ――ンッ!


布袋「ぐっ!?」


 だがトップバッター布袋は海塚のスライダーの前に空振り三振に抑えられる。


布袋「変化球のキレはいい。気をつけろ」

月見里「OK」


シュッ!


ピキィンッ!


月見里「ふっ」

海塚「かっこつけるな、1年坊が!」


 打球は海塚の足元を抜けセンター前に。  桜花初ヒットは2番の月見里から生まれた。


連夜「良いスイング」

姿「真崎も危ういんじゃね?」

真崎「聞こえてますよ」


グググッ!


ガキッ!


連夜「ゲッ!」


 平凡なショートゴロだったが打球が緩かったおかげで1塁はセーフ。


グググッ!


カッキーン


姿「あー……」


 続く4番姿はレフトフライに倒れ、ランナーを出すも先輩2人が続けなかった。


慎吾「お前ら、左投手になった途端崩れるな……」

連夜「いや、結構キレるぜ、スライダー」

姿「うちの地区、左投手多いけどあそこまでのスライダー投げる投手はいないぞ」

慎吾「いいから守ってこいよ」

連夜「なぜ俺を真っ直ぐ見る?」

慎吾「言葉通りの意味だ」


 1回裏、蒼月の攻撃は1番の蒼界世那から。


世那「1年って言ってたな。ってことはそれほどのスピードボールは……」


ズッバァンッ!


赤木「ふぅ……」

世那「速っ!」


流戸「おーやるねぇ、向こうの先発。スピードならうちの海塚以上じゃね?」

海塚「にゃにおう!? 俺だって本気出せば140キロ超えるぞ!」

真塚「別にスピードで争ってるわけじゃないんだから張り合うな」


雨宮「(さ、まずはストレートで押して行こう)」

赤木「(コクッ)


ビシュッ!


世那「くのっ!」


キィンッ


 振り遅れながらも打球は三遊間を割っていく。  先頭のバッターをヒットで出塁を許してしまった。


世那「おぉ、ラッキー。良いところに飛んでくれた」

姿「よぉ、速い球は苦手か?」

世那「え? あ、まぁ、そうですね」

姿「安心しろ。俺もなんだ。振り遅れ方が似てたんでな」

世那「へぇ〜……」


コッ


 続く2番迎がきっちりと送りバントを決め、1死2塁のチャンス。  ここで打席に立つは3番流戸。


流戸「よ〜し! ここは1本打つぞ」

雨宮「(いきなりのピンチだ。変化球、交えるぞ)」

赤木「(あぁ)」


真崎「赤木、変化球はどうなんだ?」

慎吾「こう言っちゃなんだが、大友よりセンスがあるな」

大友「そうですね。それは認めますよ」

慎吾「タイプ、球種的には国定先輩を思い出すな」

真崎「まさかシュート使い?」

慎吾「ご名答」


ググッ!


ガキンッ


流戸「ッ……!」

快「(シュッ!)


 そのシュートで流戸を平凡のショートゴロに打ち取る。


流戸「1年なんだろ、あのピッチャー」

真塚「オーダー表にはそう書いてたな」

流戸「くっそ、良いシュート投げるな。見くびってたぜ」


キィーンッ!


流戸「おっ?」


海塚「よっしゃ、還ってこい! 世那ちゃん!」


ダッ


流戸「――世那! ストップだ!」


世那「えっ!?」


キキィッ


ズバァァンッ


雨宮「おぉ……」

世那「おぉ……」


連夜「チィッ、宙夜め。余計なことを」


 誰もが先制は蒼月と思った場面でセンター連夜からの好返球。  しかし兄弟の流戸だけは連夜の強肩を分かっていた。


雨宮「(漣先輩のおかげで助かった。次は真っ向勝負でいこう)」

赤木「(あ? いいのか?)」

雨宮「(変化球を拾われた形じゃ嫌だろ? 練習試合だし、得意のストレートがどこまで通用するのか試してみようじゃん)」

赤木「(ふっ……気に入ったぜ、雨宮)」


ビシュッ!


カッキーン


真塚「ぐっ!?」


向江「(パシッ)


 いい当たりを放つも球威が勝り、レフト向江の守備範囲。  蒼月、チャンスを作るも得点にならなかった。


慎吾「よし、良く守った」

木村「いい切り替えだったな」

赤木「そこは雨宮のリードですね」

雨宮「赤木のストレートが良かったからな」

慎吾「しかし真塚め、中々いいバッターに成長してたな」

真崎「最後も良い当たりだったもんな」

連夜「とにかく攻撃だ。点取らなきゃ勝てないからな」


ピキィーンッ


連夜「おっ!」


 2回表、先頭の向江がツーベースヒットで出塁する。  それを久遠が送り1死3塁とするも後続が抑えられる。


雨宮「すいません……」

連夜「ま、仕方ないだろ。謝ったってしゃーねー」

慎吾「だな。特に雨宮と赤木は抑えてもらわないと困るし」

月見里「自信持っていけ」

快「守りは任せて」

赤木「あぁ、頼むぞ」


 2回裏、赤木の力投で蒼月打線を三者凡退に抑える。  3回表、桜花は高波のバントヒットでランナーを出すもまたも後続が打ち取られる。


キィンッ!


赤木「――!」

迎「よっしゃ」


 そして3回裏、ツーアウトから2番迎がピッチャー返しのセンター前ヒットで出塁する。


ダッ!


雨宮「くのっ!」


シュッ!


2塁審『セーフッ!』


流戸「いいお膳立てだぜ」


 迎が1人で得点のチャンスを作り打席には3番流戸。


ビシュッ!


流戸「はっ!」


パッキーンッ


連夜「ざけんなっ!」


 打球はセンター連夜の頭上を越える。  2塁ランナー迎が生還し、打った流戸も2塁へ。  先制は蒼月。3番流戸のタイムリーツーベースヒット。


するするする


海塚「んげっ!?」


ガキーンッ


月見里「やるじゃん」


パシッ


 しかし続く4番海塚を落ち着いてセカンドフライに抑える。


赤木「くそっ!」

慎吾「ドンマイ、というか後引きずらなかったのは評価できるな」

雨宮「ゴメン、あそこはリードミスだった」

赤木「いや、あそこは変化球要求されても首振ってた。気にするな」

連夜「雨宮、キャッチャーは常に強気でいなきゃいけないぞ。終わったこと引きずってたら呑まれるぞ」

雨宮「は、はい!」


 4回は共に両投手が好投を見せ、試合に動きなし。  試合が再び動いたのは5回の表。桜花の攻撃。


キィーンッ!


海塚「うっ!?」

布袋「初ヒットっと」


 ワンアウトから1番布袋がツーベースヒットで出塁する。  更に2番月見里がフルカウントから粘りを見せる。


月見里「うっしっし」

海塚「うぜぇっ!」

真塚「(ほんとに1年か? バットコントロールはうちの流戸に匹敵するかもな)」


シュッ!


月見里「まいど」


ピキィンッ!


海塚「くっ」


 海塚の頭上を越え、センター前へ。俊足の布袋が生還し、1−1の同点に。


慎吾「月見里はいいバッティングするな」

真崎「むむむっ……!」


 更に得点のチャンスだったが連夜、姿と海塚のスライダーの前に沈む。


慎吾「お前ら……」

連夜「ドンマイ、気にするな」

佐々木「自分で言うな」


ズバァンッ!


世那「くっ!」

赤木「おしっ!」

雨宮「ナイスピー!」


 5回裏、8番から始まった蒼月の攻撃を赤木が三者凡退に抑える。


カキーンッ


向江「おし!」


 そして6回表、先頭の向江がヒットで出塁する。


慎吾「久遠、確実に」

久遠「おう」

慎吾「その後、行くぞ。真崎」

真崎「オッケイ!」

慎吾「赤木、ナイスピッチングだったな」

赤木「ありがとうございます」


コッ


 久遠が送りバントを決め、1死2塁。ここで赤木に代打真崎を使う。


真崎「しゃあ、来い!」

真塚「(打者、真崎は意外と穴がないんだよな……)」


グググッ


ズバァッ


主審『ストライクッ』


真崎「ゲッ、入ってるのかよ」

海塚「しっ!」


カキィンッ!


真崎「しゃあ!」


バシッ


真崎「んなっ!?」

秋原「(シュッ)


 センターに抜けようかという当たりをセカンド秋原がファインプレー。


海塚「おぉ! ナイスだ、秋原」

秋原「どうも」


 続く雨宮にはフォアボールを出してしまうも、9番高波を……


ガキッ


快「くっ」

迎「(サッ)


 平凡なショートゴロに倒れ、2塁封殺でチェンジとなった。


慎吾「大友、準備はいいか?」

大友「オスッ!」

真崎「綾瀬、俺は?」

慎吾「そのまま大友と交代」

真崎「うそーん……代打1打席だけ?」

慎吾「そういうこと」

真崎「酷ぇ……」


 6回裏、桜花は代打を出した関係でピッチャーが大友に代わる。  蒼月の攻撃は2番迎からの好打順。


大友「しっ!」


ズバァンッ!


迎「(また速球派かよ……投手層厚いな……)」


ガキンッ


迎「あー!」


快「オーライです」


パシッ


流戸「打ち上げなんて珍しいな」

迎「手元で伸びてくる。先発より速いかもな」

流戸「了解」


 ワンアウトで打席には3番流戸が入る。


大友「しっ!」


ピキィンッ!


流戸「速いだけなら打てるよ!」


 三遊間を破り、レフト前ヒットで出塁する。


雨宮「(先輩、ここは……)」

大友「(あぁ……好きにリードしろ。従うよ)」

雨宮「(はい、では次はこれを)」


海塚「よ〜し、俺も続くぜ!」


ビシュッ!


海塚「流戸も言っていたが速いだけじゃ通用しな――!」


グッ


ガキィンッ


海塚「にゃっ!?」


月見里「ほいっ」


サッ


快「ファースト!」


シュッ!


海塚「だぁもう!」


 インコースに夏から取得を目指していたシュート。  左バッターの海塚は見事詰まらされセカンド併殺打。


大友「よし!」

慎吾「よしよし、コントロールついてきたな」

大友「前よりスピードが出るようになってきましたけど、良いんですか?」

慎吾「いいんじゃね? 速い方がストレートと見分けつかないだろうし」

真崎「どことなく適当だな、お前……」

慎吾「俺だって100知ってるわけじゃないからな」

木村「さしずめ高速シュートでも言うんじゃね?」

慎吾「ふむ。まぁ、武器になってんのは事実だから良しとしようや」

大友「分かりました」


 7回表、桜花は1番からの好打順だったが……


海塚「これ以上、点をやるかい!」


ズバァッ!


布袋「ぐっ!?」


グググッ


ガキッ


月見里「チッ」


 ヒットを放っている布袋、月見里も抑えられ三者凡退に抑えられる。


慎吾「漣……」

連夜「なんで俺だけ責められるんだよ」

慎吾「責めてないが、なんかお前らしくねぇなと思って」

連夜「だから外のスライダーは厄介なんだって」

慎吾「まぁ、いい。センター交代、佐々木」

佐々木「あいよ」

連夜「え、マジで?」

慎吾「後半は守備の方が大事だからな」


 センターを堅守を誇る佐々木に代え、7回裏蒼月の攻撃は5番真塚から。


大友「しっ!」


ビシュッ!


雨宮「(甘いっ!)」

真塚「ハッ!」


パッキーンッ!


大友「――ッ!」


 大友のストレートに振り遅れず、左中間スタンドへ。  5番真塚のソロホームランで1−2、蒼月が勝ち越しに成功した。


キィーンッ


神山「うっし!」


コンッ


 更に神山のヒットと送りバントでチャンスを作る。


松倉「綾瀬」

慎吾「いやここは大友に託す。次期エースがHR1本で崩れるようじゃダメさ」

松倉「……まぁ、大友はそんなことで崩れるやつじゃないか」

慎吾「あぁ。ヒットを打たれたボールも決して悪くはなかった」


ズッバァンッ!


千葉「――ッ!」


ストッ


ガキッ!


秋原「なっ!?」


大友「よしっ!」

雨宮「ナイスピッチングです」


 このピンチを大友が球威あるストレートとSFFで切り抜ける。


慎吾「まぁまぁだな」

姿「さて、んじゃ4番の仕事してくるかな」

慎吾「ほぉ、んじゃ見せてもらおうか」


 8回表、桜花の攻撃は4番の姿から。


パキャンッ!


海塚「――ッ!」


 痛烈な打球が左中間を割る。姿はスタンディングで2塁へ。


慎吾「ほぉ……」

真崎「まぁ、左でも海塚はどっちかというと軟投派だからな」

慎吾「まぁな。だが打たれた直後の大事なイニングであいつが打つとはね」


キィンッ!


 更に5番向江が続き、無死3塁1塁とチャンスとなる。


慎吾「(久遠、スクイズ)」

久遠「(ゲッ、マジかよ……)」


 慎吾からのサインに表情には出さないが緊張感が久遠に走る。


海塚「しぃっ!」


ビシュッ!


久遠「(サッ!)


海塚「スクイズッ!?」


スカッ


久遠「ゲッ!?」


真塚「よっしゃ!」

姿「くっ!」


主審『アウトッ』


 海塚のキレのいいスライダーにバントにいった久遠が空振り。  三本間に姿が挟まれ、アウトになる。  その間に向江は2塁に進塁し1死2塁と場面が変わる。


久遠「(くそっ、まさか空振りするとは……)」


慎吾「ん〜……」

真崎「ここは久遠を信じるしかないな」


クククッ


久遠「おらぁっ!」


ピキィーンッ


海塚「はっ!?」


 スクイズ失敗を取り返すヒットは向江が2塁から生還し同点タイムリーとなる。  その後、雨宮がヒットを打つも後続が断たれ、同点止まり。


久遠「ふぅ……まぁ最低限?」

慎吾「空振りした時にはドツこうと思ったけどな」

久遠「怖いこと言わんといて」

真崎「大友、この回大事だぞ」

大友「分かってます」


 8回裏、蒼月の攻撃は1番蒼界からの好打順。


大友「しっ!」


ズッバァンッ


世那「またかい!」


ズッバァンッ!


世那「速いのはアカンねん……」

迎「(なぜ関西弁?)」


ストッ!


ガキッ


迎「くっ!」


ビシュッ


パッキーンッ


流戸「しゃあ!」


シュタタタッ


佐々木「(パシッ)


流戸「んな!?」


 センターは佐々木に代わっており、流戸の抜けたと思われた大飛球を捕球してみせた。


慎吾「さすが佐々木、誰かさんとは一歩目が違うな」

連夜「昔から外野手だった男と比べられてもな……」

慎吾「さ、勝ち越してこい」


ピキィンッ!


海塚「ッ――!」

月見里「甘いっしょ」


 9回表、1死から月見里が今日3本目となるヒットで出塁する。


キィンッ!


 更に途中出場の佐々木も続き、1死1塁2塁となり打席には――!


ピキィーンッ!


海塚「あっ!?」

姿「しゃあ!」


 4番姿! タイムリーツーベースヒットで待望の勝ち越し点が桜花に入った。


カキーンッ


向江「よし!」


 続く向江もタイムリーを放ち、4−2と差を広げる。  久遠に四球を与え、ピンチを広げるが……


海塚「ふしっ!」


ズバァッ!


滝口「キュッ!?」


グググッ


ガキッ


雨宮「あっ……!」


海塚「しゃあ!」


 海塚がエースの意地を見せ、代打滝口、雨宮を抑える。  しかし姿、向江のタイムリーで2点勝ち越しに成功した。


慎吾「薪瀬、ラスト行くぞ」

司「準備OK」


 9回裏、桜花のマウンドには守護神薪瀬が上がる。  蒼月の攻撃は4番海塚から。


司「しっ!」


シュパァンッ


海塚「(これは速さよりノビが凄いな……)」


スルスルスル


ガキッ


海塚「あぁっ!?」


慎吾「薪瀬もチェンジアップ上手く使えてきたな」

連夜「元々決め球はないが球種は多いやつだ。ストレートがより生きそうだな」


 連夜の言葉通り、ノビのあるストレートで後続の真塚、神山と抑えゲームセット。


司「しゃあ!」

雨宮「ナイスピッチングです!」


 4−2、桜花が勝利しダブルヘッダー2戦とも勝利を収めた。


慎吾「チーム力は確実についてるな」

連夜「皆、夏の甲子園の経験が生きてるな」

慎吾「それに秋、冬の期間の練習もな。誰かさんはいなかったが」

連夜「………………」


 そこを突かれると弱い連夜だった。


真崎「それに1年、良い動きするじゃん」

慎吾「あぁ、鍛えれば夏にも間に合うかもな」


 更に起用した1年たちの活躍。これは今後、期待のできる内容となった。


真塚「負けたよ。良いチーム作りをしてるな綾瀬」

慎吾「俺は何にもしてねぇよ」

真塚「だがうちのエースにもいい経験になった。夏、甲子園で会おう」

慎吾「帝王がいるのにか?」

真塚「簡単に負ける気はねぇよ」

慎吾「あぁ、楽しみにしてるぜ」


 東京での2戦、2戦とも勝利を収め、いい形で始動した桜花新チーム。  夏の大会に向け、止まることなく突っ走るのみだ。




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