Best Friends

−3−


 これはまだ連夜たちが中学二年生の時のお話。残暑を残しつつ季節は秋になりかけていた平凡な一日に起きたことだ。

鈴夜「おぉ〜綺麗な学校じゃん。割と有名な中学校らしいぞ〜」

連夜「んなことはどうでもいい。ったく俺は神戸に残るって言ってんのにさ」

鈴夜「まだ文句言ってんのか? ここまで来たんなら諦めろよ」

連夜「あ〜あ、あいつら怒ってるだろうな」

鈴夜「一言言ってくりゃ良かっただろ。泣き顔見られたくないって理由で言わないなんてどうかしてるぜ」

連夜「それ以上なんか言ったら、俺は勝手に神戸に戻るぜ」

鈴夜「構わないが、お別れ会やったのにすぐ戻れんのか?」

連夜「…………ったく……ほんとめんどくさい」

鈴夜「お前中学生らしくないよな、ほんと」

光「それよりさ、二人とも学校に来てまでケンカしないでよ。みんな見てるよ」

連夜「転校生なんてそんなもんさ。親父の格好も格好だし」

鈴夜「普通だろ?」

連夜「普通だと思ってんなら病院行った方が良いと思うぞ」

光「それは私もそう思う……」

鈴夜「うわっ! 光に言われるとショックだ!」

連夜「……バカやってないで早く職員室行くぞ」


・・・・*

??「たいっへんっだ〜!!!」

進「…………どうした、豹?」

豹「て、て、て……」

進「て?」

豹「転校生が来たぞ―――ッ!!!」

進「なんだよ、そんなことで騒ぐな」

濱北「そうだぞ。朝から騒々しい」

豹「バカ言え! スゲー可愛い子だったんだぞ!」

進「だからどうした……どっちにしてもだ――」

濱北「それなら話は変わってくるな」

進「(ズルッ)

天野「どんな子だった?」

豹「えっとな、何かこう守ってあげたくなるような年下な感じだった」

天野「お〜良いねぇ」

濱北「じゃあ休み時間、探しに行ってみるか」

豹「おぉーッ!」

進「………………」


ガラッ

豹「おっと、センコーきやがった」

先生「ほら早く座れ。HR始めるぞ」


豹「センセー。朝、知らない人見たけど?」

先生「ん、その通り。我がクラスに転校生が来た。今から紹介する」

ガヤガヤガヤ

進「豹、俺らのクラスだってよ?」

豹「いや、二人いたんだよね……姉っつーか兄っつーかそれっぽいの」

進「どっちだよ」

豹「どちらにせよ、それは好都合だ。妹のことを聞き出して……フフフ」

進「誰か、コイツを縛っといてくれ」


先生「じゃあ、漣くん入って」

スッ

連夜「………………」

ガヤガヤガヤ

連夜「漣連夜です。兵庫県から来ました。1年ちょっとしか一緒に過ごせませんが、これからよろしくお願いします」

先生「じゃあ席は……佐々木、隣だれもいないよな?」

佐々木「え、たしかにいませんけど、良いんですか?」

先生「まぁしょうがないだろ。漣は女子っぽいし問題ない」

連夜「ちょ……」

先生「まぁそれは冗談だがお前が適任だろ。色々教えてやってくれ」

佐々木「分かりました」


豹「男だったか」

進「まぁ……綺麗なストレートだから遠くから見れば分からんかもな」

豹「兄でこれだから妹も分かるな。うんうん」

進「お前、マジで危ない」

豹「よし漣くんと仲良くなろう。と言うかむしろあの美形なら漣くんでも一歩間違えればいいかもしれん」

進「あ、リアルにロープ準備を」


 豹がその後、縛られていたかは置いといてそれから午前の授業を終えて昼休み時間。  間の小休憩時間もそうだったが、漣の周りには生徒は群がっていた。  そのせいで進たちは近づけなかったが、昼休みようやく他の人たちより先手をとった。

豹「さっざなっみく〜ん」

連夜「……何か?」

豹「まぁまぁ怖い顔しなさんな。仲良くなりたいだけやねんなぁ」

連夜「どこの生まれだよ」

進「俺、桜星進。こいつは氷室豹。よろしくな」

連夜「あ、あぁ。……お前が桜星か」

進「ん?」

連夜「中学bPプレイヤーと聞いている。その実力楽しみにしてるよ」

ガラッ

 そういって席を立つ。昼休みという長い時間でまた質問攻めにあうのがイヤだったんだろう。

進「……あいつ野球やってんのか?」

豹「………………」

進「どうした?」

豹「妹さんのこと聞けなかった……」

進「……別に今日じゃなくても良いだろ……」

豹「いや〜……こういうのは早い方が良いじゃん」

進「そんなカワイイの?」

豹「うむ。さっさと情報を集めて微笑みの豹様と呼ばれている私の彼女めに」

進「誰がだ誰が」




 そして放課後。

連夜「野球か…………」

 野球なんて今までやりたくてやってたわけじゃない。父親が元プロ野球選手で  弟が先に野球を始めてグラウンドに着いていったらいつの間にかやってただけのこと。

連夜「…………………」

光「お兄ちゃん?」

連夜「お、来たか。もう帰るか?」

光「ううん、友達に誘われてテニス部の見学行こうかと思って」

連夜「そっか。じゃあ待ってるよ」

光「お兄ちゃんは野球部いかないの? ここ一応入らなきゃダメみたいだよ」

連夜「ん〜……行ってみるかな……暇つぶしに」

光「それじゃあね」

連夜「ああ……」


・・・・*

パキーンッ


進「ッ!」

パシッ

ビシュ!

樋野監督「ナイス桜星! 次、サード!」

パキンッ

濱北「っしゃ!」


連夜「ヒューッ。流石に鍛えられてるね」

??「あ? 誰だ、お前」

連夜「転校生だ。見学させてくれ」

??「あ〜お前が噂のね。良いよ良いよ。お前も野球やってんのか?」

連夜「まぁかじる程度」

??「ふ〜ん。ま、入るならよろしくな。俺、矢吹龍」

連夜「よろしく。漣連夜だ」


樋野「よし、次センター!」

パキーンッ!

佐々木「オーラーイ」

パシッ

樋野「次ぃ!」

パキーンッ

佐々木「へ? もう一回?」

パシッ

樋野「あ? お〜い、矢吹はどうした!?」

進「最初からいませんよ」

樋野「なにっ!? ったく仕方ねーな。氷室、探して来い!」

進「豹もいませんが」

樋野「かーっ!!! あいつらやる気あんのか! えーい、桜星、行って来い!」

進「アイアイ」

タッタッタ

連夜「ん、アイツたしか桜星って言ったけ」

龍「そうそう。何で知ってる?」

連夜「同じクラスなだけだ」

龍「そういやそうだったな。豹が騒いでたし」

タッタッタ

連夜「よっ」

進「お、漣くん。来たのか」

連夜「ま、暇つぶしに」

龍「どこいくんだ?」

進「龍と豹を探しに……っていたのかよ!」

龍「あーしまった!!! つい!」

進「ついじゃねーは!」

龍「……豹を探しに行くんだったな。俺が手伝ってやる」

進「いらん。お前はこっち。(ズルズル)

龍「鬼――ッ!!!(ズルズル)

連夜「………………」

豹「龍のバカめ」

連夜「……キミもサボりかい?」

豹「まぁそう言われちゃ言い返せないが、俺には漣くんに用がある」

連夜「俺に?」

豹「今朝一緒にいた子って漣くんの妹?」

連夜「ああ、そうだけど」

豹「ふ〜ん」

コオォォォ

豹「…………なんか寒くない?」

連夜「そうだな。多分、後ろを見れば一発だと思うよ」

豹「……それじゃ!」

ビュ――――ンッ!


進「逃がすか!」

ズダッ!


……数分後。

豹「くっ……俺が捕まるとは……」

進「舐めんな」

中村「(チーム一俊足の氷室を捕まえるとはさすが桜星……)」

樋野「お二人さん、地獄ノックへご招待!」

サボり組「………………」


樋野「せぇーの!」

カキーンッ

カキーンッ

カキーンッ

龍「ギャーーーッ!」

豹「ギャスッ……」

連夜「これは……虐待じゃない?」

進「いつものことさ。気にしない気にしない」

連夜「……野球ね……」

進「ん?」

連夜「(辞めようと思ってたが……ビャクのことも気になるしな)」

進「どうかしたか?」

連夜「ここって途中入部あり?」

進「おっ、やる気になった!? 大歓迎だよ」

連夜「あぁ、今からでも足を引っ張らない程度にはできると思うよ」

進「監督〜! ちょっとストップ!」


樋野「あぁ?」

進「新入部員です、ちょっと紹介を」

樋野「いいところだったのにな。しゃーない、ちょっと待ってろ」

龍「死ぬ……」

豹「………………」

佐々木「お疲れさん」

龍「今日のノッカー誰?」

佐々木「監督とキヨと濱北と天野」

龍「あいつら……」


樋野「っで、新入部員って?」

進「今日転校してきた漣連夜くんです」

連夜「漣連夜です。よろしくお願いします」

樋野「漣?」

連夜「ええ」

樋野「(ふ〜ん……)まぁ良い。軽くテストしたいんだが動けるか?」

連夜「あ、大丈夫です」

樋野「良し、じゃあ打撃と守備を主に見る。ブルペンから投手呼んできてくれ」


・・・・*

永倉「なんすか〜?」

樋野「永倉、淡野……あと一人は?」

淡野「外周走ってくるって出て以来戻ってきてないですね」

樋野「はぁ……桜星、行ってこい」

進「アイ」


……数分後。

翔「くそっ! まさか進が来るなんて……」

樋野「ご苦労。高波、罰は与えないからテストに付き合え」

翔「イヤです」

樋野「あ?」

翔「テストするくらいなら野球で罰を受けた方が良い!」

樋野「あ〜主語がなかったな。新入部員のテストをするから投げてくれ」

翔「新入部員?」

連夜「俺のことだ。よろしく」

翔「オッケーッ! そういうことなら任せんしゃい!」

樋野「三人共それぞれタイプの違う選手だ。三打席ずつやって一本打てたら合格な」

進「入部試験じゃないんだから……」

連夜「それじゃあ九打席やらなきゃいけないってわけですか?」

樋野「そりゃあな」

連夜「三打席で十分です。一人一打席、条件は一緒で構いません」

樋野「なっ!」

進「ってことは一打席で全員からヒットを打つってことか?」

連夜「まぁそれぐらい出来なきゃ、ここの野球部でレギュラーは無理でしょう」

樋野「良いんだな?」

連夜「構いません」

樋野「分かった。(天才の子は天才ってか?)」


・・・・*

永倉「初打席で打たれてたまるかっつーの」

翔「まぁあれぐらい豪語するんだ。やるやつなんだろう」

永倉「……良し、こっちも様子見が必要だな」

翔「だな」

チラッ

淡野「二人してこっちを見るな」

永倉「妥当だろ。行け」

淡野「はいはい」


樋野「軽く説明を入れるとどんなに鋭い当たりでもアウトじゃダメだ。逆に打ち損じでも内野安打だったりポテンだったりしたら ヒットと見なす。俺は結果主義だからな」

連夜「OKです」


守備は以下の通り。

達川
1B高木
2B氷室
3B濱北
SS桜星
LF清村
CF佐々木
RF中村


樋野「お前は出ないんかい」

龍「だって俺も守備は下手とは思わないけど、佐々木や中村の方が上だもーん」

樋野「楽したいだけだろ?」

龍「あ、審判俺がやりまーす」

樋野「(サボタージュ三人衆、ほんとどうにかならんかな?)」


連夜「さていつでも良いよ」

淡野「じゃあ行くぜ」

ビシュ

連夜「………………」

龍「ストーラーイクッ!!!

達川「やかましい!」

龍「あれ? ダメ?」

連夜「(制球が良い軟投派かな? じゃあ俺も手の内を明かさないよう)」

コツッ


淡野「セーフティ!?」

濱北「せこい真似しやがって!」

コロコロ……

連夜「………………」

進「ん? 濱北! 見逃せ!」

濱北「えっ!?」

連夜「(チッ、やるな……)」

龍「ファール! ファール!!!

濱北「分かったちゅーねん!」

龍「………………」


連夜「(あのショート、自分の打球でもないくせに判断力良いこと……そういや桜星ってピッチャーじゃ……?)」

達川「(何にせよツーストだ。カーブをボール球でひっかけさせよう)」


クククッ

連夜「おっと……」

カ〜〜ン

進「くっ……」

濱北「あ〜! いらいらする!」

ポトッ

連夜「レフト前、ポテンヒット。俺の勝ちですね」

高木「あれじゃあ勝った気しないだろ?」

連夜「全然、よっしゃ! ってガッツポーズできるけど?」

高木「………………」


淡野「なんか負けた気しねー」

濱北「気にすることあらへん。あんな当たり損ね」

進「(狙った……ようにも見えたが……)」


永倉「良し、じゃあ次は俺だ」

翔「な〜んだ。俺が行こうと思ったのに」

永倉「まぁあの程度の打者なら俺で十分」

翔「ほぉ。俺がエースだとな。うんうん、流石永倉くん、わかってるぅ」

永倉「………………」

達川「お〜い、怒らすな〜」


連夜「次は左か〜……それはキッツ……」

達川「ん? 左はダメか?」

連夜「あんま得意じゃない」

達川「(素直だな)」


永倉「ハァッ!」

ズバーンッ!

連夜「はえー……左でこのスピードは初めて見るわ」

龍「ストライクですよ、えぇストライク。ストライクなんだって」

達川「しつこいわ!」

龍「これもダメ?」

達川「普通に言え!」


連夜「(打って変わって左の速球派か……層は厚そうだな)」

永倉「ハッ!」

連夜「(ピクッ)

ズバーンッ

龍「………………」

達川「おい、審判」

龍「ん〜微妙なんだよね。ボールかな?」

永倉「おい、鳩場変われ」

龍「ノンノン、カイルっちゃんは一塁審だからね。私が主審」

連夜「まぁ次やろ」

達川「ですな」

連夜「(前のやつより細かいコントロールはなさそうだな。球威で攻めるやつならここは……)」

達川「(さっきの打席を見る限り、流し……外角はそれなりに対応しそうだな。ここは思いっきり内角高めに)」

永倉「(良いだろう)」

ビシュッ

連夜「なろっ」

キィーン

達川「(あくまで流しだと?)」

進「任せ」

パシッ


樋野「(ショート深いところ……桜星じゃなきゃ抜けてたな)」


ビシュウゥン


ズバシッ!

進「微妙……」

魁琉「セーフッ! セーフ!」

連夜「危ねぇ、あれで内野安打かよ」

高木「お前、さっきから微妙な当たりばっかり打つな」

連夜「いや〜抜けたと思ったがな」


濱北「ラッキーヒットだな。運の良いやつめ」

進「ほんとにそう思うか?」

濱北「あ?」

豹「内角高めの永倉の速球を無理して流すヤツはそういない。結果はどうあれ、狙ってたな」

濱北「振り遅れかもしれないぜ?」

豹「振り遅れならお前の方に飛ぶだろ?」

濱北「………………」

進「相当流し打ちに自信があるみたいだな」


連夜「さぁあと一人だ」

翔「ふっ、この俺から打てるとな? 甘いぜ!」

龍「ちょろ甘ってやつか?」

翔「ちょろいぜを言ってねぇYO」

龍「くっ、これは一本取られちまったぜ」

連夜「(こいつらがこの野球部のガンか……)」

翔「さ、勝負は別だ。本気で行くぞ」

連夜「ああ。(こういう時、投手のタイプを探るよりキャッチャーのリード傾向を探るに限る……)」


鈴夜「投手っていうのは十人十色。だがリードするキャッチャーは変わらない。一発確実に打ちたいときはピッチャーで考えるんじゃなく キャッチャーのリードの仕方を探れ。自ずと狙いが分かるはずだ


連夜「(このキャッチャー、ファーストストライクを必ず取りに来ている。それを狙う!)」

翔「行くぜ! おりゃあぁぁ!」

ビシュッ!

連夜「ハッ!」

カッキーンッ!


翔「!!!」

連夜「左中間真っ二つ。俺の勝ちだな」

翔「うわっ……ひでぇ……エースの俺から初球簡単に打つなんて」

進「狙い打ちだったな」

連夜「まぁね」

樋野「打撃は文句なしだな。今の状態でも」

連夜「あれ? なんすか、今の状態って」

樋野「別に。俺の見間違えだったら別に構わないが」

連夜「………………」

樋野「さ、次は守備だな。ポジションは?」

連夜「キャッチャーです」

達川「へ?」

豹「あ〜あ、タツの控え決定じゃん」

達川「なんでやねん!」

進「キャッチャーじゃノックとかで……ってわけにはいかないですね」

樋野「そうだな、リードも試合じゃないとわからないしな」

豹「良し、ズバリ! 俺との盗塁対決ってどうでしょ?」

樋野「お、お前とは……ちょっと無理あるな」

連夜「別に良いですよ」

樋野「あ、いや、氷室は凄く速いぞ?」

連夜「刺せば実力わかってくれるでしょうし」

樋野「……しゃーない。高波、お前がピッチャーだ」

翔「へぇ……」

豹「……それはちとキツくありません? 翔とタツでも半々ですよ?」

連夜「なら最初のピッチャーはどうでしょう?」

樋野「ふむ。確かに淡野だったら面白いかもしれないな」

進「並のクイック相手だったらよほど並外れてないと豹は刺せないぜ?」

連夜「なら俺は並外れてるかも知れないな」

進「ほぉ……」


 それぞれが守備位置につき、連夜も一応安全のためマスクだけつけた。
 ルールは一打席中に豹がスタートを切る。それを刺せれば合格だ。

連夜「あ、グラブ貸してくれない?」

樋野「は? キャッチャーミット使えよ」

連夜「いや、俺左利きなんで」

樋野「左利きぃ!?」

進「それでキャッチャーやってんの?」

連夜「あぁ」

進「ほぉ……」

樋野「あー、うちで左投げは……鳩場か中村か。どっちかグラブ貸してやれ」

魁琉「良いですけど、守備はどうすれば?」

樋野「矢吹、守れ」

龍「ほら、魁琉。守るだけなら右でもいけるだろ」

魁琉「まぁ……」

樋野「そこまでして守りたくないか?」

龍「はい!」

樋野「………………」

連夜「それじゃバッターは?」

樋野「いや、言っとくけど打者の援護ありだったら氷室は刺せないぞ?」

連夜「構いませんよ。逆境の方が燃えますし」

進「ならオレがやろう」

連夜「ついでに抑え込んでやるよ。桜星くん」

進「ふっ」


 追加ルールとして桜星も打ちに行く。盗塁を許すか、ヒットを打たれたら負けとなった。
 守備は先ほど守ったやつらがそのまま守備についた。(ショート翔、セカンド清村、レフト魁琉に変更)


連夜「で、何が投げれるんだ?」

淡野「スライダー、カーブ、フォークだな。一番得意なのはカーブ」

連夜「オッケー。結構球種あんのな」

淡野「言っとくけど、桜星は抑えれないぞ?」

連夜「だいじょぶだいじょぶ。オレのリード通り投げてくれればそれで良いから」

淡野「まぁ元々は盗塁勝負。桜星もその辺は理解してるだろう」

連夜「桜星くーん!」


進「ん?」

連夜「マジで来いよ」

進「……望むところだ」


淡野「おいおい……」

連夜「お前は投手で一番大事なコントロールがあるようだし、オレは桜星を抑え氷室を刺す」

淡野「……分かった。お前の言うとおり投げよう」

連夜「頼むぜ」


龍「どうみる、監督」

樋野「ん? まぁ普通に見れば、この状態で漣が勝てる要素なんてなにもない。淡野の実力じゃ桜星は抑えれないだろう。 仮に桜星が打たなくても、氷室は悠々盗塁出来るしな。第一ミットじゃなくて普通のグラブって時点でな」

龍「変化球なら豹は楽々だな。でもストレートじゃ進は抑えられない……か」

樋野「だろうな」


連夜「(初球、カーブ。外角にボールで)」

淡野「(いきなり? 豹が走ってこないと読んだのか……?)」


シュルシュルシュル

連夜「そらっ」

ビシュッ!

豹「!!!」


バシッ

高木「アウトッ」


樋野「………………」

龍「……そのオチは読めなかったわ」


連夜「あー今のナシで良いですよ」

豹「だよね? だよね!?」

樋野「まぁ漣が言うなら……」


龍「ちなみにさっきのストライクだからな」

進「ウソッ!? 入ってた?」

龍「あぁギリな」

進「(しかし、スゲー肩だな)」

豹「(これはマジでやった方が良いな)」


連夜「(よーし、二人の目がマジになった)」

淡野「(あーあ、氷室までやる気になりやがった)」

連夜「(じゃ次もカーブ。外角にね)」

淡野「(また?)」

連夜「(どうせ、氷室は肩を警戒してすぐには走ってこないだろう。なら桜星に打たれないようにする)」

淡野「(ん〜……サイン変える気配なしか……しゃーない言うとおり投げるって言ったし、投げるか)」


シュッ

豹「なっ!」

シュルシュルシュル

進「また、かっ!」

ガキッ


 進は何とかカットし、打球は大きくフェアゾーンをそれていった。


淡野「(あー心臓に悪ッ……)」

進「(コイツ、豹に走られんの怖くないのか?)」

連夜「(じゃ最後は二人とも料理するか。内角にストレート)」

淡野「(へ?)」

連夜「(中途半端に行くよりグーンと高くに)」

淡野「(おいおい……そんなジェスチャーじゃ豹にバレるぞ……)」


豹「(くくっ。高めか。良いだろう、走ってやる)」


連夜「(あの氷室の性格的にこれで走ってこないわけじゃない。後は桜星次第だな)」


ズダッ

豹「GOOD!」

淡野「おらっ!」


ビシュッ

進「なっ!」

ズバーンッ!

豹「ウソッ!?」

連夜「っしゃセカンッ!」


ズビィッ


豹「!!!」

翔「ほいっ(バシッ)


樋野「………………」

連夜「はいアウト。三振ゲッツーってところですかね」


淡野「さ、桜星から三振取っちゃった……」


進「なぁ漣くん、俺が内角高めがウィークポイントだって知ってたのか?」

連夜「別に。ただ外角に来たボールには自然に反応してたから、内角は詰まるかなって思って。 予想以上に早いスイングで驚いたよ。あれは完全なボール球だったから良かったけど、ちょっと高い程度だったらやばかったな」

淡野「進に内角ってことで俺のほうがビビッたからな」

進「で投げそこなったのか。まぁ完全に負けたよ」

豹「_| ̄|○」

進「偉い落ち込んでんな」

豹「まさか同級生に刺されると思わなかったから……」

連夜「桜星くんの三振に驚いて軽くスピードが下がったけな。それがなきゃセーフだったよ」

豹「むっ!? ってことは貴様のせいか!」

進「微笑の豹様はどうした?」

豹「…………ニマッ」

進「………………」


樋野「何にせよ合格だ漣。これからよろしくな」

連夜「あ、はい! よろしくお願いします」

翔「オッケーッ! エースの高波翔だ。翔って呼んでくれ」

豹「『さざなみ』って呼びづらいな」

連夜「連夜で良いよ」

翔「良し、よろしくレン!」

連夜「いや…………」

進「よろしくなレン」

連夜「あ、レンでもう固定なんですね」


 連夜が初めて翔たちに会った秋の空は綺麗な夕暮れで茜色に染まっていった。


〜To be continued〜


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