Seventieth Seventh Melody―蕾が花咲く時―


 いよいよ桜花の初陣。  だが木村がオーダーを発表していると一人の男が驚きの声を挙げた。


赤木「え、自分が先発ですか?」

木村「そう」

連夜「うちの伝統でな。初戦は1年ピッチャーが務めるんだよ」

佐々木「伝統も何も去年だけだろ」

シュウ「これから伝統にしていくんだよね!」

連夜「そういうこと」

赤木「もっと早く言ってくれれば……」

木村「緊張するタチではないが、あんまり前から気負われても困るからな」

真崎「綾瀬でもきっと直前に言ったかもな」

赤木「でもやるからには頑張ります」

大友「後ろには俺や松倉先輩、薪瀬先輩がいる。飛ばしていけ」

赤木「はいっ」


ウウウウウウ――ッ!


シュウ「あ、終わったね」

連夜「んじゃ行きますか」


甲 子 園 大 会 1 回 戦
西兵庫県代表 西千葉県代表
南  部  工  業 VS 桜  花  学  院
3年1B矛   根 森   岡SS3年
3年尾   藤   漣   3年
3年CF常   盤 真   崎2B3年
3年LF不   破   姿  1B3年
3年2B洛   威 滝   口LF2年
2年鷹   遠 久   遠RF 3年
3年RF相   場 佐 々 木CF3年
3年SS佐 々 木 赤   木 1年
3年3B  岸   倉   科3B 3年


木村「先ほども言ったがこのオーダーで戦う」

シュウ「自分が出来ることをしっかりとやろう!」

連夜「赤木、まずはストレートで行く。飛ばせよ」

赤木「はい」

姿「尾藤って左投手って言ったよな。スピードはどうなんだ?」

連夜「どっちかというと軟投派かな……でもそこそこ上げてきてるだろうな」

真崎「鈴村より速いってことはあるまいに?」

連夜「うん、それはない」

真崎「なら大丈夫だろ」

姿「簡単に言うな」

シュウ「しかもデータないわけだし、姿相手にしたら変化球で攻めたくなるんじゃない?」

連夜「だな」

姿「………………」



常盤「なにぃ? 連夜が2番で透が9番だとぉ?」

尾藤「面白いオーダーを組むな」

不破「所詮はそれだけの実力だったわけだろ」

洛威「んにゃ。倉科はうちでも主軸だった、連夜だってシニア時代、あっという間にレギュラーを取った逸材だぞ」

不破「過大評価しすぎだろ。ま、倉科については認めるが」

仙夜「いや〜レン兄は打つと思いますよ。攻撃的2番じゃないっすかね?」

常盤「あぁ、鷹遠は連夜と従兄弟だっけ?」

仙夜「そうっす! ま、野球のデータはないっすけど」

常盤「意味ねぇ……」

尾藤「ま、戦えば分かるだろ。リード頼むぞ」

仙夜「任せてください!」


ウウウウウウ――ッ!


審判『礼!』


全員「お願いします!」


 1回の表、南部の攻撃は1番ファーストの矛根から。


連夜「(矛根か……敵としかやったことねぇが1番ねぇ……)」

矛根「よぉ」

連夜「あぁ、しばらく」


 シニア時代、戦ったが矛根は4番でピッチャーだった。  だが高校、現在は1番でファースト。  単純に野手転向と考えればいいのだが1番でファーストを守ってるのがいささか引っかかるところだった。


赤木「しっ!」


ズバァァンッ


矛根「(ほぉ……確か1年と聞いてたがな……)」

連夜「(綾瀬の作った練習についてきた赤木だ。また一段と威力を増したな)」

赤木「しっ!」

矛根「だが!」


カキィンッ


赤木「あっ!」

真崎「くっ」


 打球は赤木の横を抜けセンター前へ。  先頭の矛根がヒットで出塁した。


連夜「お前が2番ねぇ」

尾藤「んだよ……」

連夜「どうせ送りだろ。さっさと送れ」

尾藤「うるせぇよ!」


コッ


 2番尾藤がセオリー通りバントでランナーを進め、打席には3番常盤。


連夜「(ん〜……一葉か……)」


 常盤と連夜は幼馴染でシニア時代も一緒にやった仲だ。  それだけにセンスの良さは知っている。


カッキーンッ!


赤木「――!」


 二球目のストレートを叩き、打球は右中間真っ二つのタイムリーツーベース。  先制は南部、3番キャプテン常盤の一打だった。


連夜「(んで不破か……)」


パッキーンッ!


 更に不破も続き今度は左中間を真っ二つ。  常盤が還り、2−0。初回から試合が大きく動き出す。


バシッ!


主審『ボールッ、フォアボール』


洛威「ふむ」

連夜「………………」

赤木「はぁ……はぁ……」


 初回だが桜花は守備タイムを取った。  伝令として背番号1の松倉がマウンドに向かった。


松倉「大丈夫か?」

赤木「すいません……」

真崎「ちょっとリード単調過ぎねぇか?」

連夜「試してんの。ストレートが通用するか」

赤木「磨きがかかったと思ってましたが全国は広いですね」

連夜「そんな小さくならなくていいぞ。完全にヤマ張って打ってきてやがる」

姿「分かるのか?」

連夜「俺が知ってる一葉や不破はあんな露骨にタイミング取りはしないからな」

透「せやな」

連夜「ふてぶてしさがお前の長所だろ。強気でいろ」

赤木「……ウス」

松倉「流石に3点となると初回からはキツイ。締めろよ」

連夜「あいよ」


 タイムが解け、試合が再開される。  打席には6番の鷹遠が入る。


仙夜「久々〜、レン兄」

連夜「仙夜か。お前、コウ兄と同じ沼南に行かなかったのか?」

仙夜「友人たちが皆、近くの南部を選んだからね。ダチは多い方がいいっしょ」

連夜「(こいつの性格ならどこ行っても大丈夫そうだけどな……)」


スルスルスルッ


仙夜「んなっ!?」


ガキーンッ


シュウ「オーライ!」


バシッ


ググッ!


ガキッ!


赤木「(シュッ)


 後続は変化球も交えてのピッチングでランナーを還さなかった赤木。  やはりストレートを生かすのも殺すのもリード、そして変化球があってこそだった。


連夜「な、言ったろ?」

赤木「じゃあ最初から……」

連夜「いい勉強になったろ。打たれてピッチャーは大きくなるもんだ」

松倉「2点は高い授業料だろ」

連夜「大丈夫! 取り返せ、シュウ!」

シュウ「おう!」


ピキィンッ!


シュウ「よし!」


シュタタタッ!


二塁審『セーフッ』


仙夜「なっ!?」

尾藤「何ぃっ!?」


 肩が自慢の仙夜から盗塁を奪ったシュウ。  その足と技術はやはり全国でも通用した。


コーンッ


連夜「あっ」


仙夜「おらぁっ!」


パシッ


ズシャアッ


主審『アウトッ!』


シュウ「嘘っ!?」

仙夜「戻らせん!」


ビシュッ!


二塁審『アウトッ!』


 続く連夜は送りバントを選択するも上げてしまう。  キャッチャー前に落ちようかというところを仙夜がファインプレー。  更に強肩が光り、飛び出していたシュウもアウトにした。


松倉「おい、こら」

連夜「うん、これは素直に謝ろう」


カァンッ!


真崎「うし!」


キィーンッ!


姿「しゃあ!」


 だがツーアウトから3番真崎、4番姿がヒットで出塁する。


仙夜「(浮き足だってますねぇ。落ち着いていきまっしょい)」

尾藤「(お、おう)」


グググッ


ブ――ンッ!


滝口「むぅ……」


 しかし5番滝口が尾藤の決め球、縦のスライダーにタイミングが合わず空振り三振に倒れる。


連夜「まっ、まだ初回だし」

松倉「………………」

木村「綾瀬がいたら何て言うか……」

松倉「監督も注意してくださいよ……」


 2回の表、南部の攻撃は赤木がピシャリと三者凡退に抑える。  その裏の桜花の攻撃、先頭の久遠が塁に出て送りバントで2塁に進むと……


キィーンッ!


赤木「(グッ)


 8番の赤木が三遊間を破るタイムリーで1点を返す。


松倉「おぉ、やるぅ」

連夜「バッティングもいいもの持ってたしな」

松倉「相方はバントをミスったと言うのにな」

連夜「チクチク攻めるのは良くないな、松倉くん」

松倉「少しは反省しろや」


 3回表、1点を返された南部の攻撃は1死から3番常盤が出塁する。


ダッ!


赤木「――!?」

連夜「一葉め……!」


バシッ


連夜「なめるなっ!」



ビシュッ!


ズシャアァッ


常盤「しゃあ!」

真崎「くっ」


 強肩ということを知りながら連夜から盗塁を仕掛けた常盤が見事成功させた。


連夜「悪い。ここは抑えよう」

赤木「はい」


 その後、4番不破のライトフライで3塁に進塁し、2死3塁。  打席には5番の洛威が入る。


連夜「(何の球にも反応するからな……)」

赤木「(スローカーブとかで入ってみます?)」

連夜「(面白いな)」


するするする


洛威「はぁっ!」


ピキィンッ!


姿「ッ……!」

真崎「くっ!」


 打球は1、2塁間を抜いていく。3塁から常盤が生還し3−1、差を再び2点とした。


カッキーンッ


仙夜「うーし!」


ダッダッダッ


滝口「オーライっと」


パシッ


仙夜「あれ?」

連夜「伸びてねぇよ」

仙夜「捉えたと思ったんだけどな……」


木村「南部って今年の評価は?」

向江「B−ですね」

木村「上位打線の攻撃力は中々だな」

松倉「ちなみにうちは?」

向江「C+だそうです」

松倉「昨年と大して変わってないな……国玉倒してきたのに」

木村「ま、アテにならないことは昨年証明しただろ」

松倉「そうですね」


 その後、試合はこう着状態を迎える。  試合が動いたのは5回の表、南部の攻撃だった。


カキーンッ


矛根「よっし」


 先頭の1番矛根がヒットで出塁し、送りバントで2塁に進む。  ここで桜花ベンチが動く。


松倉「ナイスピー」

赤木「いえ、3失点もしてしまって……」

松倉「ま、漣じゃないけど授業料だと思え」

真崎「後は任せろ」

赤木「スッ」


 先発の赤木に代え、エースの松倉をマウンドに送る。


グググッ!


ガキッ!


常盤「くっ!?」


スゥッ!


ガキーンッ


不破「…………チッ」

透「オーライや!」

松倉「おっし!」

真崎「流石松倉!」

シュウ「よし、反撃開始だね!」


 5回の裏、反撃に転じたい桜花の攻撃は9番の倉科から。


透「よっしゃ、絶対打ったる!」

尾藤「(倉科か……広角に打つのが上手い中距離ヒッターだな)」

仙夜「(特に苦手なボールもなかったですからね)」

尾藤「(オーソドックスに攻めるが勝ちだな)」


 まず初球のストレート、二球目のスローカーブを見送ってカウント1−1。


透「(相変わらず変化球をキレはええな。せやけど……)」


ビシュッ!


透「ストレートはまだまだ甘いで!」


パッキーンッ!


尾藤「んなっ!?」


 内角低めにコントロールされたストレートを上手く腰の回転で捉える。  打球は高々と上がりライトスタンドへ。


透「どや!」


 追撃の一発は倉科のバットから。  倉科のソロアーチで差を1点差とした。


シュウ「おぉ、ナイス!」

連夜「流石」

透「どんなもんや!」


 その後、シュウが倒れるも連夜がレフト前ヒットで出塁する。


連夜「ふぅ、ここで打てなかったらまた松倉にブツブツ言われるからな」


 1死1塁という場面で打席には3番の真崎が入る。


するするする


ガキィンッ


グググッ!


ブ――ンッ!


真崎「チィッ!」

尾藤「ふぅ……」

仙夜「(ナイス変化球です。ほな、高めに1球外して決めましょう)」

尾藤「(了解)」


ビシュッ!


真崎「くのっ!」


パッキャーンッ!


尾藤「は?」

仙夜「……嘘やん」


 高めのボール球を捉えた真崎の打球は綺麗な放物線を描いてバックスクリーンへ。


真崎「うそ……」


 本人も驚くツーランホームランで3−4と勝ち越しに成功。


姿「な、ナイスバッティング」

真崎「お、おう」


透「相変わらず大次郎のストレートは威力あらへんな。真崎でも運べるっちゅーこっちゃ」

連夜「ま、その分変化球のキレは良いんだけどな」


グググッ!


ブ――ンッ!


姿「くっ!」


ストッ


ガキッ


滝口「ありゃ?」


 バッテリーは変化球主体に切り替え、姿、滝口と桜花の誇る長距離コンビを打ち取る。


木村「お前らしくもない空振りだったな」

姿「いや、真崎がホームランなんか打つもんでつい……」

真崎「自分を見失ってはいかんぞ」

姿「やかましい!」


 6回表、南部の攻撃は5番の洛威から。


松倉「しっ!」


ガキッ!


洛威「……くっ」


グググッ!


ブ――ンッ!


仙夜「曲がり過ぎや!」

連夜「(ほんとここんところ変化も大きくなってるな)」


 5回から登板している松倉が完璧に抑える。  だが桜花の方も立ち直った尾藤の前に抑えられる。  6回は共に動きがなく迎えた7回表。


グググッ!


ガキッ


矛根「チィッ」

真崎「それよっ」

松倉「しゃあ!」


 下位打線から始まり、1番矛根にまわってくる打順も三者凡退に抑えた。  そして桜花の再び流れが……!


スポッ!


尾藤「あ!?」


ドガッ


シュウ「痛い……」


 完全なすっぽ抜けがシュウの背中にヒットする。


連夜「おーい、大丈夫か?」

シュウ「大丈夫大丈夫」


 背中をさすりながら1塁へ駆けるシュウ。  だが次打者、連夜への初球!


ズダッ!


尾藤「何ぃっ!?」

仙夜「くっ!」


ズシャアァッ


 強肩仙夜に投げることを許さず、完璧に盗んで盗塁成功。


尾藤「(くそ、走ってくるか……)」

仙夜「(あの人、速いな……俺が二度も許すなんて……)」


コッ


尾藤「っと」


 初回と似たような状況で今度はきっちりと送りバントを成功させた。  1死3塁とチャンスを迎えて打席にはHRを打っている3番真崎。


尾藤「漣のやつ、バント上手くなったな」

洛威「感心はいいが、抑えどころだぞ」

尾藤「あぁ」


するするする


真崎「くのっ!」


ガキィンッ!


 体勢を崩されながらも外野へ運ぶ。  レフト不破が捕球し、シュウはタッチアップし生還する。


尾藤「ランナーいなくなったし、1点取られたが切り替えよう」


パッキーンッ!


尾藤「………………」

姿「おっし!」


 変化球打ちが天才的な4番姿。  尾藤の決め球、縦のスライダーを完ぺきに捉え左中間スタンドへ。


木村「おぉ、うちらしくねぇ」

松倉「まぁ倉科や姿は打っても不思議はないですからね」

真崎「勝ち越しアーチの俺だけ奇跡だったわけだ」

姿「自分で言わないように」


 3−6と点差を開いた桜花学院。  8回表、得意の継投へと入る。


松倉「んじゃ頼んだ」

司「あぁ」


 松倉から守護神の薪瀬へスイッチ。  松倉は滝口の代わりにレフトに入った。


尾藤「向こう、点差が開いたからエースを温存してきたな」

常盤「それならそれで構わん。追いつくぞ」


木村「ほんとうちの強みはここだよな」

月見里「エース級が2人いることですか?」

木村「躊躇なく代えられるからな」


シュパァンッ!


主審『ストライクッ! バッターアウトッ!』


常盤「なっ!?」


しゅるしゅるしゅる


ブ――ンッ!


不破「――!?」


司「おしっ!」


 2番から始まった南部の好打順を3人で抑える薪瀬。


常盤「くそっ、まだこんな投手残していたのか」

仙夜「特集の評価ってアテにならないっすね」

洛威「ま、ハナッからアテにはしてないがな」


連夜「ナイスピー、司」

司「あぁ」


 8回裏、桜花の攻撃は三者凡退に抑えられる。  そして9回表、3点を追う南部の攻撃は5番洛威から。


司「せぇい!」


シュパァンッ!


洛威「(初打席でこれは厳しいな……)」


ガキッ!


洛威「くっ」

シュウ「そりゃ!」


 平凡なショートゴロ、シュウが軽快に捌いてワンアウト。


仙夜「このまま終わらないッス!」


ストーンッ!


ブ――ンッ!


仙夜「フォークも投げるんだ……」

連夜「うちの抑えのエースは半端ないぞ」


シュパァンッ!


仙夜「だぁっ!」


 最後は高めのストレートに釣られ空振り三振。  そして……


パキーンッ


佐々木「(パシッ)


 最後のバッターをセンターフライに抑え、ゲームセット。  3−6、桜花が勝利を収めた。


ウウウウウウ――ッ!


審判『礼!』


全員『ありがとうございました!』


連夜「一葉!」

常盤「あん?」

連夜「良い勝負だった、ありがとう」

常盤「嫌みか!」

連夜「素直な感想なんだけどな」

常盤「まぁいい。このまま勝ち上がれよ」

連夜「あぁ」

透「任せとき」


 旧友対決を制した桜花、昨年に引き続き1回戦突破を果たした。


…………*


 試合を終えた桜花ナインと監督はインタビューを受けていた。


アナ「見事勝利を収めました、桜花学院の木村監督です」

木村「ありがとうございます」

アナ「昨年に引き続き、甲子園での1勝となりましたが」

木村「そうですね。HRは意外でしたがうちらしい継投で勝てたと思います」

アナ「最後は薪瀬くんで行くと決めてたんですか?」

木村「そうですね。松倉、薪瀬で抑えようと思っていました」

アナ「つまり思い通り事が運んだと」

木村「えぇ、まぁ打撃陣が良いところで打ってくれたからこそ思い切っていけましたね」


 木村が意外といったホームランを打った真崎もインタビューを受けていた。


アナ「見事な勝ち越しホームラン、真崎選手です」

真崎「どうも」

アナ「打った瞬間の手応えはどうでした?」

真崎「まさか入るとは思いませんでした」

アナ「地区予選通じても初のホームランですね」

真崎「まぁ、地区予選1試合しか出てませんけどね」


 他にもキャプテンのシュウなどインタビューを受けていたが  連夜が暇を持て余していた。


連夜「司、ちょっと先に抜けるわ」

司「は?」

連夜「先に外出てるだけ。言っといてくれ」

司「お、おい! 待てって!」


 薪瀬の忠告を無視して先にバスへと向かった連夜。  だがそこで意外な人物たちと出会った。


音梨「よっ」

連夜「一夜!?」

日夜「いい試合だったな」

流戸「最も連夜自身は大した活躍してなかったけどな」

連夜「うるせぇよ!」

音梨「ま、労いに来たんだよ」

連夜「労いも何もお前らも甲子園出場してっだろ」

流戸「………………」

連夜「……あれ、なんで宙夜いんの?」

流戸「うるせぇよ! 夏休みってことでダチと見にきてんの!」

日夜「まったく、兄弟として1人だけ出てないっていうのは恥ずかしいぞ」

流戸「帝王だぞ、帝王……良い線まで言ったんだけどな」

音梨「まぁ、宙夜から聞いてたけど学校に戻ってたんだな」

連夜「ま、おかげさんで」

日夜「しかし短髪は相変わらず似合わねぇな」

連夜「そうか?」

音梨「長髪に見慣れてるせいだろ。悪くはないんじゃね?」

連夜「まぁ、髪なんかどうでもいいけどな」

流戸「ところで決着はついたのか?」

連夜「ん?」

音梨「白夜とだよ。前、会った時色々あって聞きそびれたからな」

連夜「あぁ、それならもう大丈夫」

音梨「そっか、良かった」

連夜「なんだよ、そんなことのためにわざわざ来たのか?」

日夜「そんなことじゃねーよ」

流戸「兄弟に関することだ。心配にもなるさ」

連夜「……悪ぃ、ありがとな」

音梨「んじゃ俺らもそろそろ行くか」


 遠目に桜花ナインの姿を確認した音梨がこの場を去ろうとした。


連夜「あ、ちょっと待った」

音梨「ん?」

連夜「一夜、お前まだ親父や父親、憎んでるか?」

音梨「……鈴夜さんを憎む気持ちはないよ」

日夜「だけどな、連夜。俺らの父親はろくでもない人間だ。そこにどんな理由があろうとな」

流戸「理由はどうあれ、朝里に力を貸したのは事実だろ」

連夜「だけどな!」

音梨「そう。宙夜の言う通り、だから俺らが存在する。それが事実だ」

連夜「……そう、だよな」

音梨「………………」

連夜「けどな、お前らの父親は一方でプロ野球界に名を残す偉大な選手でもあった」

日夜「連夜?」

連夜「次の試合、テレビで見てろ。俺が証明してやるよ」

音梨「なにを?」

連夜「お前らの父親は誇れる父親だったとな」





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